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好きだから。  作者: ぽんこつ


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ラストダンス


夏休みに入ってすぐの土曜日。

地域の夏祭りイベント。

私たちの高校は軽音部とチア部が毎年参加してパフォーマンスを披露する。

普段は個別にステージに上がるのだけれど。

今年は急遽、合同でステージに上がることになった。

きっかけは私と七海ちゃん。

「なんかさ、チア部と軽音部で一緒にさ、文化祭でやりたいね最後に」

って。

七海ちゃんが言ってくれたんだけど。

私がこのイベントでユニフォームを脱ぐって伝えたら。

じゃあ、何か一緒にやらない?

って話になった。

秋のチアの大会が部活の活動としては実質最後だけど。

このイベントで引退する三年生も多い。

キャプテンの真奈美に相談したら。

面白そうってなって。

私と真奈美、七海ちゃんとバンドリーダーの鴨宮千彩かもみや ちさちゃんの四人で話を進めた。

地域のお祭りだから、みんなが盛り上がれるのがいいかなって。

楽曲を書き出していくうちに。

七海ちゃんも。

千彩ちゃんも。

私みたいに両親の影響で昔の音楽を聴いてるという事実が発覚。

七海ちゃんは、今の音楽も合わせて聞いてるみたいだけど。

千彩ちゃんは、もろにお父さんの影響で、X JAPAN、BOØWYをメインで聞いてるんだって。

ギターを始めたのもお父さんが弾いていたからみたい。

しかも、千彩ちゃんユーチューバーなんだって。

色んな楽曲をカバーして動画上げてるんだって。

私はその場でチャンネル登録。

ピンクの制服姿でギターを弾いてる千彩ちゃんはかっこかわいいの。

確かに演奏する時はいつも着ている。

そして。

せっかくだから、親世代の楽曲から選曲しようってなって。

ただ、練習期間があまりないから踊ったことある曲。

演奏したことのある曲で擦り合わせた結果。

TRF『survival dAnce~no no cry more~』

AKB48『ヘビーローテーション』

それと、ネズミ―の楽曲。

合計三曲に決まった。


快晴の空模様。

今日も元気なお日様のおかげで暑い。

学校の近く、屋外の小さなショッピングモール。

そこにあるステージがイベント会場。

午前と午後の二回のパフォーマンス。

いよいよ、私のラストダンス。

両手を頬に添えて目を閉じる。

昨日、電話で蓮くんは、

「結衣の最後の晴れ姿、撮らない訳がない。行く」

って、言ってくれた。

「みんなー!」

キャプテンの真奈美が手を挙げる。

その周りをみんなで囲う。

「今日で、結衣や千夏、真梨、聡美はラストだよ。後輩たち、盛り上げていこうね」

真奈美が円陣の中央で一人一人みんなに目配せをする。

「はい!」

後輩たちのはつらつな声。

「じゃあ、いくよ!」

そして、お気に入りの掛け声。

「スマイル~! オーケー!」

にっこり笑って両方の人差し指をほっぺに当てる。

「スタイル~! オーケー!」

体のラインをなぞりながらダブルピースを目の脇に。

「ハイ、ハイ、ハイハイ、レッツチアー!」

みんなで声を合わせ両手を挙げて飛び跳ねる。


『それでは、東城高校、チアダンス部と軽音部によるステージです。どうぞ!』

歓声を出して、両手を上にポンポンを振りながらステージに駆け上がる。

先にステージで準備していた七海ちゃんと目が合う。

ウインクする七海ちゃんに、こくんと小さくうなずいた。

観客席から拍手がわいて。

私たちはしゃがんでスタンバイ。

屋根がついているから舞台の上は日陰だけど。

じわりと汗がわいてくる。

大きく息を吸う。

トクントクン。

少しの緊張。

少しの高揚。

15分間のステージが始まる。


まずは『survival dAnce~no no cry more~』

サビは絶対聞いたことがあると思う。

めちゃくちゃのれる曲。

今日のためにみんなで振りを練り直した。

会場の人も一緒に体を動かしてもらえるように。

七海ちゃんの高音が会場に響く。

ワンフレーズが終わるまでは動かない。

そしてサビのパートに入る直前に。

ジャンプして。

「イェイ イェイ イェイ イェイ イェイ……」

左手を腰に。

みんなで、右手を大きく振る。

観客の人達も私たちに応えて手を振り返してくれて。

「フー!」

と、歌詞の合間に相槌までしてくれる。

その中に、すぐに、蓮くんを見つけた私。

視線が吸い寄せられてしまって。

レンズに向かって微笑みかけていた。

自然とダンスと笑顔に喜びが乗っていく――


――一曲目が終わって。

間髪入れずに、ドラムの茂木くんがスティックでリズムを刻んで。

前に踊り出た千彩ちゃんが、奏でる前奏。

お決まりの片膝を上げるポーズがめっちゃキュート。

『ヘビーローテーション』

これは元々の振りつけに、当時の先輩たちが考えたオリジナルの動きを加えたパフォーマンス。

出だしから、会場も大盛り上がり。

みんなで指さして。

小さい子供たちは、サビの部分で一緒に体を動かしてくれている。

踊りながら歌う七海ちゃん。

目が合ってウインク。

私はこっそりサビの部分で蓮くんを指さした。

そうしたら蓮くんも同じように踊っていて。

真っ直ぐ伸びた指。

視線がぶつかって弾けた微笑み。

でもね。

蓮くん。

撮影しながら。

サビの部分だけ。

私を指さすの。

きゅんきゅんするし。

どうしてステージ上の私が撃ちぬかれてるの?

普通は逆でしょ?

けどでも。

蓮くんがお茶目すぎて。

それに。

一緒に楽しんでくれてるし。

折からの陽気と会場の熱気。

私たちの情熱。

そして蓮くんへの想いも相まって。

こころも体も汗だくな私。


――最後はネズミ―のメドレー。

振りも簡単。

歌も誰かは必ず知ってる曲たち。

小さな子供たちが、舞台の前で歌いながら飛び跳ねている。

ダンスも穏やかだから。

みんなとの時間を楽しむのに意識を向けた。

一緒に声援を送って。

泣いて笑って。

そして、踊って。

過ごした大切な仲間たちに――



いくら日陰でも屋外だから、15分間のステージを終えたら。

さすがに汗でびちゃびちゃ。

シートで拭ってもすぐに吹き出してくる。

シャワーを浴びたい気分。

私たちはぞろぞろと歩いて5分ほどの学校まで一旦引き上げる。

「いいな結衣。彼、来てたじゃん」

キャプテンの真奈美が肩で小突いてくる。

「えへ」

「ほんとラブラブだよね~結衣と烏丸くん」

千夏が私の顔を覗き込む。

「そ、そうかな」

「文化祭のベストカップルに結衣先輩たちを投票するんだ私たち」

「ねー」

後輩たちが声を張り上げる。

「なにそれ?」

「知らないの? 今年からあるんだって、ベストカップルにはネズミ―のチケット貰えるみたいだよ」

私の二の腕を、指でぐりぐりする千夏。

「そうなんだ」

ネズミ―リゾートか……

「チア部はみんな結衣たちに投票するから」

真奈美の声にハッとする私。

「なにそれ?」

「組織票ってやつ」

背後から私の耳元で囁く聡美。

「え? いいよ」

「結衣がいいって言っても、うちらは勝手にいれるから。ねーみんな!」

片手を挙げる真奈美。

「イエーイ!」

みんなのあったかい冷やかし。

嬉しいような恥ずかしいような。

胸の辺りがしゅわしゅわする。


この後、学校で昼食を食べて。

午後の出演時間まで待機。

蓮くんとは教室で一緒にご飯する約束。

チラッと振り返ると。

私たちのあとをついて来てくれている。

小さく胸の前で手を振ると。

同じように振り返してくれる。

その手が止まる。

どうしたのかな?

蓮くんは苦笑い。

ハッとして振り向くと。

部員全員が蓮くんに手を振っていた。

「せーの」

真奈美が音頭を取ると……

「ごちそうさまで~す」

って全員が叫んで。

「きゃー」

って、みんなは駆け出した。

「もう! みんな!」

「はいはい。いいじゃん、いいじゃん。うちらチア部の自慢でもある訳。結衣と烏丸くんは」

「真奈美……」

「そうそう。結衣のおかげで三年間楽しかったし。私もさ、彼と付き合い始めの頃、結衣に励ましてもらったしさ」

「そんなの、当たり前じゃん」

私の言葉に、ニヤッと笑った真奈美はまた肩で小突いてきた。

「そういうんだよね結衣は。結衣の当たり前のやってることって案外すごいんだよ」

「え?」

「だから、先輩にも後輩にも慕われる。結衣じゃなかったらみんな嫉妬の嵐だよ。彼、かっこいいから」

今度はひじで小突かれる。

「ありがとう真奈美」

「気にしないよ。午後は13時30分に集合だから。ラストのユニフォーム見せつけてあげな彼に」

真奈美はそう言うと、みんなの後を追うように駆け出した。


お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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