表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
1/264

誕生 悪役令嬢の卵

*本編16年5月21日に完結しました。

*番外編 人形師6月19日に完結しました。

*番外編 呪いの美術品コレクター 8月7日に完結しました。

*番外編 影武者前編 9月3日に完結しました。

*番外編 影武者後編 10月19日に完結しました。

*番外編 囚われた今は亡き少女 5月9日に完結しました。


*随時、番外編をアップする予定です。

 生まれてこの10年間、私は不自由なく過ごしてきた。

 この世界が、前世で最も苦手なゲームそのものと気がつくまでは。


「この建物……そして、私の隣にいる従兄弟のフィリーオ・ロークス」


 はっきりと前世の記憶の中にあるゲームの映像と、目の前にある景色――国内最高学府のキャンパス、そして見目麗しい上品な顔立ちにハニーブラウンのサラサラな髪と瞳を持つ男子大学生の姿が、寸分狂わず一致した。

 背筋が凍り、カタカタと震える。

 まさか、あの美しいイラストパッケージデザインに騙されて買い、プレイしたらトラウマだけしか残らなかったホラグロRPG「フルフルちだまり☆」だなんて……


『フルフルちだまり☆』


 それはフィリーオ・ロークスが長年の夢であるペガサスやらケンタウルスやらを作り出そうと秘密裏にキメラ研究に没頭したことが発端である。

 途中まで上手くいっていた実験は失敗してしまい、フィリーオは命を落とす。そのため、実験室は管理不行き届きとなり、キメラが脱走、野生化してしまう。世界中に闊歩するようになったキメラが人類を壊滅に追い込む寸前という状況でゲームがスタート。

 プレイヤーはキメラを抹殺しつつ、増殖を抑えるために、フィリーオの実験メモを集めたり、フィリーオに縁のある人物と会い、謎解きをするアクションアドベンチャーRPGである。


 このゲームの登場キャラは、イケメン王子、ワイルド系、ショタ、ダンディーな執事、はたまた美少女各種まで網羅しており、キャラデザやキャラ設定は素晴らしかった。

 そのため、こんなにハードな内容とは知らずにプロモーションやパッケージに騙されて買った人は、男女共に数知れず。

 素敵なお気に入りのパーティーキャラが片っ端からバタバタと残酷な死に方で死んでいくのはプレイヤーにとってトラウマでしかなかった。パーティーメンバーになる10人以上のキャラが死亡による強制離脱で、後半をプレイする頃には心が折れ、「どうせ、このキャラも死ぬんだー!」と、育てようという気が起きなくなる。とにかく最後まで救いのない鬱展開連続のストーリーだった。



 ――ムリムリムリムリムリムリ!!


 ――誰か……誰かウソだと言ってえぇぇぇーーー!!!



「ルナ!?」


 あまりのショックに意識が遠くなり、フラっとその場で倒れた。




*****




 私は世界でも屈指のグローバル会社を経営するロークス一族の一員で、希望すれば習い事を何でもやらせて貰える教育熱心で優しい両親がいる。

 仕事で忙しい両親の「少しでも家族で一緒に過ごす時間を増やしたい」という希望で、世界中にあるロークスの邸宅を転々とし、場合によってはホテルに両親と共に長期間滞在する。そのため、私は学校へ行かず家庭教師に勉強を教わっていた。


 私に前世の記憶があることは、物心がつく頃には認識していた。ただ記憶があるだけで、その記憶を使ってどうにかしようということはしなかった。「ふーん」という感じで何とも思わなかった。記憶は断片的で、全てを思い出す訳ではない。何か重なる共通点をキッカケに頭の中で映像が甦るという感じだ。

 この10年は「あ、まただ」と、思うだけで今回のように倒れることはなかったんだけど……



 目を覚ますと、お手伝いさんの佐藤さんが心配そうに私の顔を見ている。


琉梛(ルナ)お嬢様、大丈夫ですか?」


「ええ」


「そのまま寝ていてください。貧血とのことなので、しばらく安静にしていなくては」


「フィリーオ兄様は?」


「フィリーオ様はお嬢様をベッドにお運びになられた後、ご心配され、お嬢様がお目覚めになるまでリビングにいらっしゃるとのことです」


「そうですか……」


 自室のベッドの中で力なく返事をし、目を閉じた。



 独りっ子の私は、従兄弟のフィリーオ・ロークスを兄のように慕っている。8歳年上で、妹のように可愛がってくれる優しいフィリーオ兄様は私の誇りだ。

 私が帰国する度に必ず会うほど仲が良い私達……。

 今日はフィリーオ兄様が通っている学校に連れていってくださるということで、あの場所にいた。

 ショックだったけど、後悔はしていない。

 フィリーオ兄様を失ってから事実を知って絶望するより、よっぽどいい。


 「大好きなフィリーオ兄様……私が守らないと」


 ――そのためにも、こんな『ノホホン』と暮らしていたらダメだわ!


 ――フィリーオ兄様の夢を徹底的に潰さないと!!


「私、フィリーオ兄様の邪魔をする悪役になるわ」


 こうしてココに悪役令嬢の卵(?)が誕生した。


 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
このランキングタグは表示できません。
ランキングタグに使用できない文字列が含まれるため、非表示にしています。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ