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監視する者

 早朝、私はプライベートビーチの浜辺を一人で歩いていた。日傘や帽子も被っていないところをお兄様に見つかったら、「髪や肌が痛む」と注意されて、即シャワールームに放り込まれるだろう。

 何となく独りになりたくて、ベッドから誰にも内緒で抜け出した。私の身体に絡んだフィリーオ兄様の腕から、そーっと気づかれないように、息を止め、寝ているのを確認して抜け出したので、しばらくは探しに来ないだろう。


 まだ朝日が昇る前で、ちょっとだけ水平線近くの一点が光っている。ブルーグリーンの海も穏やかで、船の上で聞いた、まっすぐ突き進む波音とは違っていて、楽しい。


「…………」


 プライベートビーチの端まで着くと、誰かの小さな声が聞こえた。


 ――あれは……ジン?


 ビーチの端にある植栽の裏にヴィラのスタッフの待機するための小屋があった。私がジンを部屋に入らないようにしたせいかもしれない。私達が使っている部屋近くのスタッフの部屋は、ロークスの執事が使っているから。


「勘づかれたかもしれない。子供の方が人を見る目があるって話は本当かもな」


 何の話だろうか。気になって、はしたないことだが、聞き耳を立ててしまう。


「あれが実験の成果とすると、正直恐ろしいよ。見た目は人間と同じだが、骨格は違う系統だ。殆ど人間と変わらないから、専門知識がないと気がつかないレベルだし、服を着てればまったく気づかない。綺麗な容姿だけどな」


 ――実験の成果? 綺麗な容姿?


 とりあえず、ジンを執事として部屋に入れなかったのは正解だったと確信した。

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