表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
織田信長の利口な兄(織田秀俊)に生まれ変わったので領地開発して天下統一を目指す  作者: 伊月空目


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

48/48

48、儒に囚われた者

 武芸大会が盛り上がっていた頃、一人の男が座敷(ざしき)(ろう)の中にいた。薄汚れた服の男はまっすぐに正面を見据(みす)える。神谷(かみや)助兵衛(すけべえ)(よし)(ひさ)、水野家の筆頭家老であったが、捕えられた男だった。(かたわ)らには史書や軍学書の(たぐ)いが積み上がっていた。囚人と言いながらも、本の差し入れを受けている助兵衛にとって、この牢は不思議と居心地のいい空間であった。


「……む。外は楽しそうよの」


 世捨(よす)(びと)のようになった助兵衛がぽつりと(つぶや)く。家臣団のほとんどは千代丸軍に編入(へんにゅう)されたが、助兵衛自身は断固として降ることをしなかった。助兵衛には意地があった。


 音がした。小さな足音だった。


「おお。元気であったか。助兵衛殿」


 顔を(ほころ)ばせたのは童子・織田千代丸である。隣の大男は忍びだろう。助兵衛は覚悟した。殺される、そう恐怖を感じた。


「滝川八郎とともに軍師として迎えたい。そうじゃな。二百石を与える。大高城下に屋敷も用意しよう。嫌なら今川にでも降るが良い」


 千代丸の口からは信じられない言葉が飛び出してくる。助兵衛は目を丸くする。


貴殿(きでん)は敵であるそれがしに仕えよと申されるか。それがしは忠臣は新しい主君に仕えぬと思っておる。かの(こう)君子(くんし)(ごと)きは逆賊曹操なる強欲(ごうよく)私心(ししん)の人を痛烈(つうれつ)(ののし)った故事がある。(こう)君子(くんし)如何(いか)にしたかご存知か」


(しか)り。言葉にせずとも(ぞん)じている」


 助兵衛はたじろいだ。目の前の童子をまじまじと見る。


「お、お……そ、そなたは曹操なる君側(くんそく)(かん)、北条義時の(ごと)悪逆(あくぎゃく)(やから)をどう思うか。賊だ。彼奴(きゃつ)らは」


「早計で浅薄(あさはか)なり。曹操は力なき帝を(はい)し、その後も領地を与えた。帝の娘を愛し、(じゅ)(あた)わず。これ尋常の才に(あら)ず。これ聖王の所業なり。凡夫(ぼんぷ)、神谷助兵衛、これ知るべきなり。また、北条義時に至っては愚かなる後鳥羽上皇らを(はい)し、国の安寧(あんねい)を第一に考えたり、これ人物に他あらんや。また、子孫の北条時宗、(もう)()の大軍打ち払い神国日本を守り(たも)う、時の亀山(かめやま)(てい)、時宗公を(しょう)す。これ義時公の深謀(しんぼう)遠慮(えんりょ)に他ならず」


「……ぐぅ」


 助兵衛(すけべえ)(うな)り声を上げる。童子の言っていることは筋が通っていた。


「曹操の善政(ぜんせい)、北条氏の善政見習う所多い。さて、助兵衛よ。己の才を生かせ。民のためにだ。国を(おこ)し、民を富ませるのだ。つまらぬ(じゅ)(とら)われるな」


 助兵衛はかっと目を見開いた。


「おお、おおおお! 何たる大器(たいき)か! この神谷(かみや)助兵衛(すけべえ)、身を()にしてお(つか)しましょうぞ! おおおおおっ!」


 助兵衛は涙を流し、怪物との出会いに感動の涙を流す。牢の(かぎ)が開く。


(うれ)しいぞ、助兵衛。側にいよ」


 童子はニッコリと笑ってかつての(てき)(しょう)に声をかけるのだった。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ