新たな旅立ち3
ガレージに入ると、バイクの傍に立っていたフィリーオ兄様の元へ駆け寄った。お兄様が昨日と同じように私を抱き上げ、バイクの後ろに乗せると、タンデムの準備を始める。
「二人とも、気をつけて」
「はい」
「はい、お母様」
私達が頷くと、「今朝から不審な飛翔型ロボットが、この周辺で飛んでるらしいから、念のため地下道からメインルートに出なさいね」と教えてくれた。ガレージのシャッターは閉まったまま、ゆっくりとシャッターの手前の床が傾いてスロープになると、私達を乗せたバイクが走り出す。私は後ろを振り返って、お母様が見えなくなるまで見ていた。
*****
地下道からメインルートに出た私達は、カナルのキャラバンに合流するため、会話もなく走り続けた。写真で見るようなサバンナの景色を眺めながら、土と草、そして、まばらにある木々の間を埃を巻き上げながらバイクで疾走していると、お兄様が『追跡されてる』と呟いた。
「私達をですか? もう見つかってしまうなんて」
『いや、僕達と分かってるなら、こんなに走らせるのは変だ。すぐにメインルートに出た時点でアクションをとるハズだから、とりあえずLISS方面からメインルートに入る車両の行き先を片っ端から網羅的に把握しようとしているんだろう』
「行き先を把握されるのは面倒ですね……お兄様、まいてしまいましょう」
『それならカナルにトレーラーのバックを一部解放して待機するように連絡を入れてくれないか?』
「わかりました」
私は頷き、続けてインカムマイクに「アプリケーション 00 コール カナル」と言うと、すぐにカナルが応答した。
「琉梛です。これから合流しますが、追尾されてますので、トレーラーのバックの一部を解放して待機してください」
『……わかりました、念のためステージ用のジャンピングクッションをトレーラー内に配置しておきます』
「お願いします」
カナルとの短い通信が終わり、お兄様に内容を伝える。フィリーオ兄様が「わかった」と言ってバイクのナビゲーターパネルの操作をすると、静かだったバイクのエンジン音が変わった。
『ルナ、ごめん! 少し荒くなる』
謝罪の言葉と同時に、私の背後でボンッという爆発音がして、バイクのスピードが加速した。身体にグンッと重力がかかるのを感じる。
「お兄様! 火が出てます!」
『アフターファイヤーだから問題ない!』
一瞬、お兄様が何を言ってるか分からなかったが、ワンテンポ遅れて理解した。
――ちがーうっ! バイクの状態なんて聞いてない!
――タンデムで背後に火を吹かせるのは、映画だけにして欲しい
涙目になりながら、フィリーオ兄様に追尾を逃れるよう提案したことを後悔した。




