離島調査のためのミーティング
サバンナのメインルートを移動するカナルのトレーラー内で、私達は『天使の虹』が現れた島に入るためのミーティングを始めた。
「この離島への立ち入りですが、ジェットボートで行くのが一番早くて、周りから目立たない方法かと思います」
カナルの提案に「確かに島と島との距離も狭いから、それがベストだ」と、お兄様が説明を補足する。
「船のオープンデッキから見た方角からすると、『天使の虹』の位置は島の西側のこの辺です。なので、向かい側の島に入って、この地点から偵察を……」
モニターに映し出された離島の周辺地図を見ながら話していると、お兄様が「ちょっとゴメン」と私の話を遮った。
私が「お母様からですか?」と聞くと、「うん、カナルと合流したことを連絡入れたら、返事がきた」と腕時計を操作しなから教えてくれる。
「ルナ、伝言で『ルナのお願いはうまくいったから安心するように』だって」
「お母様、仕事が早いですね……ありがとうございます」
フィリーオ兄様は頷き、「中断して悪かった。それで、ルナの話だと向かい側の島に入って、とりあえず状況確認をするって話?」
「はい」
「でも、それだと2ヶ所の島に入る許可を管理者から得なくてはならなくなります。ボクの――カナル・ライナーの名前を使うとしても、時間が少しかかるかと……」
そう言うカナルに、ついさっき『お母様に頼んだお願い』を叶えて貰ったので、さっそく話した。
「それなら大丈夫です。数日後、この『天使の虹』の島周辺の所有権は私になりますから、事前調査ってことで島に入る許可は取得済みです」
「ルナさん……島を、買ったんですか!?」
カナルが「嘘だろう?」と今にも言いそうな雰囲気で聞き返す。
「はい、買いました。いちいち許可を取ったりするのは面倒なので」
「ルナさんの名義で?」
「まさか! 柴藤の名前です。すぐには分からないようになってますから調査中は影響ないですよ」
カナルの疑問に答えると、お兄様が「あぁ、さっきの伯母さんからのメールは、その件か」と、納得する。
「えぇ、そうです。お母様は金融不動産関係に強いので、出掛ける前に、お願いしたのです」
「ありがたい、これでかなり動きやすくなった」
お兄様の爽やかな笑顔とは対照的に、眉間にシワを寄せたカナルは「……まさか調査のために島を買うなんて発想が」と、ブツブツ何か言っている。
「カナルさん、お金は持っているだけでは役に立ちませんから」
「確かに、一般的にそう言われてますけどね!? 貯金してるだけじゃダメとか、カネに働かせろとか、カネを使うときは将来への投資になるかどうかで判断しろとか」
「はい、ですので将来への投資です」
「もういいです。何も言いません」
カナルは「はぁー」と頭を抱えながら、ため息をついていた。




