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キメラ研究へのフラグ ケンタウロスβ

「珍しい、お兄様から電話がかかってくるなんて」


 私がフィリーオ兄様に電話をすることの方が圧倒的に多いため、不思議に思いながら電話に出た。


「お兄様、こんばんは」


「こんばんは。 今日、キャンパスにルナが来てたって聞いたけど、何かあった?」


「お兄様に会おうと思って行ったのですが、急に用事ができたのです」


「それならいいけど、心配した」


「すみません、ご心配をおかけしました」


「明日もいつものように……「いえ、しばらくは手を離せない用事があって、キャンパスに行けないです」」


 ケンタウロスフラグを確認し、完膚なきまでに叩き潰すまではお兄様には会えない。

 具体的なことは何も言わずに、お兄様に謝って電話を切った。

 淡々とした返答をしてしまったが、お兄様が私のことを心配してくれたのが嬉しい。今度から行動を変更するときは、お兄様にも連絡を入れておいた方が良さそうだ。




*****




 あの日以来、私はあの画家ナギラらしき女の人のアトリエに通い続ける。

 ケンタウロスのモデルにソックリな人は、午後になるとやって来ることがわかった。どうやら絵のモデルのアルバイトをしているようだ。


「色んな場所の窓から見たけど……ダメですね」


 折り畳み式踏み台の上で、窓にかじりつきながら呟いた。


「……見えないのか?」


「ええ、画家さんを見たいのですが、なかなかこちらの方を向いて……へ!?」


 窓を覗いている私の肩越しに、よく見馴れたハニーブラウンのサラサラの髪が視界に入った。


「お、お、お兄様!!」


「よそ様の家を無断で覗くのは、あまり良い趣味じゃないよ?」


「……はい」


 まさか一番ここに近づいて欲しくないお兄様に見つかるなんて、ガッカリだ。慎重に行動したハズなのに、お兄様の勘と情報収集能力は凄すぎる。


「ルナ、こっちにおいで」


 お兄様に手を引かれて行った先は、アトリエの入り口だった。

 そして、お兄様は躊躇なく呼び鈴を鳴らす。


 開いた扉から出てきた人は


 ――やはり、『画家ナギラ』だわ!


 儚い雰囲気に、スラリとした肌白の美しい人だ。

 長い前髪は斜めにサイドへ流しており、それにより作り出された陰影が一層儚さに拍車をかける。

 でも『フルフルちだまり☆』では、バトルメンバーに入ると、かなりのキレキレ俊敏なナイフ使いに化ける。ザックリ入ったスリットのロングスカートの中にナイフを何本も隠し持っている『お姉様』キャラだ。



「はい、どな………アナタ、絵のモデルにならない?」


 ナギラ画伯、私の予想通りの反応だ。突然の申し出に戸惑うお兄様に構わず、「彼とアナタを一枚の絵に描いてみたいのよ」と、ナギラ画伯は言葉を続けた。


「それは芸術性の高いステキな作品に……」


 私は、思わずナギラ画伯に同意しそうになった! アブナイ!!

 瞬時にトリップした精神を引き戻す。


 お兄様とケンタウロスモデルの人の絵画→ケンタウロスの油絵→ホラグロワールドにようこそ!


 ……という流れが脳内を横切り、続く言葉を飲み込んだ。

 目の前の最高傑作になり得る芸術品の可能性に気を取られ、ケンタウロスフラグの罠に引っかかるワケにはいかない!


 ナギラ画伯はフィリーオ兄様しか目に入ってないらしく、私の言葉は聞き流された。良かった、セーフだ。


 ――フラグ確認は出来たけど、知り合いになっちゃった!


 ――どうしよう


 お兄様を絵のモデルに勧誘することは、すなわち『呪いの美術品コレクターによって、他の呪詛系芸術作品の隣にアナタの体から取り出した心臓だけ飾られてしまう最期』を意味するけど、いいんですか? ……と、尋ねることもできない。


「わ、私たち、あなたの絵を見にきただけですので! モデルはダメです!」


 自分がモデルに勧誘されたワケではないのに、フィリーオ兄様とナギラ画伯の間に入り、怒ったような物言いになってしまった。初対面にも関わらず、自分でもヒドイ態度に呆れるが、こちらは二人を引き離すのに必死だ。


「お兄様、帰りましょう」


 私はフィリーオ兄様の腕をギュッと抱きこみ、お兄様を引っ張って画家ナギラのアトリエから離れた。

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