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襲来したキメラの光

 「お兄様が見てしまう前に、なんとかしなきゃ!」


 こういう現象は、写真で見ると生で見るのとでは、実感する度合いが違う。人は写真だと、どこか自分とは遠いところで起きている事象ととらえがちだ。


「早くキメラの光を分散させないと……分散させるには、分散レンズが必要だけど」


 必ずキメラが現れる前には、ぼやけた球体の輪郭が徐々にハッキリするとともに七色の光が集光する。ゲーム『フルフルちだまり☆』では、集光する前に桐谷と奈月が開発した分散レンズを使って、集光を防ぎ、キメラの発生を抑えられるのだ。しかし、ココにそんなアイテムはない。


 ――何か使えるものは……?


 外周デッキからキャビンに戻ると、ベッドの上に自分の持ち物を拡げた。


 ――急いで! 時間がない、光を分散させる方法を考えるのよ!


 お兄様とプールで使おうと思っていた強化型水鉄砲スーパーストームブラスター

飾り金具がついたカバン、そして、お母様に頼まれたバルドーヴィストリーのダイヤ2個を手にした。


「無いのなら、作ってしまえ! ニンゲンだもの!!」


 ――お母様、ごめんなさい! お兄様の命には代えられないの!


 時価いくらになるか分からないダイヤ2個の尖った部分を合わせ、カバンから取り外した飾り金具で止めた。カチッとピッタリはまる。


「やった!」


 私は強化型水鉄砲スーパーストームブラスターに水を入れると、ダイヤの部品を片手にキャビンを出て、ドレスのままプールのある船の屋上へと向かった。




*****




 ――狙うは、一瞬


 ――集光の始まる瞬間(とき)


 強化型水鉄砲スーパーストームブラスターの先端に、手作りのダイヤで出来た部品をぐっと押し込んだ。

 海風が強く吹き、髪やドレスがバサバサと乱れるが、気にせずにキメラの光を睨み、時が来るのを待った。

 客船のアンテナ部分の影から七色の光が見えたとき、ブラスターを構えた。


「!!」


 角度が足りない。

 ゲームではプレーヤーは子供じゃないから、身長も高く、問題なく処理できた。


 ――うそ! ココまで来て、それはナイでしょ!?


「ルナ!」


 声の方を振り向くと、タキシード姿のフィリーオ兄様がいた。セットした髪が崩れてしまってもステキだ。


「お兄様!」


 こちらに走ってきたお兄様の腕をグイッと引っ張っり、「ごめんなさい! 抱っこしてー!」と叫びながら、お兄様に飛びついた。


「えぇー!?」


 動揺しながらも私を抱えてくれたお兄様に構わず、体をひねってキメラの光にお母様のダイヤを撃ち込んだ。

 その瞬間、キメラの光はキレイな花火のようにバラバラに散って消えた。


「ルナ、あれは?」


「……プ、プロジェクションマッピングです」


 かなり厳しいが、それで押し通すことにした。



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