Ε 謎かけの扉
カナルの抵抗にあい、回廊を1メートルも歩かないうちにギブアップした。「手が痛いです! アザになりますから」と怒ると、カナルはパッと前触れなく手を離した。険悪な雰囲気になる。もし、お兄様がココにいれば、こんなケンカにはならなかったと思う。
2枚の石扉まで来た私達は、その手前で立ち止まった。このまま怒っていても、今後のことがあるのでカナルと話さざる負えない。
「カナルさんはココを脱出したら、助けを呼んできてください」
「…………」
カナルが不貞腐れた態度で何も返事をしない。無視された。そういう態度なら、コッチだって考えがある。カナルが私に話しかけるまで、絶対に話さない。そうココロに決めた。
石の扉は装飾が一切なく、鍵穴やドアハンドルとかもない。押せばいいのだろうか?
「う~……んっ!」
片方の扉に手をついて押してみたけれど、まったく1ミリも動く気配すらない。カナルは動こうとせず、私のやることを眺めている。私が怒ってなければ、「手伝ってください」ぐらいは言っていた。でも、今、そう言うのは悔しい。
「謎かけ扉です」
もう片方の扉に手を伸ばしたところで、背後にいたカナルがボソッとソッポを向いて言う。振り向くと、視線が合った。
「ひとりごとです」
眉間に深くシワを刻み、顔をしかめたカナルに「『謎かけ扉』だってこと、当然私は知ってましたよ? 向こうにヒトがいないか確認しただけです」と、ウソをつく。さらに悔しさが増した。そして、「今のは『ひとりごと』です」ということも慌てて付け足す。
――『謎かけ扉』だと、共通する答えを2つ用意しないといけない
扉の手前にある右側の通路の壁には飾り棚があり、金杯が置かれていた。ちょうど反対側には銀杯が同じように置いてある。ということは、金か銀のどちらかを同じ色にするのが『謎かけ扉』を開く条件となる。
「変色のしやすさだったら銀杯ですね」
左側の飾り棚に置かれた銀杯を手にした。持ち上げるとガスが発生したので、呼吸を止めつつ杯を回す。杯の色が黄色になった。やり過ぎて黒くなってしまったら、ココに閉じ込められたままになるため慎重に色の変化を見極める。金色になったところで、銀杯をもとの場所に置くとガスも止まる。
飾り棚から離れた場所にいるカナルの隣に立ち、その時を待つ。2枚の石の扉がゴゴゴという重い響きをさせ、奥へと開いた。




