h ジンとの待ち合わせ
スーツ姿のお兄様とカナルと共にホテルのロビーに行くと、ジンが既に待っていた。
「ごくろうさん」
私達の顔を順に見回し、ニヤニヤ笑っている。自分の予想通りに私達が来たのが面白いらしい。
「招待状はあるのか?」
「ああ、これだ。身分証明や、預金残高を証明するものもすべて揃えてあるから門前払いはねぇよ」
ジンがジャケットから取り出した招待状をお兄様に渡す。お兄様は受け取ると、封筒の中のカードを確認した後、それをジンに返した。
「さてと、オマエらタクシーで行くぞ」
できる限りオークションハウスを見に行く観光客に紛れ、行動するらしい。先にジンがホテルの階段を下り、ブラックキャブのタクシーに行き先を伝える。
カナルの後ろ姿を見ながらお兄様に手を引かれ、階段を下りたところで、ジンが「ずいぶん大人びた格好をしてるんだな。そのガーターは、誰の趣味だ?」と笑っている。チュールレースのため、フレアスカートの裾から靴下留めが見えたようだ。ジンに言われたからと気にする必要はない。暑い時期には便利なので、お兄様にお願いして靴下留めだけ貰い、使っている。
私もお兄様もジンの質問自体何も聞かなかったことにして、後部座席に乗った。
「兄さんが……女性に下着を……ありえない」
先に乗り、私の横に座っているカナルが、まるでお兄様のイメージが総崩れとでもいうようにショックを受けた様子でブツブツ呟いていたが、ジンと同様、まるっとそれも無視した。




