◇16 もう1つのメッセージ
メタルディンプルパーツが入っていた白いケースの残骸を落とさないように片方の手のひらに集めると、「ルナ、まだそのバラバラになったヤツは使うから」とお兄様に言われた。私のところに来たお兄様は「組み立て直す」と言って、私の手からバラバラになっている白い残骸を1つずつ手に取り、元のスティック状の形態に戻した。
「コレも指輪と同じ素材で出来ている」
お兄様はリネアのお母様に袋の中にあるリングとスティックを入れ替えるようにお願いする。さっきと同様に中を覗くと、光の照射がリングと違っていた。袋全体に光が広がっていて、浮き出たメッセージは緑色だ。
「地図?」
「ああ。この地形からすると……印のある場所はこの国周辺にある島だな」
「裏はどうなってますか?」
袋を裏返すと、『時の流れと魂は、この地で契約される』と記されていた。
――時の流れ?
時間を操るための機械なんてあるのだろうか? でも『契約』と書いてあるから、機械のことじゃないと思う。わからない。とにかく地図で示された場所に『何かがある』のは確かだから、ソコに行くしかない。また元に戻して浮かび上がる地図の写真を撮るお兄様の横で、私はメタルディンプルパーツをアリマスさんのスティックが入っていた透明なケースにしまった。
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私達は見送ってくれたリネアのお母様にだけお礼を言い、結局、リネアのお父様には誤解されたままリネアの家を出た。誤解が解けるまで、もう私達とは会ってくれないと思う。ナギラさんとはココで別れることになり、私とお兄様、そしてカナルの3人だけで、一旦家に戻ることにした。ナギラさんは、別れ際に「あの時、ホントは親戚の私が機転を利かせなきゃダメだったわ。辛い思いをさせてゴメンね」と抱き締めてくれた。「いいえ、気にしてないです」と作り笑顔を見せると、「さすがね、お転婆姫は強い子」とナギラさんも笑顔を返し、「じゃあ、またね」と手を軽く上げ、行ってしまった。
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「今日は災難でしたね」
「何がですか?」
家に入るなり、カナルが私にそう言う。
「ホーラ・アルカードと鉢合わせしたばっかりに、リネアさんの父親に『出ていけ』って」
「そのことですか。あのリング、私かカナルさんぐらいしか指に嵌められないサイズでしたので、ホーラ・アルカードに渡さないようにするためには、ああするしかなかったんです。リネアさんのご両親に対しては失礼な態度であったことは自覚していたので別に平気です。まぁ、カナルさんがリネアさんのリングをはめて、『取れない! どうしよう』ってやってくだされば良かったんですけど」
「ムリです。ボクにはできない」
即答するカナルを「そうでしょうとも」と鼻で笑った。私は「疲れたので、部屋で休みます」と宣言し、サッサと階段を上がって自室に向かう。まだ夕食までに時間はあるから、ゆっくりできる。無理したせいでココロがギスギスしていて、眠ってしまおうと思った。




