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17 ミドナス・アルカードの正体

 刃物を向けられ緊迫した空気となっていたが、突然、別の場所でガシャンとガラスの割れる音とキィンという金属音が鳴り、同時に耳に入る。音の方を向くと、扉の鍵部分がゴトンと落ちた。私達と反対側の位置にあるサンルームの扉から入ってきたのは、カナルだ。カナルは入ってくるなり、パシッという僅かな音と共に、瞬時に無数の鋼糸で私達とミドナス・アルカードの間に壁を作るように張り巡らせる。


「ルナさん! 勝手に誰にも何も言わずに行動するなんて、何を考えてるんですか!?」


 出会って第一声がソレだ。援護してもらったにも関わらず、思わず「うるさいヒトが来た」と思ってしまう。


「とにかくコレを」


 私達がカナルのもとに駆け寄ると、カナルからインカムマイクを渡された。


「お兄様は?」


「兄さんは、後方支援です。接触は狙われる危険があるので」


 そう小声で答えたカナルは、ミドナス・アルカードがどういう人物であるか、おおよそ把握しているということだ。私がインカムを装備して、おそるおそる「お兄様?」と呟いた。


『ルナ、聞こえてる。出口は作ったから、脱出時には支援する』


 何も言わずに行動したから、一言ぐらい説教が入るかと思ったけど、普通の指示で拍子抜けする。そのおかげで、冷静に落ち着いて対応できそうだ。


「他人の家をこんなにぐちゃぐちゃにするなんて、仕返しのつもりかしらねぇ? この糸だって、私にはなんの意味も持たないのよ?」


 1人だけ鋼糸の網の向こう側にいるミドナス・アルカードが、そう言ってニィっと気味の悪い笑顔を浮かべる。シワのある手を目の高さまで上げ、鋼糸に指をかけた。プチッと指先が落ち、中から銀節色の液体が流れ出る。その液体は鋼糸を意思があるかのように波打ちながら移動し、徐々に床に広がっていく。さらに、ミドナス・アルカードの両目がポコッとへこみ、目玉部分が空洞になったかと思うと、再び指を切り、目玉が2つ出てきた。


「何あれ!?」


 ナギラさんが私の方を見る。


「あれは……確か、ヒトの脳とアメーバーを合わせたキメラです!」


「ドコを狙えばいいのよ? この前の遺跡にいたヤツと同じでしょ? このまま放置して脱出はマズイわよ」


「……遺跡にいたヤツ? どういうことですか!」


 こんなときにカナルがナギラさんの言葉に反応する。


「いいから! カナルさんは、あのキメラのことを知らないなら黙ってて! えーっと、ヒト知能融合型アメーバの場合……ヒト知能融合型アメーバは……液体のときは視覚のみ有効。聴覚、味覚等はなし。移動速度は横平面では遅いけど、縦方向は速くなります。爆弾や物理攻撃はチカラを吸収して無効化される。薬品も液体自体がミセル化された殻質層で出来ていて効かない」


 集中したいため、私よりよく知っているハズのカナルを黙らせた。カナルの未来の歴史書(ゲームシナリオ)を思い出すため、順に特性を言っていく。


「そして、倒す方法は……そう! 液体のカラダを固めてから、両目の真ん中を狙えばいいんです! コアは両目の間にあります」


 答えは出したが、「固める方法」が問題だ。使えそうな物を見渡す。サンルームの作業台を挟んで向こう側の壁にいくつかある接着剤のタンクが視界に入る。


「お兄様、ココに可視光硬化樹脂があります。ただ硬化させるためには光量が足りません」


 インカムで伝えると、『わかった、対象に硬化樹脂を散布した時点で照明弾を撃つ。全員部屋の方を向いててくれ』というフィリーオ兄様の回答と共に装填音が聞こえた。


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