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◇26 魂のループシステム

 誰かが毎回このシステムをカナルが死んだあとに作動させている。誰が? 1番可能性があるのは……リネアのリングを受け取りに来ていたホーラ・アルカード?


「……ボクが毎回時の流れを往ったり来たりするのは、不安定な封印を解除したことが原因ですね。それに……きっと、帰還の術式も完全ではないから、古術式祈祷師であるボクの記憶は転生してもリセットされずに引き継がれたんだと考えられます」


 カナルは顔色を失いながらも、冷静に自分が置かれている状況を分析している。


「では、もしココで安易に封印を解くと、今までと同じように、今世の人達の魂は術で指定した起点に戻り、カナルさんだけ一度昔に弾き飛ばされたあと、元の魂の流れに戻る現象が起きてしまうかもしれませんね」


 やっとカナルが言いたいことを理解することができた。そして、声の主の要望を叶えるのは難しいことも分かった。

 そもそも、なぜこんなものを作ったのかが不明だ。私が今世に転生するまで何回やり直しても、キメラが闊歩して人類を滅亡に追いやり、ロークスは跡形もなくなる未来しかない。しかし、この機械が毎回発動していたということは、これを作った人物がそういう未来を望んでいないということだけは伺えた。


「カナル、これを作った目的を知りたい。この封印が解除される条件は分かるか?」


 お兄様の言葉で気づく。毎回、その解除条件で発動させてまで叶えたいものとは一体何なのだろうか。ホーラ・アルカードが行動しているということは、間違いなくこの機械にブレア・ライナーも関わっているはずだ。つまり、この機械の発動を抑えている封印解除条件が分かれば、一連のブレア・ライナーの行動目的を少しでも知ることができる。


「解除条件……ですか? 式札はあくまでも封印するためのもので、封印を解くためのものは別にあります。そちらを探さないとわかりません」


「手がかりになりそうなものもないということか?」


「はい。封印解除の発動条件は物で何かするとは限りません。『ある一定の動作と言葉の組み合わせ』だったり……場合によっては『ヒトや動物の死』だったりします。ただ『動作と言葉の組み合わせ』だと、古術式祈祷師の者でない限り、遠隔での完全な解除はできないかと思います」


「だとすると、発動条件は『ヒトや動物の死』か『物』ということになるな。だが、ヒトや動物なんて、いつ死んでもおかしくない。不確定要素がでかいから、それを発動条件するとは思えない。ということは……『物』か」


 お兄様とカナルの話から発動条件が絞り込まれた。お兄様達が死んだあと、ロークスもなくなり、キメラが闊歩している状況までカナルは見届けている。封印が解かれるのは、あの未来の歴史書(ゲームシナリオ)のあとだ。ヒトを攻撃してくるキメラがそこら中にいるのに、ここへ無傷で訪れるのは至難の技だから、発動条件のトリガーとなる物はココにないと思う。


「兄さん、どうしますか? この封印を解除をするとループに還ってしまいますし、発動条件の手がかりもないです。もうココにいる必要はありません。地上に戻りますか?」


「そうだな」


 お兄様とカナルが来た道を戻ろうとしたため、「お2人とも待ってください」と引き止めた。


「カナルさん、この機械をさらに封印してください」


「はい? 封印してあるのに、さらに封印するってことですか!?」


 2重の封印となることがそんなに驚くことなのだろうか? いまいちよく分からない。金庫とかは2重ロックなんて当たり前で、3重だったり、4重だったりするのに。私はカナルに「ええ、そうです」と当然のように頷いた。


「この封印を補修するのではなく?」


「それでは意味がありません。これを作ったヒトの発動条件で封印が解けてしまったら、私達は影響を受けてしまい、何もできなくなってしまいます。この上からカナルさんが完璧に封印し、私達の封印解除発動条件にすれば、少なくともこのことについて気兼ねすることなく動けますから、その分だけ安心です」


「不完全な封印なので、たぶんその上から封印することは可能です。でも、ルナさん、封印解除の発動条件はどうしますか?」


「いい考えがあります。それは……」


 私はカナルに耳打ちし、そのアイデアを告げた。

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