歪んだホットケーキは愛のかたち
「なろうラジオ大賞7」参加作品です。
「今日は何を描こうかな?」
フライパンの前で、あいねは考える。
あいねの趣味は、ホットケーキで絵を描くことだ。ホットケーキを焼く時に先に左右反転したイラストを描くことで、柄のついたホットケーキを焼くことができる。
「そうだ、フェレット描こう」
フェレットは小さくてかわいい動物だ。あいねの友人が飼っていて、いつも自慢を聞いている。
慣れた手つきで、生地を絞り出す。ひっくり返すと、かわいいフェレットのイラストになる。
急いで写真を撮り、フォークを握った。
「うーん、おいしい!」
一通り堪能した後――
ログアウトする。
そう、ここはホットケーキが焼けるVRゲーム「ホットケーキ・イズ・サークル」の世界。今日もどこかで、ホットケーキが焼かれている――
「あいね、最近初めたゲーム、どんな感じ?」
学校でそう話しかけてきたのは、数少ない男友達のユウ。
どうやら「ホットケーキ・イズ・サークル」に興味があるようだ。仲間が増えるなら、とあいねは魅力を語る。
「やっぱり、再現性が高いの! 香りも、味も、フライパンの重さも。昨日はフェレットを描いたんだけど、とっても美味しかった!」
ユウはにこにこしながらあいねの話を聞いていた。
「そうなんだ。僕も始めてみようかな」
「いいと思う。おすすめだよ!」
◇ ◇ ◇
日曜日、あいねはVRの世界にダイブすると、いつもの調理場でユウを待っていた。あいねから話を聞いたユウは、その日のうちにソフトを手に入れた。そして週末に二人でプレイする約束をしたのだ。
まもなく、となりにユウのアバターが現れた。
「おはよう、あいね」
休日のユウが新鮮で、おもわず目が釘付けになる。
「ぁ……おはよう、ユウ」
「あいねに教えてもらえるって、楽しみにしてたよ」
それから、あいねは生地をしぼりだしながらユウと話をした。
「上手いね。コツとかはあるの?」
「練習あるのみ、よ」
あいねがホットケーキを焼いた後、ユウも挑戦した。
絵は少し歪だったけれど、味には変わりはない。
「「いただきます!」」
手を合わせ、早速食べ始める。
「うん、美味しい!」
ふたりとも満足げに笑いあった。
「――あれ?」
あの後、一度ログアウトしたあいねは用事を済ませ、再びキッチンへと戻ってきた。そして、テーブルの上に見覚えのない皿とホットケーキを見つけたのだ。
上の方が少し凹んだ形。
――ハート型かぁ。
自分がログアウトした後のユウが作ったであろうそれに、あいねは思わず笑みをこぼした。
需要のない裏設定を後ほど活動報告に掲載予定です。




