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好きだから。  作者: ぽんこつ


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6/15

大魔王

部活で流した汗をお風呂に入ってすっきりさっぱり。

頭の中はもやっとしてるけど。

そんな事も言ってられなくて、ソワソワ大魔王な感じ。


挿絵(By みてみん)


私はベッドの上で丸くなり。

スマホの画面と睨めっこ中。

そこには、蓮くんの横顔。

にやけてしまう私。

でも、七海ちゃんとの事が気になって気になって。

恭一くんと横山くんに昼に送ったメッセージの返信はまだきていない。

うう……

今日は蓮くんの姿を見れなかったのも、噂に対する妄想に拍車を掛けている。

付き合うことになった、キスした、いやいや、振られて泣いている七海ちゃんを見たとか。

耳にする情報に一喜一憂している私。

さすがに何度も聞くのは悪いなって思ったけど、もう一度、恭一くんにメッセージを送る。

「あのさ、何回もごめんね。蓮くんと、七海ちゃんの噂って本当なのかな?」

既読はつかない……

横山くんにも同じメッセージをポチッと送信。

既読はつかない……

うう。

なんでだろ……

二人が付き合うことになって、私が悲しむと思って言えないのかな……

でも、蓮くんのやさしさ情報を同じクラスの美穂ちゃんが何気なく話していたのを耳にした。

横断歩道を渡っていたおばあちゃんが、もたついていたところに駆け寄り一緒に渡るのを高井駅の商店街で見かけたというもの。

高井駅は私の家がある小間井駅の隣町。

蓮くんの家がある場所。

忘れないようにメモしておいた。

「はあ……」

声と一緒に漏れる溜め息。

蓮くん、どうなんだろうな……七海ちゃんかわいいからな……

二人が並んで笑っている映像を思い浮かべて……


挿絵(By みてみん)


違う!!

ダメだよ……

何やってんだろ私。

でもさ、七海ちゃん人気者だしな。

逆に彼氏がいないのが不思議なくらい。

軽音楽部のボーカルで、声までかわいい。

うう。

考えたくないけど……

妄想大魔王の暴走が始まりそう。

枕に顔うずめて、思考を切り替える。

違うこと考えよ……


そうだ。

今週末は麻耶と恭一くんのデート。

麻耶、上手くいくといいな。

恭一くんをちょっとだけけしかけたのはここだけの話。

恭一くんも麻耶みたいに想いを秘めるタイプみたいだから。

だって、私が蓮くんのことを聞くたびに、やたら麻耶のことを聞いてくることに最近気づいたの。

麻耶には申し訳ないけど、もっと早く気づいてれば……

だから、一回デートに誘ったらってメッセージ送ってみたんだ。

でも、超真面目な恭一くんが本当に誘うとは思ってもみなくて、麻耶から聞いた時は驚きとうれしさで大きな声を出してしまった。

もちろん、麻耶が好きだってことは言ってないよ。

そういうのは本人が伝えた方がいいと思うんだ。

私はね。

来週は文化祭。

私達チア部は今月末にあるチアの大会に向けて頑張ってる最中。

その大会でお披露目するダンスを、文化祭で初めてみんなの前で踊るんだ。

振り付けがキュートでかわいいから、蓮くん見てくれたら……いいな。

結局、蓮くんに戻ってくる私の思考。

蓮くん……


ピコン。

ビクッとして枕にうずめていた顔を上げる。

もぞもぞとまた丸くなり……

そーっと画面を見る。

麻耶からのメッセージ。

『蓮くんと七海の件だけど、どうやら振られてみたいだよ七海』

その文字に一瞬ホッとして――

「ほんと?」

でもなんか複雑、七海ちゃん泣いてるのかな……

なんて考えてしまう。

『七海のクラスの子が話してたのを耳にしたから間違いないと思うけど』

「そっか、情報ありがとうね麻耶」

『ううん、結衣も上手くいくといいんだけどな』

「うん、頑張るよ。あのさ蓮くんがさ、好きな人いるって理由で断ったって噂に関して何か聞いた?」

『ああ、耳にしたけど、確実な情報じゃないと思うよ』

「そっか、週末デート楽しみだね!」

それから麻耶としばらくメッセージの交換をしていると、あっという間に10時を過ぎていて、眠くなってきた。

「ふぁー」

大きなあくび。

細くなっていく視野を辛うじて保ってスマホを見つめる。


ピコン。

ん?

コクリと眠りかけたら、起こされる。

目をパチパチさせて画面を見つめると、恭一くんからメッセージ。

『蓮のやつ、観音寺さんのこと振ったみたいだよ、本人に聞いたから間違いないと思う』

「ありがとう。そっか。わざわざ聞いてくれたんだ?」

『ああ、それとなくだけど。なんか調子悪いみたいで今日学校休んでたから』

「そうだったんだ。たしかに姿見なかった」

『本人、風邪ひいたって言ってたから』

「そっか、じゃあ早く良くなるようにお祈りする」

『結衣ちゃんらしい。あのさ、週末麻耶ちゃんとデートすることになった。オーケーしてくれた』

「よかったね!頑張れ!!!もし、麻耶のこと泣かせたらもう絶交だからね」

『分かってる、おやすみ』

「おやすみなさい」

これで確実に七海ちゃんは振られたという事実確認ができたけど……

蓮くん学校休んだんだ、大丈夫かな。

七海ちゃんも……


ピコン。

『橘さん、蓮は観音寺さんのこと断ったよ、ただあいつ、風邪こじらせたみたいでしばらく学校休むって』

「え? 大丈夫なの?」

『大丈夫みたい、さっき電話で話したから、橘さん心配するだろうから教えとこうと思って』

「ありがとう、横山くん。早く元気になるといいな蓮くん。文化祭来れるかな?」

『どうだろう、大丈夫だと思うよ。あいつも作品出すはずだからね』

「蓮くんの作品楽しみだな」

『じゃあ、遅いからおやすみなさい』

「はい、ありがとう、おやすみなさい」

「はあ……」

スマホをぎゅっと抱きしめる。

蓮くん大丈夫かな。

私は、おばあちゃんから教わったおまじないを心の中で唱える。

ちちんぷいぷい、ちちんぷいぷい。

蓮くんの風邪なんてどこかに飛んでけー!

私が変わりに風邪を引いてあげたい気分。

あっ、でもそれはダメだ。

文化祭も大会もあるから。

早く良くなりますように。

お見舞い行きたいけど、さすがにそれは気が引ける。

「はあ……」

……それに、七海ちゃん。

今頃泣いてるのかな……

上手くいかなかったのはうれしいけど、七海ちゃんが悲しんでるのは……

でも、七海ちゃんも蓮くんのこと諦めなかったら……

妄想大魔王がこんにちはしてくる。

だけど……

だんだん瞼が重くなってきて、そのまま夢大魔王の世界へ旅立っていた。

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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*人物画像は作者がAIで作成したものです。

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