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好きだから。  作者: ぽんこつ


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25/39

はい。初デートです。満悦です。

ペンギンエリアから続く道を歩いていたら大きな広場に出た。

爽やかな風の中に、うっすら海の匂いがした。

蓮くんの半歩後ろを歩いて。

ミラーでチェック。

前髪大丈夫。

チークで赤いのかはもう判別できない。

リップもつやつや。

よし。

ちょこちょこ隣に並ぶ。

「お、美男美女の初々しいカップル発見」

広場に景気のいい声がスピーカーから響き渡る。

何かイベントでもあるのかな?

辺りを見ても――

お客さん達で賑わってるだけ。

「おやおや気がついていませんね、そこのきょろきょろしている彼女」

ん?

周りのお客さんが私たちを見ている。

蓮くんも気づいたみたいで、私を見る。

首を傾げる私に、蓮くんも同じように首を傾げた。

「いいね、青春って感じかな。見つめ合って首を傾げる」

え?

「あ?」

建物に備え付けられているスクリーンに私たちが映し出されている。

私が指をさす。

画面を見つめる蓮くんと私が映し出された。

「君たち高校生かな?」

アップになった私がコクリと頷く。

「今日はデートだよね。楽しんでる?」

「はい」

あ、声に出しても分からないのに返事をした。

「彼氏さん、彼女さんかわいいでしょ?」

アップになった蓮くんは目を伏せて――

頷いた。

ぽっと。

赤くなる私。

また。

直接言われた訳じゃないけど。

頭の中で心臓がサイレンのようにうるさい。

「あらら、彼女さん照れちゃってるのかな、彼女さん、彼氏さんかっこいいね」

「はい」

思わず顔を上げた、真っ赤な顔の私がアップになる。

「あんまり邪魔しちゃ悪いからね、今日のベストカップルでした。お幸せに~」

パチパチと周りにいたお客さんが拍手をしてくれてた。

パチンとスクリーンは広告に切り替わる。

立ちすくむ私たち。

風がスカートの裾と髪を優しく撫でていく。

くしゅくしゅして膝をこすり合わせる。

「あ、あ、お腹空かない?」

「ああ、そうだな」

「な、何がいいかな」

「あそこにレストランってある」

蓮くんが指さした先に展望レストランの案内がある。

「展望って何が見えるのかな?」

「海じゃない」

「行きたい。見てみたい」

「じゃあ、行こうか」

「うん」

ぽかぽかした光が私たちを包んで。

斜めに伸びた影が跳ねていた。


挿絵(By みてみん)



展望レストランは、ガラス張りの窓から東京湾が見渡せた。

「窓際、空いてますか?」

蓮くんがそう言ってくれて、案内された席。

「うわ」

煌く水面。

遠くにかすんだ山が見える。

大きな船もいる。

私はバッグからスマホを出して。

この席の想い出を納めてみる。

景色が分かるように。

カシャ。

隣で蓮くんも撮っていた。

「ねえ、見せあいっこしよ?」

蓮くんは笑ってうなずいてくれた。

席に腰掛けて。

「先に注文しとこう」

「はい」

メニューは普通の洋食。

お魚みたから。

お魚はさすがに食べられない。

「烏丸くん、決まった?」

「いや、どーしようかなって迷ってる」

「お漬物以外何が好きなの?」

「ん? みかん」

かわいいし、面白くて笑ってしまう。

「ごめん、ご飯で。何か好きなものないの?」

「ああ、そうか。パスタは好きかな。エビフライとか。でもここでエビフライなんか食べにくい」

「あ、私も。お魚系はなんかね。ねえねえ、二人でさパスタ頼んで半分こしない?」

「え? ああ、面白いかも」

うひゃ。

乗ってくれた。

優しいな。

「じゃあ、俺ナポリタン」

「トマトだけど大丈夫なの?」

「ああ、生がダメなだけだから……ん?」

蓮くんは私を見つめて首を傾げていた。

「じゃあ、私はカルボナーラにする」

「飲み物は? 俺はアイスティー」

「私も。デザート食べてもいい?」

「ああ、俺も食べるわ」

「じゃあさ、じゃあさ、デザートも分け合いっこしようよ」

クスッと笑った蓮くん。

「分かった」

やばい。

楽しいよ。

楽しすぎるんだけど。

メニューを胸に抱く。

「俺はチーズケーキにする」

「あ、じゃあ、私はレアチーズケーキ」

蓮くんが呼び出しボタンを押して。

スタッフに注文してくれた。

もういい感じだよ。

バクバクはしてないけど。

もう、ほっぺが痛いくらい笑ってるの。

「じゃあ、写真見ようか」

「うん」

テーブルの中央にスマホを並べておく。

「うわ」

蓮くんの写真は海が主役で。

空は僅かに映ってるだけで。

シルエットの船が数隻。

光の海に浮かんでいた。

私のはちょうど空と海が半分くらい。

「どうして、空が少ないの?」

「ああ、やっぱりこのキラキラした海って、しょっちゅう見られるわけじゃないと思うんだ」

「ん?」

「天気は勿論だけど、時間や季節、太陽の角度によって変わるから。それに……」

「それに?」

「いや、橘のは正統派でいいと思う。中央で空と海が半分。ここから見た景色って分かる広がりも」

「え? すごい。どうして分かるの?」

「何んとなくというか、俺も写真を撮り始めた頃そうだったから」

「じゃあ、私も蓮くんみたいな写真が撮れるようになるかもしれないんだ」

「かもね」

そこにちょうど料理が運ばれてきた。

美味しそうな湯気と匂いを引き連れて。


ご飯を食べるのに、髪を後ろでまとめる。

ポーチから取り出したヘアゴムを口に挟んで。

毛束をまとめて。


挿絵(By みてみん)


ヘアゴムを取った時。

視線を感じて顔を上げたら蓮くんと目が合った。

すぐに逸らされちゃったけど。

何だろう?

ヘアゴムで束ねた髪を留めて。

よし。

修学旅行の時に一緒にご飯食べたことあるけど。

今日は二人きり。

こころは一杯だけど、お腹は空いちゃった。

きっと、蓮くんのせい。

なんだぞ。

「いただきます」

フォークで巻き付けたパスタをパクリ。

「おいしい」

「ナポリタンも旨いよ」

蓮くんもずっと優しい顔。

なんか。

その顔だけでご飯が食べれる気がする。

お腹が空いてただけあって。

モグモグと食べられる。

「あ、烏丸くん、ここ」

私は自分の口の端を指で押さえる。

蓮くんの口にミートソースが付いてたから。

察知した蓮くんは、ティッシュで口を拭う。

そして、半分食べた所でお皿を交換。

これも間接キスになるのかな。

なんか今日一日で一年ぶんの鼓動を打ってるみたい。

心臓を忙しくしてるのは私のせい?

違うよね。

蓮くんだよね?

そんな、蓮くんはカルボナーラをパクリ。

「うん、旨い」

ナポリタンみたいなほっぺの私も口に運んで。

「おいしい……」

蓮くんの味はしないけど。

しちゃった。

間接キス。

だよね。

そして、デザートでも。

ケーキよりも甘い気分になるのは私だけなのかな。

夢じゃないよねって、腿をつねったら思いのほか力が入って痛くてビクッとなる。


そうだ。

「あ、フリスクあるよ。食べる?」

修学旅行の時、蓮くんは食後にフリスクを食べていた。

「え?」

目をまんまるにしてる蓮くん。

「ご飯の後食べてたでしょ? あげる」

私は前かがみになって、フリスクを持った手を伸ばした。

「あ、ああ」

蓮くんの手のひらに、ケースをカシャカシャと振って――

あっ。

いっぱいでちゃった。

「ごめん……」

声に出して笑う蓮くん。

つられて私も。

「ありがとう。でもさすがに全部はあれだから、半分食べてよ」

「あ、うん」

私はフリスクをバッグにしまって、両手を差し出した。

蓮くんは一粒、一粒、私の手に置いた行く。

白い粒が手のひらで転がってちょっとくすぐったい。

五つずつ。

ちょっとだけ見つめ合っちゃって。

蓮くんはぱくりと口に運んだ。

私も。

口の中にスーッと広がって鼻から抜ける。

さすがに目に染みてパチパチしたら。

蓮くんもしていて。

慌ててお冷を飲んでいるのがかわいくて。

もう、首ったけだよ。

蓮くん。

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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*人物画像は作者がAIで作成したものです。

*風景写真は作者が撮影したものです。

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― 新着の感想 ―
あっ、伝え忘れてしまいました汗 本年もどうぞよろしくお願いいたします!
明けましておめでとうございます! わぁ、結衣ちゃんと蓮くん、本当にベストカップル! 初々しくて、純粋に一緒にいることが楽しくて。 本当にそれが伝わってきて、読んでいる私も幸せ気分に♡ 読ませていただき…
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