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Γ 古城

「ブレア・ライナーのキメラが何を企んでいるかは、ココから出て探りを入れる必要がありますね。でも、あれから何時間も経っていますから、おそらく会場にはいないでしょう」


「ええ、そうですしょうね。カナルさんはショーのあと、どうする予定だったのですか?」


「片付けと最終チェックの他はないです。そのあとは近くのホテルに宿泊する予定でした」


 捕まる直前、ブレア・ライナーのキメラは『カナルの偽物』と私が気がつかなければ、何もしない様子だった。そうだとしたら、特に周りの人が『カナルの偽物』と気づきさえしなければ、被害はないだろう。


「ボクに成り済ますとしても、短期間ならやりすごせるかもしれませんが、長期間だと気がつくヒトが出てくるから、被害が出ないうちに早く決着をつけたいところです」


「そうですね。ココには器以外には何もないようですし、早く出ましょう。カナルさん、キメラの状態ではココから出るのは簡単ですが、あのスロープを器に入って出るには難しいと思いませんか?」


 急なスロープは、ヒト知能融合型アメーバが高速移動しやすいように設計されているとしか思えなかった。つまり、器に入った状態でも出入り可能な場所が別に用意されているハズだ。


「そうですね。ココは浸水しないような造りになっているようですから、あるとしたら『隠し扉』ですかね。それと、拉致してきたわりに、ボク達を見張りがまったくいないのが気になります」


 カナルは突き当たりの壁に触れながら、そう言う。この部屋には隙間がないってことだろうか。でも密閉された空間にしては息苦しさがない。空気が常に循環しているように感じる。


 ――どこから?


 暗闇の中で空気の流れを追う。空気は床下から吹き上げ、スロープの方へと流れているように感じた。床下からの吹き上げなら、スカートの揺れでわかる。


「カナルさん、場所を代わってください。そして、アッチを向いていてください」


 カナルは怪訝な表情をしながらも、素直に従う。私はスカートを手で押さえつつ、奥の壁沿いに左から右へと歩く。スカートがフワリと揺れた場所を見つけ、しゃがんで床に手をつけた。風の流れが感じられる。間違いないようだ。


「カナルさん、ココです!」


「本当だ。こじ開けますから、ルナさんは離れていてください」


 鋼糸を手にしたカナルと場所を交代した。カナルは隙間から先端に細長い金具のついた鋼糸を隙間から入れた後、もう片方の手にある操作盤を見ることなく感覚だけでフリック入力する。床下でカシャンと金属音がして、鋼糸が勢い良く巻き上げられた。ビィーンと糸が張ると、カナルは操作盤を床に置き、サイドのボタンをグッと押しこんだ。パシュッという空気音とともに床に操作盤が固定された。さらにカナルは操作した後、私が立つ場所まで離れた瞬間、バキバキバキッという凄まじい音とともに木製の床が剥がれた。鋼糸の先端にあった金属は、四つ目イカリのような形に変形した状態で木片とともに出てくる。イカリ型の金具の動きが止まるのを待ってから、カナルがパックリ空いた床下を覗いた。


「石造りの階段?」


「この組み方、古城でよく見られるものですよ? カナルさん」


 天井がリブのあるアーチ型――ヴォールト建築で、しかも組み込まれている石が特徴的だ。


 ――キメラの器が大量に保管されていて


 ――特徴的なヴォールト建築の城


「もしかして……、ココは『呪いの美術品コレクター』の家?」


 私が記憶にある『未来の歴史書(ゲームシナリオ)』から城の内部に関する断片を手繰り寄せ、1つの可能性を口にすると、カナルが目を見開き、息を飲んだ。

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