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ag ゲーム感覚

「ルナさん、兄さんを囮に使うなんて失望しましたよ! あまりにも扱いがヒドイ!」


 私の後ろを走るカナルが難癖をつける。


「おじ様の救出を優先するように言われてるんです。合流なんかしたら、それこそお兄様に失望されますよ?」


 話しかけられても振り返らずに足を止めることなく、前を向いたまま反論した。


「でも! 兄さんに囮になるよう言われたって!」


「お兄様は、私を囮になんて使わないですよ? だって……」


「『愛されてますから』って言うんですよね? いちいち言わなくていいですよ!」


 私が言おうとしたのに、先に言われてしまう。分かっているなら、そんなこと聞かなければいいのに。


「ルナ、ヒトがいっぱい」


 事務所の中は、さっきまでと異なりざわついている。ヒトの出入りも激しくなっていた。


「でも、行くしかないです」


「見つからないように?」


 プエルマがそう聞くので、「ええ」と頷く。


「プエルマさん、『だるまさんがころんだ』というゲームがあるんです。お母様に教えていただいた楽しい遊びです」


「その遊びは、鬼役が見ているときに動きを止めるだけですよね?」


 横からカナルのツッコミが入った。


「そんな細かいことはいいですから! LISUの皆さんに見つからないように隠れながら、向こうに行きましょう」


「ルナ、見つかったら?」


「立ち入り禁止区域まで全力疾走、強行突破です」


 プエルマが気を引き締めたように真剣な表情で素直に頷くが、カナルは深く息を吐いて目元を片手で覆った。



*****


 

 私達は事務所の窓から見られないよう、屈みながら移動し、窓のない壁部分で止まり、再びタイミングをみて先へ進んだ。


 ――問題は、あの出入口ね


 どうすべきか悩んでいると、ニュルリとした粘りのある液体の音と共に、急に辺りが暗くなる。


「え?」


「ルナ、ヒトが来るから」


 いつの間にか、プエルマの本体である銀節色のアメーバに包まれていた。大人の足音が私達の前を通りすぎると、液体はプエルマの体の間接部分から中へと戻る。


「人体消失マジックと同じ原理ですね。隠れ蓑の術とも言います。この壁がグレーだったので助かった」


 カナルが解説してくれたが、そんなことは終わったことなので、どうでもいい。まさか、おじ様を誘拐したヒト知能融合型アメーバと同じようなことがプエルマにもできるとは思わなかった。


「……これは、かなり使えます! プエルマさん、あの出入口の近くで、もう1度やってください」


 プエルマが「わかったわ」と言ってくれた。




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