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好きだから。  作者: ぽんこつ


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29/38

ふにっと、ふわっと。

通学路。

少し先に蓮くんの姿。

私は駆け寄って、ぴょんと隣に並ぶ。

「おはよう、蓮くん」

蓮くんは私を見て笑う。

「おはよう」

キラキラの瞳。

すぐにギアが上がる鼓動。

キスしたこと。

思い出しちゃって。

蓮くんの口元を見つめてしまう。

「ちょっといい?」

立ち止まった蓮くん。

首を傾げる私を、道沿いの公園に誘った。

トコトコと後をついて行く。

突然振り返った蓮くんにビックリして目を閉じる。

あっ。

ほっぺに柔らかい感触。

スッと離れていくぬくもり。

ゆっくり瞼を開ける。


――水色の何かがぼんやりと見える。

あれ?

頬に手を当てる。

あったかいほっぺ。

スマホの音楽が鳴り出す。

ハッとして。

掛け布団をはいだ。

カーテンの隙間から差し込む柔らかな光。

その光の中。

枕元のクラゲと目が合って、昨日のことが一気に押し寄せてくる。

――キス。

しちゃったんだ。

布団をかぶってうずくまる。

触れた唇。

もう蓮くんのぬくもりが刻み込まれてしまっていて。

勝手に暖房がついて熱くなる体と快速電車みたいな鼓動。

「結衣~、起きたの~」

お母さんの声が一階から飛んでくる。

「起きてるよ~」

支度しなきゃね。

大きく息を吐いて、布団をはいだ。

そっとクラゲを手に取った。

ふにふにが気持ちいい。

私のこころはふにゃふにゃかな。

ぬいぐるみを顔に押し当てた。


ぽかぽかした空気の通学路。

青い空にふんわりした雲が漂っている。

緑の匂いを乗せた風が制服のスカートを持ち上げては通り抜けて行く。

信号待ち。

道路を忙しなく行き交う、色とりどりの車。

いつもの朝。

少しだけ違うのは、私のこころ模様かな。

ピコン。

ん?

ポケットからスマホを取り出す。

麻耶から?

『昨日、返信来なかったけど、大丈夫? なんかあった?』

あっ……

いけない。

返事しようと思って。

蓮くんからメッセージが来て。

「麻耶ごめんね、疲れて寝ちゃった。昼休みに話があるの」

素早く返事を打って。

ぽちっと送信。

光の速さで返信。

『いいよ。わかった。あとでね』


ピポ、ピポ……

信号が変わって歩きだそうとした時。

「おはよう」

ビクッとして振り返る。

蓮くん!

「お、おはよう」

声まで跳ね上がり裏返る。

蓮くんは少し頬を上げて歩き出す。

口をすぼめた私はちょこちょこと隣に並ぶ。

ん?

あ?

これ初めてだ。

一緒に登校するの。

肩をすくめて唇を噛む。


挿絵(By みてみん)


「蓮くん、あのさ」

「なに?」

「なにかあったら話し聞くよ。私、彼女だから」

「なにかって?」

「なにかって?」

「はは……」

蓮くんはうつむいて笑うと空を見上げた。

私はその首筋から顎、そして――

あっ。

という間に顔が熱くって。

きゅうってなるお腹。

胸の前でブレザーの袖をこすり合わせる私。

「ど、どんなことでも蓮くんの力になりたいから、は、話して……ね」

「ああ……」

そう言って鼻をすすった蓮くん。

それから、昨日の写真を見せ合いっこした。

私の撮った写真のことを聞くとね。

蓮くんね、絶対ダメだとか良くないとか、否定的なこと言わないの。

それでね、こう想って撮ったでしょって言われることがあって。

そのほとんどが当たってるの。

だから思っちゃった。

やっぱり私のこと。

好きだよねって。

ルンルンしてきて。

体を左右に揺すりながら歩いていたら。

「やっぱ、おまえペンギンみたいだな」

だって。

「いいもん。ペンギンでもかわいいんでしょ?」

あっ。

言っちゃった。

蓮くんの顔を覗き込んだ。

片手で顔を覆って上から下ろして――

口を覆ったところで。

目が合った。

フフッ。

て、私がふきだすと。

蓮くんもそのまま目尻が下がって肩を揺すった。


私のほっぺが染まるくらいの早さで教室に着いちゃった。

席に座った蓮くんの背中を見つめる。

髪と制服に差し込む柔らかな光。

蓮くん。

名前のあとには音符が付いてる感じで呼びかける。

「結衣、おはよ!」

ビクッとして肩が揺れた。

「お、おはよう、麻耶。昨日はごめんね」

「ううん。いいよ、もう朝から恋する乙女の眼差ししちゃって」

「な、なに。いいでしょ」

「いいよ~」

麻耶は体を押し付けて私の椅子に腰かけてきた。

「で、どうだったのデート?」

耳元で囁く麻耶。

吹きかかる息に、無意味にゾクッとする私って……

「え? あ、うん……」

ちょっとあの瞬間が甦っちゃって。

肩を寄せ首を傾げた。

「え? なにかあったの?」

「ん? 何もないよ楽しかったよ」

「嘘だ。耳赤いもん」

「ひぇっ。あ、その、あの」

「いいよ。あとで教えて。私も話したいことあるから」

「ああ、うん」

麻耶は席を立った。

椅子に座り直して両手で頬杖をつく。

恋する乙女の眼差しを送ってみる。

あっ。

前の席の高橋くんに送ってしまう。

ちょっとずれて。

蓮くんの背中をしっかり捉える。

ふいに蓮くんが振り向いた。

きょろきょろして――

私を見てくれた。

すぐに。

当たり前に。

自然に笑顔になる私。

鼻にしわを寄せて、呆れたように笑うと、蓮くんは前を向いた。

ちゃんと見てるからね。

私はそばにいるよ。

ずっと。

キンコーン、カーンコーン……

ふわふわな妄想をかき消していくチャイムに一人頬を膨らませた。


――昼休み。

いつものように、蓮くんは横山くんたちとご飯を食べている。

私は麻耶と屋上に来た。

心地良い風が肌をなぞっていく。

お弁当の卵焼きを口にした時。

「私、恭一くんと……キス……した」

「へ?」

真っ赤な顔の麻耶は口をすぼめた。

口の中の卵焼きを飲み込みそうになった私。

モグモグとゆっくり噛みしめる。

甘さをしっかり飲み込んだ。

「そ、そうか。どんな感じだったの?」

「あ、うん。デートの終わりぎわにね、名前呼ばれて抱きしめられて……」

「うわ……」

麻耶のほっぺが乗り移ってくる。

「なんか、幸せだった。キスしてる最中……溶けちゃいそうだった……」

「そっかあ……」

一瞬だったし。

一方的だったからな。

私の場合。

「結衣は? なんかあったんじゃないの?」

「へ? あ、うん。私からキスしちゃった……」

「え!? 初デートで? すごいな結衣」

「ううん、そんな……ただ、おやすみってほっぺに……」

「ううん、結衣からしたのがすごいなって。烏丸くんなんて?」

「あ、いや、怒ってはいなかったし。楽しかったって、今朝、偶然駅で会って一緒に登校した」

「ふーん。烏丸くん、案外、結衣にメロメロなのかもよ」

「ひぇ。そ、そうかな……あんまり変わらないけど……でも、デートの時すごい話したし楽しかったよ」

「結衣の顔見てれば分かる。じゃあそのうちダブルデートしようね」

「うん。蓮くんがいいって言ったらね」

「まあ、それはそうか。でも良かった結衣が幸せそうで」

「そう……? かな」

「うん。何かさっき烏丸くん見てた視線。大切な人を見つめる目だった。ただの好き好きって感じじゃなくて」

「そう?」

「だから、なんか変化あったのかなって。でも初デートでキスでしょ?」

「な、なに、ほっぺにだよ……」

じっと見つめ合う。

耳まで赤信号になる私も麻耶も。

肩を揺すって笑いだす。

私は、ごはんをパクッと一口。

蓮くんと……

いつか……

妄想大魔王が暴走しそうで。

慌てて首を振る。

ふわっとした温かな風が私たちを包んでいった。

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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*人物画像は作者がAIで作成したものです。

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