37、清水城攻め
大高城評定の間。織田千代丸が着座すると、平伏していた重臣たちは顔を上げる。
「戦は大儀であった。助右衛門、平九郎、兵庫頭、与十郎、八郎……その方らの槍働き、しかとこの千代丸が見聞きしたぞ」
「有り難き幸せ、家臣一同、これより一層千代丸様のために槍働きに励みまする―っ」
助右衛門が再び平伏する。平島城は攻められて落城。大高城の南側には砦が構築され、防衛ラインが作られていた。
「うむ、うむ。俺は良い家臣たちに恵まれて嬉しいぞ」
千代丸は白い歯を見せる。こうして危機は去った。水野勢は負け戦でしばらくは動けないだろう。
「那古野方も我らと結ぶとな。重畳よ。北は那古野方で我らは南に兵を向けることができる」
千代丸は扇をパチンと音を立てて鳴らす。
家臣団がどよめく。那古野方は大きな勢力だ。那古野が味方についたことは有利に働く。
「これより清水城を攻めるっ、助右衛門よ、兵六千を率いて、清水城を攻めよっ。平九郎、与十郎、八郎、兵庫頭、その方らは助右衛門に従い、清水城を攻めるのだっ」
千代丸の力強い言葉に家臣団は奮い立つ。平島城の南にある清水城を奪い取る。水野方は困るだろう。
千代丸軍団は迷いことなく次なる一手に動き始めた。
千代丸は庭に出ると、よっこらしょとストレッチ運動を始める。座学で痛くなった体をほぐす。侍女たちが笑い声を上げた。可愛らしいと笑い声も漏れる。
カンカンと工事の音が響く。破壊された大高城の修復が続く。城には千に満たぬ手勢が籠っている。
千代丸はふっと息を吐く。水野を叩いて、知多半島に進出する。既に忍びの孫十郎を通じて調略を行っている。誼を通じている者もいる。あとは船だ。大船に必要な貿易を行うために必須である。
東に目を向けると今川氏輝が駿河。遠江を支配し、大勢力となっている。
今川、北条は身内同士だ。ここで貿易をする。儲かるだろう、千代丸はほくそ笑む。
水野は滅ぼす。後釜には岡田助右衛門を考えている。星崎城に置いておいては勿体ない男だ。
千代丸は縁側に座る。清須方は騒ぎになっている。勝幡の重臣たちもだ。あまりの大勝利に危機感が募ったらしい。
平手政秀の書状では勝幡に来ないようにと念が押されていた。重臣たちはようやく千代丸の異常性に気が付いたのだ。
千代丸は確実に戦国大名への歩みを始めていた。そう、織田本家から独立するように、である。




