42、第二次大高城の戦い②
正行寺に入った梶川軍はここに陣取り、大高城を睨むことになった。梶川平九郎高政は寺の境内に入ると、三輪次郎兵衛も続く。
「水野軍は如何した?」
梶川平九郎が問うと、三輪次郎兵衛はにんまりする。
「西門田に千の兵で陣を構えておりまする。逃げた太田兵がおるようですな」
「ほほう、太田兵は我らに寝返っておると触れ回れ。さすれば、水野軍は慌てようぞ」
「はっ」
次郎兵衛は頷く。すぐに次郎兵衛は家臣に命じて噂を広めさせる。
平九郎はガチャガチャと甲冑を鳴らしながら、廊下へと出た。
太田軍は破った。次は水野軍である。平九郎は采配を強く握る。しばらく待つ。噂は瞬く間に広まるはずだ。
大高城。攻め手の一角が崩れたと聞いた千代丸は笑みを作る。梶川平九郎が手柄を上げたと聞いて笑みが零れた。
梶川軍団は新生だ。千代丸が尾張出身者の剛の者を付けた。梶川軍はこれまでになく強化されている。
すべては千代丸の思惑通りに進んでいる。
「我らも出るぞ」
「は?」
孫十郎が間抜けな声を出す。主君は幼児だ。戦などできるわけもない。
「何を言っておるのだ。馬廻りもそなたが率いるのだぞ。この千代丸の軍よ。なに、孫十郎、忍びだけでなく武功を立てて参れ」
「しかし……ですな……若が心配です」
真顔で言う孫十郎に千代丸は首を振る。
「案ずるな。腕の立つ者が城を守る。孫十郎、頼む。そなたにしか頼めぬ。敵は水野左近大夫じゃ。梶川平九郎だけでは心もとない」
孫十郎は息を飲む。忍びと言えど、武士の心得もある。孫十郎は忍びたちに目をやる。千代丸の護衛を任せた者たちは手練れだ。孫十郎はふっと息を吐く。
「承知。兵千で敵を蹴散らしてきまする」
「おお、その意気じゃ。水野軍も慌てるだろうな」
孫十郎は固い顔で頷いた。ここが勝負どころだ。孫十郎は己に言い聞かせるのだった。
「いざ、進め――――――ッ」
梶川平九郎は蜂屋軍と共同で西門田の水野軍を攻めた。水野軍は矢を放ち、応戦する。なかなか、近寄れない。
「やりますなあ。これでは進めぬ」
巨大な盾にサッと隠れた平九郎に次郎兵衛が話しかけてくる。
ガンッ、ガンッ、矢が盾に当たる。二人は身をかがめる。
「水野は後がない。必死なのだ……。む。何だこの音は」
地鳴りがする。そして喚声だ。
「申し上げます! 大高城より千代丸様の軍が討って出てきました。それと水野軍内で同士討ちが起こっているようです」
忍びの報告に平九郎は思わず頬を緩める。水野軍は太田軍を処断しようとしたのだろう。危険を察知した太田軍が裏切り、同士討ちが起きた。噂が本当になったのだ。
「若君……おいッ、徒武者を攻め込ませろ。次は騎馬隊だ。今が好機だぞ」
平九郎が側にいた次郎兵衛に命じる。こうして水野軍は呆気なく崩れ、敗走を余儀なくされた。




