新たな旅立ち2
早朝、私はロークス邸のエントランスポーチにいた。お母様から「私が使っているものだけど、役立つから」と言われ、インカムマイクを渡された。私が左耳につけると、『ルナ、聞こえる?』とガレージにいるフィリーオ兄様の声が聞こえてきた。
「はい、聞こえます」
『インカムマイク、僕のと同期しておいた。電話もかけられるから、やり方を教わっておいて』
「はい、わかりました」
お兄様との通信テストが終わり、お母様に操作方法を教わった。
「本当は行って欲しくないんだけど……。LISSに行った琉梛の目撃者が何人かいるから、この問題が解決するまで琉梛が外に出れなくなって、おかしくなってしまうよりも、フィルと一緒に外に出た方がアナタにとって良いってことになったのよ」
そう言って私を抱き締めるお母様は、微かに震えていた。そして、「連絡は必ず入れてね」と、私に涙声で囁いた。
「はい、必ず」
私もお母様を強く抱き締めると、「いい子」と頭を優しく撫でてくれた。
「そういえば……お母様、お願いがあります。昨晩、検証していただいた『天使の虹』が出た離島の所有権を、管理者ごと買いたいと思っているのですが」
「そうね。調査するなら勝手に入って、後から問題視されるのは面倒よね」
「はい。ですから、お母様の旧姓――柴藤の名で権利を買っていただきたいのです。融資は私のところからの方が目立たないと思います。手付金ぐらいなら、現金ですぐに用意できるぐらいはありますので。あと、あくまで管理者は現状のままでないと、すぐに気づかれてしまいますから、そこは注意が必要です」
「わかったわ。今日中にやっておくから、その件は心配しないで」と言って、お母様が私の頬にキスをくれた。




