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ランチタイム

 お兄様には今朝の仮病がバレてしまったので、堂々と食事ができるランチタイムとなった。ただ、桐谷さん達にはナイショなので、ダイニングには行かずにルームサービスをお願いする。

 夜の海風は冷たいが、今は爽やかな風がバルコニーに吹いているので、そこでフィリーオ兄様と二人でランチを食べることになった。


「世界最年少のイリュージョニストか……」


「突然、どうしたんですか?」


 サンドイッチを食べ終え、食後のミルクティーを飲もうとティーカップを持ち上げた手を止めた。


「今夜のイリュージョニストは、人生の早い段階でその才能を見出だされた舞台に立ってるから……生涯に渡って、その道のスペシャリストとして、極めていくんだろうなって思っただけだよ」


 私を見ながらそう言った後、「やりたいことが、その年齢で見つかるのが羨ましい」と、お兄様はバルコニーから見える空を仰いだ。


「お兄様は……、やりたいことが特にないから、おじ様達の希望である研究者になるのですか?」


「いや、そうじゃない。親に勧められたこともあるけど、最終的には自分から選んだ道だ。他のヒトと同じようになるためには、絶対、自分の将来において必要になることだからね」


 ――キメラ研究が、お兄様にとって絶対に必要なこと?


 ――異種間で交わることがないものを、交わらせて1つの生命体を創る


 ――今は成功していない技術的なカギとなる研究


 繋がりそうで繋がらないのは、まだ情報が足りないからだ。お兄様の秘密が、まだ他にもあるということだと思う。


「やらなきゃイケナイことが他人(ひと)より少し多いってだけだよ」


 フィリーオ兄様は、そう言って笑った。その笑顔が、私には痛々しく見えてしまい、気がついたときには「ツライのですか?」という言葉を口にしていた。


「ルナ……」


 お兄様が私の手をとり、手の甲に口づける。


「ルナが側にいるから、辛くはないよ」


「フフッ、それならフィリーオ兄様は、これからも大丈夫です。ずっと私は側にいますから」


 私は、お兄様の手にもう片方の手を添えて包み込み、笑顔でそう言った。


「……ありがとう」


 お兄様は私を抱き寄せ、「好きな人から同じぐらいの想いを還して貰えるのは幸せだ」と、呟いた。

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