11 手紙
カナルを見送り、サバンナ・ロークスの自室に入った。お兄様とはプライベートアイランドで会ったとき以来、会っていない。連絡をする気になれなくて、1週間ほど音信不通だ。このぐらいの期間はお互いに忙しいので、よくあることだけれど、これ以上連絡をしないのは、何かあったのではないかと思われてしまうだろう。
実のところ、さんざんはぐらかされた襲撃事件に関することで、伝えたい情報はある。でも、私に聞かれるとマズイことがあるらしく、この前の様子だと、たぶん話題にならないようにして、聞いてくれない。それに、お兄様の実験に必要な体細胞提供の話を振られるのは、私の方が困る。
「どうすれば……」
机に座ると、サザーラ家に養子に入ったプエルマからの手紙が目に入った。
「手紙!」
電子端末での連絡だと、返事が早く返ってきてしまう可能性があるけれど、手紙ならかなりタイムラグがある。しかも相手の反応をリアルタイムで見ることはないので、そんなに気を使わなくていいし、一方的に自分の話を伝えることができる。しばらく距離を置きたい場合は好都合だ。
私は、お兄様が襲撃を受けた島で、シャロン・ライナーに似た人物のことと、その人物がお兄様に似た人物と親しそうに話していたことを手紙に書いた。そして、しばらくはコチラも忙しく、いろんな事件に巻き込まれたせいで生じた勉強の遅れも取り戻したいので、連絡できないし、会うこともできないことを手紙の最後に付け加える。
これでお兄様に気づかれることなく、じっくりと『これから自分がどうしたいのか』を考える時間を確保することができる。お兄様が私に秘密にしていることがたくさんあることは知っている。今さらそのことで幻滅するワケでもないのに、フワフワした気持ちが突如消え、今までになく冷静に相手を見ている。でも二度と会いたくないということではないから、何とも複雑な気持ちが入り乱れていて混乱する。これが解決へと繋がれば良いと思う。
私は手紙を封筒に入れ、しっかりと封をし、お兄様の名前を綴る。それを執事に渡し、お兄様に届けるようお願いした。




