17、高田城(こうだじょう)攻め
佐久間左衛門尉信晴の行動は早かった。家臣の寺西治兵衛秀信に号令をかけ、五百の兵を率い、高田城に攻め寄せたのである。後詰めとして岩崎城の織田孫三郎信光の千、勝幡より千代丸の軍七百も馳せ参じた。
高田城は固く城門を閉じ、籠城している。
佐久間左衛門尉は本陣に諸将を招き、対策を練った。
「このまま力攻めにすべし」
織田孫三郎信光の言葉に佐久間左衛門尉は深く頷いた。
「高田城を攻め取り、松平次郎三郎を追い詰める。各々方、武功を競われよ」
佐久間左衛門尉の言葉に諸将は応じる。高田城を攻め取れば、松平次郎三郎、そして守護代の織田家は困ることになる。
左衛門尉はほくそ笑む。清洲城の連中が慌てる様が目に浮かんだ。
高田城が落ちた……まだ昼にもなっていないのに勝幡城に急報が届いたのは早かった。
織田信秀は満足そうに頷く。
息子の千代丸もその報告を聞いていた。
「高田城は討って出ましたが、佐久間左衛門尉様、獅子奮迅の働きで敵を蹴散らし、その勢いで城中に雪崩れ込みました」
「おお、左衛門尉、さすがよの」
信秀は喜ぶ。高田城は落ちた。要害だったのにあっさりと手にしたのだ。
「左衛門尉を総大将にして良かったわ。左衛門尉には高田城を与える。鳴海城の山口左馬助とともに大高城に備えるべし」
使者は平伏すると去っていった。大広間では織田親子がポツンと取り残される。
「左衛門尉のおかげで山口左馬助も震え上がっておろうな」
信秀の言葉に千代丸は頷いた。
「千代丸、山口左馬助は松平方に内通すると思うか?」
山口氏は有力国人で独立性も高い。織田に従っているが、松平にも良い顔をしていた。煮ても焼いても喰えない男。それが山口左馬助である。
「それ程の愚か者ではありますまい。父上に従った方が利あると見ましょう。それよりも熱田衆ですな」
「熱田衆か。連中、俺につくか」
「もはや尾張では武功第一の父上に、奴らも逆らいませぬよ」
熱田は清洲方に与している。しかし、高田城が落ちたことで信秀に寝返る。千代丸はそう見ていた。商業都市の熱田が完全に信秀方となる。清洲方は孤立するだろう。尾張は山口左馬助をはじめ、信秀に忠誠を誓っている国人ばかりである。
千代丸は目を瞑る。織田家はさらに発展を遂げる。熱田の商人たちは信秀に味方する。すべては千代丸の計画通りであった。




