表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
133/264

e 物語が生まれる国

 私達はLISHの特殊車両で、緊急車両だけが通ることのできるサービストンネル内を走り抜け、地上に出た。


「さすが……いろんな魔法使いの物語が生まれる国ですね。本の中に入ったようです!」


「ルナさん、何回もココに来てるのでは?」


「空港からロークス邸に直行しまうので、こんなに遠くからこの景色を見るのは初めてなんです」


 華やかだけと、厳格な雰囲気を持つ様々な物語の舞台となった街を車窓から眺めていると、お兄様が「もうすぐ地下に入る」と私達に告げた。


「ロークスの軍事施設ですか?」


「ああ」


 ――きっと、LISU(ユニオン)


 こんなに調べものが順調なのは久しぶりで、嬉しくなってしまう。


「ルナ、何かやろうとしてる?」


「え?」


「ときどき、ルナは油断できないことがあるから」


 そんなに表情(かお)に出てたのか分からないけれど、指摘が入った。こんなところで疑われたら、行き先が変更されてしまう。


「お兄様、私のこと誤解していませんか? たった10歳の子供に何かできるとでも?」


 お兄様は「そうだな」と含み笑いをし、私の方をチラッと見たカナルが窓の外に視線を向け、独り言のように「今ので企んでいることがバレたみたいですね」と言う。


「悪いけど、行き先を変える」


「兄さん、ココから北にある王立公園近くのホテルに隣接しているタワーにボクの家があります。ロークス邸より近いです」


「わかった」


 私が口を挟む間もなく、お兄様とカナルによって行き先が決まってしまった。



*****



 カナルの自宅の天井から床まであるガラス窓から、ゴシック様式の建築物と緑に覆われた公園、どこまでも流れる河に沿って、遠くの景色を眺めていた。


「ルナさん、すねてます?」


 窓から離れた場所にあるカラフルなパッチワークのベルベットソファに座ったカナルが聞いてきた。


「いいえ」


「それなら会場に潜入するんですから、準備しないと。そろそろ兄さんが戻ってきますよ?」


「わかってます」


 平静に言ったつもりだったが、「やっぱり、すねてるじゃないですか」と言われてしまう。


 ――だって、カナルがあの時言った独り言がなければ……


 そんなワケはないけど、ココロの中で八つ当たりした。

 お兄様は、私達をカナルの家があるタワー内で特殊車両から降ろし、「1時間後に戻る」と言って、そのままどこかに行ってしまった。お兄様が戻ったときに、すぐに出掛けられるように準備していれば時間ロスはないけれど、気乗りしない。


「まだオークションのプレビューまでには、時間はありますよね?」


「はい」


「それなら、少しだけ外出するのは大丈夫ですよね?」


「ダメですよ! 前にそうやってジンに誘拐されたじゃないですか!」


「ジンは、ココにはいないから大丈夫ですよ? 心配し過ぎです。ココの建物内から外には出ないので」


「……ココの中だけなら。約束ですからね?」


「わかってます」


 私はカナルの自宅から専有廊下へと出て、隣のホテルに向かった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ