am 奪還するための奇策
「こういう状況だから、レンを今すぐ救護室に連れて行くのは無理だ。ココでしばらく待機になる。とにかく、この状況を打破するためには『ブレア・ライナー』のキメラを捕獲するか、仕留めるかのどちらかしかないな。まぁ、さっきまでの様子だとLISUのスタッフに抵抗されるかもしれないが」
お兄様の言葉におじ様も私達も同意する。救護室には『例のコレクター』であるブレア・ライナーのキメラを迎賓室に案内したシャロン・ライナーがいる。今のところ、ココが1番安全な場所だ。それに、LISUのオフィスにブレア・ライナーのキメラがいるとなれば、たとえ上手くココから脱出できたとしても、ひたすら私達は追われる身になってしまう。それにしても意外なのは、LISUのスタッフがブレア・ライナーのキメラを何も疑問もなく存在を受け入れていることだ。
「お兄様、LISUのスタッフが抵抗すると考えられるのは、なぜですか?」
私の疑問に答えたのは、お兄様ではなく、おじ様だった。
「『ブレア・ライナー』はもともとココとLISSの合同軍事研究の管理責任者だった。まだ現役だった頃を知る者がスタッフの中にはいるからね。ロークスの軍事施設のスタッフにほとんど知られていない極秘で行われた人体実験で事故が起きた。現場に監査に入った私の目の前でそれが起きて、管理責任者が不在となった」
「それで急遽、おじ様が管理責任者になったのですね?」
「ああ、そうだ」
LISUのスタッフは、『ブレア・ライナー』の現役時代を知っているけど、極秘実験でキメラになったことを知らない。それなら、『ブレア・ライナー』がヒトではないことをLISUのスタッフに示せばいい。
「お兄様、LISUのスタッフの抵抗を受けずに、『ブレア・ライナー』のキメラを処理できるいい考えがありますよ?」
「どういう?」
「『ブレア・ライナー』の器を一部壊せば、器に固定されていないので、アメーバー状態の本体が外に出ます。あとはLISUのスタッフのみなさんの反応を待つだけです」
「ああ、確かにキメラの『ブレア・ライナー』を知らないヒトが見れば、偽物だと勘違いしますね。ルナさんらしい奇策です」
カナルが『奇策』とか言っているけど、卑怯な方法であることは重々承知している。でも正攻法ではLISUでの被害がさらに拡大する可能性が大きい。
「あと、もう1つ考えがあります。私とプエルマもオフィスに行きます」
「私も?」
「ええ、アナタしかできないことです」
プエルマの手を取り、微笑んだ。




