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ar ジンからの打診*フィリーオ・ロークス立会い

「よお、オマエってとことん巻き込まれるな。今回も嬢ちゃんのせいか?」


「なぜ、ココにいる」


 LISUのスタッフ、現地警察官2人と共に救護室へ向かっていると、爆破された扉の前の通路にアルアイラ邸で別れたジンがいた。


「なかなかホテルに来ないから来てやったんだ、感謝しろよ」


 聞いた質問に対して答えをはぐらかしたということは、ジンが正規にココへ派遣されていないと容易に想像がつく。おそらくツテを使って現地の警察と同行し、潜り込まなくてはいけない急ぎの用件ができたということだろう。


「そっちの都合で動いているワケじゃない。前置きはいい。用件は?」


「相変わらず余裕がねぇな。まぁ、いい」


 一緒に来たスタッフと警察の2名は空気を読むように「先に入ってますね」と、爆破された現場に入っていった。すでに中に鑑識メンバーもいて、作業音が絶え間なく聞こえて騒がしい。


「実は、オマエのところで保護している人形の嬢ちゃんを引き受けたいって酔狂な話を無茶振りされて困ってるんだ」


「なぜ僕に? 正式にロークスを通せば済む話だ。引き渡し要請をすればいいだろ」


「そんなの決まってるだろ。そんな要請したら、オマエやロークスの嬢ちゃんは中身を抜いてガラスの目玉を入れた人形を引き渡すだろ? それじゃあ、意味がねーよ。だからオマエに事前に打診してるんだよ」


「その身元引き受けを考えているヤツは誰だ?」


「例のオークションの出品者で、アルアイラ邸の持ち主だ。管理人が『人形の嬢ちゃんと孫娘がそっくりだった』と口を滑らせた」


「なるほどな。言っておくが、プエルマの知能は6、7歳だ。知能のそれ以上の発達は、生体の構造上、望めない。それと、実験体の引き受けを行うにはロークス内部規定の審査がある。たとえ要人であっても、例外はない」


「わかった。その話をしてみるが、諦めねーだろうな。頑固そうな婆さんだからな」


「先方にその話をして、まだ気が変わらないようなら、ルナに引き受けの話を概要だけでいいから話してくれ。今、彼女がプエルマの身元引き受け人になっている。彼女の最終判断で審査の実施が決まる」


「わかった。諦めてくれりゃいいんだけど、ダメだろうな」


 ジンは厄介な依頼にウンザリしているようだ。そうぼやきながら、「じゃあ、ヨロシクな」と軽く手を上げ、焼け焦げた通路から立ち去った。

 これでルナの実績が作れる。身元引き受けのマッチングは難しいだけに上手くいけば大きな成果となるから、実験体の管理責任者として『管理ができた』と見なされ、自分と彼女との『あの約束』を果たせる日がより早くなる。なんとも打算的な考えだ。自分がそんなに打算的だということを彼女には知られたくはないし、自分がどう考え行動しているかなんて彼女は知らなくていい。

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