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初めての大きなトモダチ

 私は考えることなく、自分のリュックからバルドーヴィストリーのダイヤとカバンの飾り金具を取り出し、再び分散レンズに代わる部品を組み立てた。念のため市場で買った儀式用のククリナイフも持って立ち上がり、そのまま走って画家ナギラの前に出る。


 木々の間の薄暗さの中に煌々と光る球体状のものは、徐々に輪郭をハッキリさせ、集光していく。あの晩、船上で見た光景と同じだ。

 ただ、森の中に現れたので、飛翔系ではなく、植物系である可能性が高い。

 タイミングを見計らって、キメラの光の中心部にダイヤの部品を投げようとした直前、部品を持つ私の腕を掴んで止められた。


「何をするんですか!? やめてください!」


「それはコッチのセリフよっ! それを外すのにロークスさんが、どれ程苦労してたかアナタは分かってないでしょっ!? お転婆なお姫様の子守りも大変だわ」


 掴まれた手首をねじって逃れようとしても、画家ナギラの腕力が意外にあり、身動きが取れない。


「離して!」


「離さないわよ! そのダイヤ、森に投げ捨てるつもりでしょ!?」


「違います! いいから離して! 手後れになるから!」


 キメラの光が集光し終わり、その集光点よりドロリとシダのような植物が出てきた。その動きは、陸に打ち上げられたタコの足のようだ。


「ナギラさん、アナタのせいよ!」


 粘度のある水音の方を見て、「何、あれ」と、信じられないものを見るかのように呟くと同時に、私への拘束がすんなりと解けた。


「早く、ココからいなくなって! そして二度と私達には関わらないで!」


 私はククリナイフを抜刀して構えた。ところが、私の言葉を聞いている画家ナギラが、その場を動こうとしない。



 ――どうして? 早く立ち去ってよ!



「絵を描き続けたいのなら、早く行って!」


 遠心力を使って中心部に打撃を加えたい。揺れながら動き続ける植物系キメラの中心部を見極めようと、目を細めた。


 ――そこ!


 構えたククリナイフを踏み込んで投げようとしたところで、また拘束された。


「ナギラさん!」


「アナタの力じゃ無理よ」


 画家ナギラからの容赦ない厳しい指摘が入り、悔しい。


「なら、アナタが……アナタがこのナイフを手に取って、アレをやっつけるって言うのですかっ!?」


 構えたククリナイフを返し、画家ナギラの体にナイフの柄を突きつけた。


「アナタに、その覚悟があるならコレを手に取って! 二度とアナタの夢、芸術の道が絶たれても構わないのなら」


 感情的になり、その言葉を口にしてから後悔した。


 ――お願い! ナイフを手にしないで


 言った言葉と反対のことを思いながら、突きつけたナイフとナギラの手元を凝視した。



「それなら今回の一回だけ、使わせてもらうわ」



 私の手からククリナイフを取って、後ろ手に構えた。

 研ぎ澄まされたオーラが、ナギラの身体全体を包む。

 植物系キメラの動きが小さくなるタイミングを見計らいながら、大きく振りかぶって中心部にククリナイフを飛ばすと、空気を切り裂く音がした。


 ザシュッという鈍い音と共に、中心部にあるキメラの光が見え、ククリナイフの先が七色の球体に突き刺さっていた。


「ピシッ」


球体はナイフが突き刺さった場所よりヒビが入り、パァンと割れ、七色の光に分かれてフワリと空気中に消えていった。


 ――さすがナギラさん、始めからバーサクモード


「これでいいのかしら?」


「……はい、助かりました」


 私が頷くと、ナギラが膝まづき、ギュッと私の体を抱きしめた。


「ちゃんと真剣にアナタの言うことを聞いてなくて、ごめんね? 本気にしてなかったワケではないのよ」


「ええ、わかってます」


「そう……」


 ナギラは私から離れて地面に刺さった儀式用ククリナイフを引き抜き、私の方に戻ってきた。


「アナタの背負っているのが、どれだけ重いのか知らないけど、アナタが助けが欲しいならチカラになるわ」


「……ありがとうございます。ナギラさんのチカラを借りる状況になって欲しくないですが、お気持ちは嬉しいです」


 ナギラが泥のついたククリナイフを私に差し出すと、走ってくる足音と共に「ルナ!」というフィリーオ兄様の私を探す声が聞こえた。

 体が強ばって、ククリナイフを受け取らずにいると、その様子にナギラは察して頷いた。私の足元に落ちている透かし彫りの鞘を拾いあげ、ククリナイフを一振りして泥を落とし、鞘に収める。


「ルナ、何も言わずに移動しないでくれ」


「ごめんなさい、お兄様」


 フィリーオ兄様にキメラに関するものを見られなくてすみ、安堵する。自然に笑顔が綻んだ。


「じゃあ、私は先を急ぐから」


「ナギラさん、ありがとうございました」


 お辞儀をすると、ナギラは首を横に振った。「はい」と、ナギラが私にナイフを差し出したとき、「ルナ、そのナイフを使うようなことが起きたんだね?」と隣に立つお兄様が言った。


「え!?」


「少し泥がついてる」


「…………」


「あー、大したことじゃないわ。私が使わせて貰ったのよ。これ……トモダチの証として貰うわね?」


 私が無言でいると、ナギラは私に目配せをしながらククリナイフを持ち上げ、そう言った。

 そして、「じゃあ」と私とフィリーオ兄様をその場に残し、振り返ることなく、足早に立ち去って行った。

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