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◇39 人質フラグ

「ルナ・ロークス……。なぜ、ココにいる?」


 表情がなく、私を見下ろす目は冷ややかだ。全身に返り血を浴びているシャロン・ライナーが怖い。恐怖心を固定した笑顔で覆い隠した。


「私も『とある方』に頼まれ、探し物をしていたんです。あいにくまだ見つかっていないのですが」


「…………ブレアに『ルナ・ロークスは殺すな』と言われている。用が済んだら、出て行け」


 私だけ見逃すつもりらしい。しかし、カナルは見逃すことはないだろう。一瞬でもココを動けば、すぐ隣に立つカナルが危ない。私は返事をせず、沈黙した。


「聞こえなかったのか? 早く行け」


 いつまでも行動しない私に苛立ちを隠さず、私の腕を掴む。エレベーターの外へと引きずり出そうとしている。とっさに私はカナルの手首を掴んだ。シャロン・ライナーに引っ張られると、私と一緒にカナルもエレベーターの外へ出た。


「その少年の手を離せ。聞こえてないのか?」


「聞こえいます。でも、手は離せません。探し物をするために必要な助手です」


 ココで手を離せば、カナルが人質として使われてしまう。そうなれば、お兄様の行動も制限されてしまうし、たとえカナルが助かったとしても『お兄様の足を引っ張ったこと』を許せず、カナルは苦しむことになる。絶対、カナルの手を離すことはできない。


「助手? 助手の割にはまったく冴えない。ルナ・ロークスの下僕か」


「ええ、そうです」


 驚愕して私の方を見るカナルが視界の片隅に入ったが、「私の手先として、探し物を調べさせているんです。ココは埃っぽくて、体に良い環境ではないですから」と構わず続けた。


「そういうことなら、私も一緒に行動させてもらう」


「!」


 シャロン・ライナーも私達についてくる? 言っている意味がわからない。こんなことになるなら、やはりカナルを一旦見捨てて、フィリーオ兄様に救出を任せ、自分だけ探し物をした方が良かったかもしれない。シャロン・ライナーの予想外の言動に困惑した。

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