表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
198/264

Θ キメラの部屋1

 カナルが動けるようになるまで待ってから、2人でオーク材の扉を開けた。キィィと微かに音が鳴り、不気味さが増す。扉の中へ入るのを躊躇っていると、「ルナさん、何かありました?」と隣の扉に手を掛けているカナルに聞かれた。


「いえ、何もないです。でも不自然なほど誰もいないので変ですね」


「これだけ広い古城だと、かなりの人員が必要となりますから。効率よく管理するために、トラップで侵入者を排除したり、謎解きや仕掛けとかで城の中に侵入しないようなシステムを作って、セキュリティを強化させてるのかと思います」


「あと考えられることは……ヒトを城内に配置したくない理由があるということですね。確か、この古城は『私設美術館』でしたよね?」


「そうです。最下部のフロアーにある美術館には、運営スタッフとして普通にヒトがいた記憶があります」


「美術館の部分だけヒトがいて、他の場所にはヒトが立ち入らないようにしていると考えていいかもしれません」


 ココに来るまで、これだけの仕掛けがあったことを考えると、美術館や古城の正規の出入口から立ち入ることができない仕組みになっている可能性が高い。だから、どんなにカナルが今までのループで『呪いの美術品コレクターの古城』に訪れても、城の上層に位置するココまで来たことがなかったという話も頷ける。


「そうなると、この扉の先からは通路に罠を仕掛けられていないってことですね。各フロアーの通路のすべてに異なる仕掛けを設置するのは非効率的ですし、古城の持ち主が移動の度に仕掛けを解除して歩くような面倒なことはしないハズですから。罠を仕掛けるとしたら、おそらく侵入されたくない部屋の扉か、その部屋の中だ」


 そう言ったカナルの推測は正しかった。ヒンヤリと薄暗い城の通路は、歩いていても何も起きなかった。オーク材の大きな扉がある階と同じフロアーにある部屋に入ろうとしたとき、仕掛けが発動した。

 その部屋の扉には鍵がなく、さきほどとは違う『謎かけ扉』になっていた。『謎かけ扉』自体は『呪いの美術品コレクター』のコレクションルームに入るため、カナルの『未来の歴史書(ゲームシナリオ)』で山ほど解いていたから、どんな種類であってもクリアできる自信がある。でも、トラップの方は不明だった。

 自動的に開いた謎かけ扉の先が暗く、ふらつかないように無意識に扉の取っ手に手を触れた。ハッと気付いて手を引っ込めて離れた瞬間、取っ手が突き出て刃物に変形してシュリッシュリッと上下に動いたのち、元の取っ手の姿に戻った。あやうく手が切り落とされるところだった。


「この部屋では、『壁や扉には触るな』ということですね」


 後ろで様子を見ていたカナルが冷静にそう言い、私の横を通りすぎた。台座にあるコインを手にすると、2つ目の『仕掛け扉』の問題をカナルが解く。

 ゆっくりと2つ目の『謎かけ扉』が開くと同時に、1つ目の『謎かけ扉』が同じスピードで閉まった。


*****


「薬品庫のようですね」


 棚に透明なガラスビンが陳列されていた。量は微妙に違うけど、すべてのビンに銀色の液体が入っている。


「違いますよ。これ、全部キメラだ!」


 カナルの言葉に反応するかのように、ビンに入った液体が一斉に動き、ガラス越しに銀色の液体に入った目玉が私達を見た。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ