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勇者パーティーの背景係  作者: 真咲


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10/29

10話 物語の外側から見た覚醒

 朝の光がテントを差し込み、遠征隊は短い休息の時間を迎えていた。

 私は補給班の任務として、鍋に入れる芋の皮を黙々とむいていた。手の感触と包丁の音だけが、目の前の静けさを満たす。


 外から、戦闘の音が遠くで響く。

 剣と盾のぶつかる音。兵士たちの叫び声。魔物のうなり。

 けれど私は動けない。補給班は後方支援――現場には入れない。

 それでも、胸の奥でざわつく。直感が告げる。


 ――誰かが、危ない。


 その瞬間だった。テントの外の光景が、ふと目に浮かんできた。

 アルトさんは剣を握り、兵士たちの間に立つ。前面に立ち、敵の攻撃を受け止める。

 ――目の前で兵士の一人が魔物の攻撃に晒される。

 そして、躊躇いなくアルトさんが一歩前に出た。


 彼の剣が一閃、魔物の爪を弾き飛ばす。

 その瞬間、兵士は無事で、アルトさんが身を引いて盾となった形になっていた。


 私の手は止まる。包丁が芋の上で小さく震えた。

 その動きには、力だけでなく、何か――決意の色があった。

 まるで昨日の名も無き兵士の死を胸に刻み、その重みを力に変えたかのように。


「覚醒……したんだ」

 

 剣の軌跡、体の動き。アルトさんの覚醒は、圧倒的な静かさで戦場に現れていた。

 無駄な動きはなく、敵の攻撃を予測するかのように動く。

 ただ強い、だけじゃない。守るべき人々のために戦う意思が、体全体に漲っている。


 私は芋を剥きながら、息を飲んだ。

 遠くで見ているだけの自分でも、その力の重さと、孤独の深さが伝わってくる。

 ――あの兵士が生き延びたのは、アルトさんが守ったからだ。


 戦闘は終わり、兵士たちの歓声が遠くに響く。

 アルトさんは深く息を吐き、少し肩の力を抜いた。

 彼の目には、昨日までの迷いはなく、今日の戦いで生まれた確かな自信が宿っていた。


 そして、私の胸の奥で、かすかな違和感がざわつく。

 ――今の瞬間、戦場で起きている出来事は、世界に“書き込まれた物語”のように滑らかすぎる。

 兵士の死も、アルトさんの覚醒も、決められた筋書きに沿って流れているように感じられた。


 頭の奥で、微かに“ざわっ”とした感触がする。

 ――強制力。

 その言葉が自然と浮かんだ。


 私は包丁を握る手を止め、周囲の静寂に耳を澄ます。

 戦闘の外側で、アルトさんの覚醒を見ている自分だけが、この世界の“本当の歪み”に気づいている。


 ――私は物語の外側にいる。

 誰かを守る勇者も、皆を鼓舞する聖女も、決められた役割を演じる兵士たちも、この世界の修正力に守られ、導かれている。

 でも、私は違う。目の前の現実に対して、微かに揺らぎを感じることができる。


 皮を剥いた芋を鍋に落としながら、私はそっと息を吐く。

 戦場の外側で知った覚醒――アルトさんの強さと、世界の修正力の冷たさを胸に刻み、今日も背景として生きる覚悟を新たにする。

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― 新着の感想 ―
一先ずエピソード10まで拝読いたしました! 読みやすく、面白いです!! すでに運命の決まっている世界。 その中で背景(モブ)として転生した主人公。 物語に沿って修正される奇妙な世界。 介入は出来ても変…
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