霊夢の思いは届かない
「待ちなさ~い!」
博麗神社の賽銭箱がまた空になった。
犯人は彼女。霧雨魔理沙。
箒に乗れることをいい事に盗んでは逃げ、盗んでは逃げの繰り返しで博麗神
社はかなりの損害を出していた。
「ああもう! 何で毎日毎日こう賽銭を盗みに来るのよ!」
「それはもしかすると恋なのではないですか?」
両腕を振り上げて怒鳴る霊夢のそばに、一人の少女が操り人形を引っさげて
歩いてきた。
「アリスじゃないの。恋って何の事?」
「魔理沙は霊夢さんを困らせて、気を引こうとしているんじゃ無いですか?」
「魔理沙が? 確かに格好良い見た目はしてるけど、流石に百合っ娘って事は
無いんじゃない?」
アリスはポッと頬を染め、
「いえ……魔理沙は両方いけるそうですよ? この間も魔理沙にちょっと激し
いのをお願いして――」
「ちょっとちょっと! 何勝手に魔理沙とそんな関係になってるのよ」
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
その話を聞いてその晩霊夢は眠れなかった。
確かに魔理沙は格好良い。
もし本当に私にそういう感情を持っていて……って事なら、まぁ許してやっ
ても――
「……って! 今うちは大変なのよ。資本金削ってももういっぱいいっぱいな
んだから!」
(俺が霊夢を一生面倒見てやるぜ?)
「うるさいうるさいうるさ~い!」
何よもう……明日来たらただじゃおかないんだから!
◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇
次の朝、寝不足な霊夢は必死に起きて賽銭箱の横で立っていた。
「あら霊夢さん」
「あらアリスじゃないの、どうしたの?」
「どうしたの? は霊夢さんのほうよ、目の下クマで真っ黒よ」
「あんたのせいで眠れなかったのよ」
「私のせいですか?」
やだもう私……何アリスに八つ当たりしてるのかしら。
霊夢が下を向いていると、アリスが神社の入口を指差した。
「あ! 魔理沙が来ましたよ」
「え? やだうそ! クマ隠さなくちゃって思ったのに……」
魔理沙は今日は逃げる様子は無く、箒を肩に乗せて鼻歌を歌いながら二人に
向かって歩いて来た。
「よ! 霊夢、アリス」
「魔理沙ぁ……♡」
「ガルル」
「おい、何で霊夢は怒ってるんだ?」
「毎日毎日うちの賽銭盗んでおいてよくそんな事言えるわね!」
魔理沙は頭をポリポリと掻きながら、
「いや~悪い悪い。急にお金が必要になっちゃってさ」
「魔理沙ぁ……♡」
「アリスはアリスでさっきから魔理沙に抱きつかないでよ!」
「そんな怒りっぽい霊夢には……ほら」
魔理沙は真っ白な飲み物を取り出し、霊夢に渡した。
「何よそれ」
「ギュウニュウっていうらしいぜ、外の世界ではイライラしている時によく飲
むそうだ」
「魔理沙ぁ……♡」
魔理沙に抱きつくアリスを無視し、霊夢はその飲み物を受け取った。
「で? 今日は何の用? お賽銭だったらもう無いわよ」
魔理沙は霊夢を抱きしめ、
「霊夢……大好きだ」
「ふぇ? ちょっと魔理沙!?」
「世界で二番目にお前を愛している――あ、一番はアリスな」
「魔理沙……♡」
雰囲気ぶち壊す事言わないの! バカ……
「だから、霊夢にお願いがある」
「……♡ うん、何でも言って……」
「賽銭全部使っちゃったから返さなくて良いか?」
期待に膨らんでいた霊夢の心が爆発した。
「わー! ちょっと危ないって!」
「うるさいうるさい! 人の事さんざん期待させておいて! バカバカバカ!」
「霊夢! だからって弾幕はやめろって」
「うるさい! お金か私の心のどっちかは返せ!」
こうしてその日は霊夢と魔理沙は弾幕を使って喧嘩(ほぼ一方的霊夢の攻撃)
を始めてしまいました。
アリスは最愛の魔理沙に抱きつき、しかも世界で一番愛してると言われて、
とても幸せでした。
―後談―
アリス「めでたしめでたし……ですね」
霊夢「めでたくな~い!」
魔理沙「仕方ねーな……今日の晩一緒に寝てやるから、そんなに怒るな」
アリス「私もご一緒して良いですか?」
魔理沙「いいぜ、人数は多い方が楽しいからな」
霊夢「初夜から3Pですか……」