11、新しい城作り
尾張木ノ下城。千代丸の叔父、織田与次郎信康の居城である。千代丸は新しい家臣である梶原平九郎高政を伴い、与次郎の出迎えを受けていた。
「おおっ、千代丸。よう来たの。木材は運び入れておる。助かったわ」
織田与次郎信康は笑みを浮かべる。当主を支える次弟の信康は木ノ下城を支配し、勝幡城の北に位置する。美濃の土岐氏に警戒する織田家の北の守りだ。
千代丸は与次郎信康の城作りを支援していた。土岐氏に対抗するための新しい居城を作る。与次郎の計画に千代丸は加わったのだ。
千代丸は木材を提供し、近江の職人を手配した。石垣も立派なものが出来上がるはずだ。
「今宵は楽しむが良い……清洲のことは聞いておるか」
与次郎信康が真顔になる。千代丸も真顔になると頷いた。
「老臣衆、松平と通じたと」
「そうよ。土岐、北畠にも呼びかけ、兄上を追い詰めるつもりだ……大高城に入られたら厄介よな」
大高城では織田家臣が守りを固めている。清洲まで寝返れば、織田弾正忠信秀は窮地に陥るだろう。
「松平清康、手強い相手でございますな」
「まっこと、その通り。だがな、千代丸。俺はそなたを買っておる。おぬしこそが次の織田家当主でも良いとな。織田家が滅ぶか滅ばぬかがそなたの肩にかかっておる。頼んだぞ」
与次郎信康はニコっと笑う。千代丸の声望は織田家内部で日増しに大きくなっていた。
尾張勝幡城は俄かに慌ただしくなった。
「大高城が寝返ったか」
信秀の領地であるはずの大高城が松平方に与した。これにより、松平は織田家領内に深く侵攻することができる。
「抜かったわ。松平め、やりおる」
そう言いながら信秀は余裕だった。
千代丸が木ノ下城で対土岐の調略を開始している。土岐家は国人衆をまとめ切れておらず、出兵が難しい情勢だ。
千代丸のおかげで北を気にする必要はない。信秀は大きく息を吐いた。
「出陣するっ、重臣たちに呼びかけよっ」
信秀は勢いよく立ち上がると家臣たちに言い放った。




