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桐谷さんと写真3

 「天使の虹」が島の影に隠れて見えなくなってしまった。長い時間見ていたような気もするし、ほんの一瞬しか見てないような、そんな不思議な感覚だ。私は、今撮った「天使の虹」の写真をすぐに見たいとワガママを言って、桐谷さんのキャビンをフィリーオ兄様と一緒に訪ねた。


「今、繋げるから少し待っててくれ」


 桐谷さんがモニターとカメラの設定作業に入る。


「フィルムの方は、帰ってからしか見せられないから」


「はい」


 わかってます、と頷いた。起動音がして、写真が次々に写し出される。そのほとんどが島にいる動物達だった。


「ここからだ」


天使の虹が画面に映ったが、色合いが微妙に違う。


「……こんな感じでしたっけ?」


「まだ調整前だからな、ここから見たときの記憶を頼りに色を再現していくんだ」


「そうなんですか!?」


 私が驚いていると、お兄様が「写真を趣味にしてない僕らのように、撮ったら終わりじゃないよ、ルナ」と説明してくれた。


「デジタル化された暗室で作業するようなイメージだな。今夜には出来るはずだ」


「楽しみです」


 桐谷さんは、「期待してくれ」と言って撮った写真の整理と調整作業に入った。邪魔にならないように私とフィリーオ兄様、そして奈月さんの3人で、キャビンを出た。


「動物の写真より、ああいう気象現象の写真の方が、構図がシッカリしてるスゴイ写真を撮ってる気がするのよねー」と、ドアを静かに閉めながら奈月さんがボソッと呟くと、お兄様も「うん、そうだね」と頷いた。


「私もそう思います!」


 力強く私が言うと、ガチャとキャビンの扉が開き、「お前ら、丸聞こえだ」と桐谷さんが顔を出した。


「あ、ごめん! 私達、邪魔しないように消えるからごゆっくり! 思う存分、引きこもっていいよ?」


 奈月さんが、まったく反省していない軽い口調でそう言いながら桐谷さんをドアの向こうへ押し込むように、扉を閉めた。


「あの! 写真、楽しみに待ってます」


 このまま立ち去るにはいたたまれず、閉まった扉に向かって言葉を告げた。

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