島での調査1
翌朝、私達を乗せたトレーラーは離島に一番近く、大型貨物の取り扱いを主とする港町に入った。貨物や輸送トレーラーが頻繁に往来しているため、カナルの大型トレーラーが入っても目立つことはない。
住居用トレーラーから私とフィリーオ兄様が降りると、カナルもついてきた。
「カナルさんも来るのですか!?」
「はい」
「お仕事があるのでは?」
「今日は移動調整日なので、仕事はないんですよ」
調査には、お兄様と二人きりだと思っていた。それに何かあったときに、別の場所で待機している人が1人は欲しい。まぁ、それについては、『天使の虹』の島の向かい側の島にでも待機して貰えればいいので、今は何も言わないことにした。
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別のトレーラーからジェットボートを運び出し、乗り場まで小型車で牽引していく。海上にボートを出すと、ライフジャケットを着て乗り込んだ。カナルが私達とは別の子供用PWCに乗ったのを確認し、お兄様は合図を送って走り出した。
海風は穏やかで、晴れている。向かい側の島には早く着きそうだ。
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「……で、どうしてこうなったんでしょうか」
「それはボクが聞きたいですよ!?」
「カナルさんのせいです」
「……はい、その通りです」
向かい側の島から『天使の虹』の島を観察する予定だった。計画では、確かにそんな話をしていたハズだ。
しかし、今、私とカナルだけがココにいる。
向かい側の島に着いたまでは良かった。良さそうな観察地点を探すために、薄暗く、苔のある大岩に大木の根が絡む足場の悪いところを歩いていた。ところが、先ほどカナルが足を踏みはずし、私も巻き添えになって、子供の私達だけが通り抜けられる穴に落ちた。その穴は、まるで長い滑り台のようになっていて、苔や草の絨毯のような空間に放り出された。
お互いにケガがないことを確認したところで、辺りを見回し、もとの場所に戻れないことが分かって、冒頭の会話となった。
「カナルさん、あっちに木でできたトンネルみたいですね」
落ちた穴と対角の位置に見つけた。
「地上に出られそうな感じではありますが、どの地点に出るか……」
「行ってみましょうか」
「え? ルナさん!?」
「ほら、行きますよ!」
焦って私の行動を阻止しようと手首を掴むカナルを、逆に引っ張った。
「ダメですって! フィリーオ兄さんが来ますから! 遭難した場合は、安全な場所で待機しないとダメですよ。兄さんが心配します」
「……お兄様は、私達が動かない方が大ケガをしているかと思って余計心配しますよ?」
首筋にピッタリと馴染んでいるベルベットのチョーカーを指でなぞりながら言うと、「……は? 意味がわからないです」と、眉間にシワを刻むカナルの背後に回った。そして、カナルの背中を両手で押しながら、「お兄様は、私達がどこにいるか、すぐに分かりますから」と説得し、トンネルへと歩みを進めた。




