憩いの場所にて……手がね。
私たちの憩いの場所。
小間井駅の『ムック』。
私はいつものようにチーズバーガーセット。
蓮くん、今日はビッグムックセット。
チキンナゲットはシェア。
「ねえ? 蓮くん行ってみたいところある?」
「行ってみたいところ? そうだな……」
ポテトを一つ摘んで腕を組む。
「誕生日のデートってこと?」
「ああ、それもあるけど関係なくていいよ」
蓮くんの眉が上がって。
でも、眉間にしわを寄せて。
首を捻る。
ポテトを一摘まみしてパクリ。
私はポテトを三本パクリ。
もぐもぐ。
蓮くんはおもむろにピースサインをした。
「ん?」
両手でハンバーガーを持ちながら首を傾げる私。
「二つ思い浮かんだ」
「うん。どこ?」
「ネズミーランドと上野動物園」
「うわ! どっちもいいね」
蓮くんと行けるならどこでも楽しいけど。
想像しただけで、にやにやがわいてくる。
「結衣は行きたいとこないの?」
「私? 私は蓮くんと一緒ならどこでもいい」
おちょぼ口でハンバーガーをパクリ。
「それなら、俺だって同じだよ。結衣と一緒ならどこでも楽しい」
モグモグしながらでも、にこにこできる。
ん?
あれ?
今、名前で呼んだよね?
ゴクリと塊を飲み込んだ。
「今さ、名前で呼んだよね?」
「ん? そうだけど?」
「あのさ、なんで学校では呼ばないの? 名前で?」
あっ。
また言っちゃった。
少しうつむく私。
「え? ああ、それ気にして朝、変だったんだ」
ビクッとして。
小さくなってハンバーガーをパクリ。
「んー。それはさ、変かもだけど結衣とこうやって二人でいる時だけ名前で呼びたいって思ったから」
「?」
首を傾げる私。
「別にみんなのことを気にしてるわけじゃない。結衣が大切な彼女だから。その、慣れたくないっていうか。上手く言えないけどさ。でも結衣が呼んで欲しいなら呼ぶけど?」
モグモグしながら蓮くんを見つめた。
大切な彼女だって。
慣れたくないってどういうことなんだろ?
でもさ、今こうやって呼んでくれてる。
それが学校でも呼んでたら当たり前になっちゃうってことが嫌なのかな。
「ううん。蓮くんの考えでいいよ。名前で呼んでくれなくなっちゃったわけじゃないし。二人だけの時っていうのもなんか嬉しい」
「ありがとう。ごめんな、そのやきもきさせて」
私はぶんぶんと首を振る。
優しいな。
気にしてくれたんだ、今言ったことも。
ちゃんと考えてくれてるんだ。
どんどんほっぺが上がっていく。
「ありがとう。話してくれて……」
「いや、全然」
「……ねえ?」
「ん?」
ハンバーガーにかぶりつく蓮くん。
「こうやってさ、話したり確認したりするのって大事だね」
モグモグしながら、うなずく蓮くん。
「ちゃんと、色んなこと話そうね」
大きくうなずく蓮くん。
あっ。
その口元を見て唇を噛んで。
スッと席を立って。
ちょこんと蓮くんの隣に腰掛ける。
そして、ティッシュを手にして。
「もう、口についてるよ」
蓮くんの口元に手を伸ばす。
じっとしていてくれて。
口の端に着いたソースを拭きとる。
ティッシュ越しに伝わる唇の柔らかさに、キスした時の感触が唇によみがえって。
ぽって。
頬が染まるのが分かった。
シュッと手を引っ込めて。
ハンバーガーをもぐもぐ。
「ありがとう、結衣」
私はコクリとうなずく。
「結衣もさ、俺みたいに口の端につけたら拭いてあげるのにな」
きゅんって。
背筋が伸びて。
ゴクリ……
飲み込んで。
むせる。
トントンと胸を叩いていたら。
蓮くんの手が背中をさすってくれた。
ワイシャツ越しに感じる、蓮くんの手のぬくもり。
上に。
下に。
優しく動くたびに、私の意識はそこだけに集中しちゃう。
だって。
ブラのホックのとこ触ってる。
きゅうってなるお腹。
くーって全身が熱くなって。
むせてるし。
心臓はうるさいの。
「おい、大丈夫か?」
大丈夫じゃないよ。
だって、触れられてるんだもん。
背中から、私の全部が蓮くんに吸い込まれちゃいそうなんだよ。
――咳き込みがおさまって。
「ありがと……んんっ、ん。大丈夫……」
そっと、背中から離れた温もり。
「これで、目拭きな」
視界の中に現れた蓮くんのハンドタオル。
「う、うん」
涙を拭きながら、息を吸い込んだ時、蓮くんの匂いがした。
「落ち着いた? これ飲んで」
「はい」
ハンドタオルを返して。
言う通りオレンジジュースをゴクゴク。
冷たさが喉を通って、すっきりした。
「結衣はさ、おっちょこちょいなとこあるけど、そういうとこかわいいんだ」
「へ?」
くって蓮くんを見たら。
首を傾げて笑ってた。
うーん。
普通に見える。
私の背中をさすってる時、ドキドキしなかったのかな蓮くんは。
絶対触ったし……
その……
まだ、感触が背中に残っていて。
また、熱くなる。
もう。
私だけなの?
蓮くん?
――でも、かわいいって。
言ってくれたし。
うーん。
「蓮くんだって、かっこいいしやさしいよ」
「な、なんだよ急に」
「そうやって照れるとこもかわいい」
ふって笑う蓮くん。
そして、頭をポンポンってされた私。
「さ、食べよ」
蓮くんはハンバーガーをもぐもぐ。
どうやら、私は固まっちゃったみたい。
頭のてっぺんにあったスイッチを押されたみたいで。
そこから全身に蓮くんのぬくもりが伝わっていくの。
今すぐ抱きつきたいって衝動をオレンジジュースで流し込む。
ジュル、ズルルル……
なくなっちゃった。
オレンジジュースじゃ足りなくて。
中の氷を口に含んで必死に気持ちを冷やそうとする私。
ガリって、奥歯で噛んだ。
冷たい、冷たい。
でも、今この瞬間も、どんどん好きが増えて大きくなっていくの。
もお、虜なんだよ。
知ってる?
知ってるよね、蓮くん。
お読み頂きありがとうございます_(._.)_。
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*人物画像は作者がAIで作成したものです。
*風景写真は作者が撮影したものです。
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