z ヒミツの探険2
別館のエレベーターホールは円形状で、空間の中央にエレベーターの乗降口があった。
「プエルマさん、音声入力となりますので、私がこのカードを使ったら、『所属先と名前、管理責任者』を言ってくださいね?」
「ええ、わかったわ」
プエルマの返事を聞き、LISUのロゴの入ったカードをパネルにかざした。
「LISU所属、プエルマ・アルカード。管理責任者は、ルナ・ロークス」
プエルマが言い終わると同時にエレベーターの扉がサッと開いた。
「お2人とも、行きますよ?」
私とカナル、プエルマがエレベーターに乗ると、扉が閉まり、動き出した。エレベーターの中はボタンや表示パネルが1つもなく、透明で外が見える。青い芝に覆われた丘が目下に広がっていたが、すぐに地中に入り真っ暗になる。一瞬、遅れてエレベーターの照明がつき、辺りが青緑色になった。まるで海の底にいるような気分になる。
扉が開き、私達は迷わずエレベーターから降りた。ホールの中は、さっきよりもさらに薄暗く、ディープブルーの照明が足元と円形の壁に埋まっている6つの扉だけを照らす。
「最初は正面の扉から行きましょうか」
プエルマを扉の正面に立つように促した。足音を立てず、静かに扉の前に立ったプエルマの真上から、一瞬にして稲妻のように赤い光が足元に向けて降り、続いて網膜認証システムが作動した。
プエルマの生体を使って扉を解除した1つ目の部屋には、手術台があった。
2つ目の部屋、3つ目の部屋も同じように扉を解除して中に入ると、それぞれユニットになっている歯科手術用椅子や顕微鏡つきの手術用椅子があった。なんか違和感を感じる。でもなぜ違和感を感じるのか分からず、スッキリしない。
4つ目の部屋に入ったとき、プエルマの反応が今までの反応と違った。何もない空間だけれど、プエルマは部屋を1周して確認している。この部屋にあるのは多数の照明と、壁に埋め込まれたミストの吹き出し口のような小さな孔がバラバラにいくつかあるだけだった。壁の中央に掲げてあるLISUのエンブレムに白い光が何ヵ所から当てられている。
「この場所……知ってる」
「え?」
「ココ、分かれて、私が生まれた場所」
プエルマの話が正しければ、つい数日前、秘密裏に『呪いの美術品コレクター』がココを訪れたことになる。そして、LISU内部の誰かが手引きしている可能性も考えられた。




