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好きだから。  作者: ぽんこつ


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22/38

はい。初デートです。参ります。

ふふふ。

ふふふ。

にやにやとドキドキが同居した心と頭の中。

昨日も何回も確認した天気予報。

朝起きて確認して、カーテン開けて見た朝焼けがきれいだった。

まるで私のために夜が明けていくみたいで。

少しずつ呼吸していく空を眺めていた。

朝食の時、お父さんも、お母さんも、私の気持ち悪いくらいのご機嫌さに気づいていたのか。

やけに笑ってた。

とうとうこの日がやってきた。

待ちに待った。

蓮くんと初デート。

春休み会えなかったし。

蓮くんに水族館で一緒に写真撮りに行かないか聞いてみたの。

最初は渋っていたけど。

会うたびに。

メッセージを送る度に。

伝えてみたら。

どんな風に私が写真を撮っているか見てみたいって。

そして――

今日がその日。

うひゃ。

デートって書いたスマホのスケジュールアプリ。

その文字を見るだけでときめける私。

目覚ましは6時にセットしてたけど、緊張で5時に起床。

いや、起床というより覚醒。

脳が勝手に「戦闘開始」って言った。

ほんとに今日なの?

夢じゃない?

夢じゃなかったらもう無理なんて。

時間が迫ってくるにつれ。

ドキドキ大魔王が居座ってる。


鏡の前で深呼吸3回。

「落ち着け私。いつもの自分で。いつもの──って何着ていくんだっけ?」

今日まで色々妄想して、準備していた好きな服。

今見るとなんかしっくりこない。

クローゼットを開けて、手当たり次第に服を取り出す。

こうしてみると、どれもデート向きじゃない顔してる。

それもそのはず。

着やすさ重視だから仕方ない。

襟元にリボンの付いた白のブラウス。

可愛いけど学校感が強いし。

黒地の花柄ワンピ。

気合入れすぎって、思われるよね。

デニムスカート。

キュロットスカート。

トレーナーにカットソー。

とっかえひっかえ、一人ランウェイ状態。

悩みに悩んだ挙句。

準備していた好きな服に落ち着く。

マルチボーダーカラーのリブニット。

チャコールグレーのプリーツミニスカート。

着てみると──

やっぱりいい感じ。

鏡の前で2回ターン。

「痛いっ!」

3回目は勢い余ってちょっと転ぶ。

膝をテーブルの角にぶつける。


よし。

服が決まったら、髪をセットする。

テーブルの前に鏡を置いて。

髪はアップにしようと思ったけど、ゆるく巻いてみた。

お父さん、お母さんのアドバイス。

まったくしたことない髪型で。

男子的にはビックリする。

女子的にはテンションが上がる。

右を巻いて左も巻いて。

気づいたらコテを5往復。

熱で思考もとろけそう。

なんか少し大人っぽく見えるかな?

毛先を摘まんで一笑い。

サイドにちょっこりヘアピンつけて。

鏡に向かって微笑みかけた。

お次はメイク。

いつもより気合いが入る。

色々調べて試したもん。

練習したもん。

ビューラーでまつ毛とテンションも上げて。

ぱっちりな瞳になったかな。

マスカラは自然な感じに、でもちょっと長めに。

チークは薄めに、ミルキーピンク。

リップはツヤあり桜色。

上下左右。

あらゆるアングルから見直す。

どうか、今日の私が、かわいいって思われますように。

って祈るように仕上げた。

どうかな。

かわいいって想ってくれるかな。

立ち鏡の前で最終確認。

お母さんにも最終確認。

「いいじゃない。かわいいわよ」

って言ってくれたけど。

最初の『かわいい』は蓮くんが良かったと思ってしまった。

ショルダーバッグをかけて。

キャメルのスニーカーを履いて。

「行ってきます」

「忘れものない? 遅くならないように、気をつけて。頑張れ。楽しんでおいで」

って、お母さんの後押しを受けて玄関の扉を開けた。



挿絵(By みてみん)


外に出ると、すこし風が強くて。

風でスカートがふわっとした瞬間、全身がガチガチに緊張する。

「ちょっと待って、駅前まで私、生きて行けるかな……」

スマホで時間を確認。

待ち合わせの10分前。

駅までは歩いて15分かからない距離。

早すぎると気合い入りすぎって思われるし。

遅れたら論外。

じゃあ何分が正解なの?

迷いながらも、駅に向かう足取りはなぜか小走り。

脳内では、もしも蓮くんが先に着いてて、私を見つけて微笑んでくれたら。

の妄想が再生されまくってる。

「お待たせ、待った?」

「いや、全然、その結衣、かわいいな」

「えへ、そうかな」

……

見慣れた駅前のロータリーが近づいてきて。

私は一度立ち止まり、バッグの中を確認。

お財布、ハンドタオル、ポーチ、ミラー、フリスク──

全部OK。

深呼吸、3回目。

橘結衣、行きます。

その瞬間、風が吹いて、髪がふわっと舞った。

ぽかぽかと、お日様の匂いを運んで。

行ってらっしゃいって。

背中を押してくれた気がした。


駅前の広場に差しかかった時、私はもう5回深呼吸してた。

でも、ぜんっぜん心臓のバクバクは収まらない。

視界の中央。

ベンチのひとつに──


挿絵(By みてみん)


いた。

蓮くんだ。

紺色のパーカーに、黒いチノパン。

制服じゃない私服の蓮くん。

その事実だけで、膝がふるえて笑っている。

「……うそ、かっこいいんだけど」

思わず声に出そうになった。

いや、ちょっと出てたかもしれない。

でもそれどころじゃない。

今から、蓮くんの彼女として、隣を歩くんだよね?

せっかく塗ったチークが、本物の赤ら顔で分からなくなってるかも。

一歩。

また一歩。

足を進めながら。

顔が熱くて。

喉が渇いて。

バッグのベルトをぎゅうっと握りしめた。

あと5メートル。

あと3メートル……!

「おはよ」

声が、震えなかったのが奇跡。

私の声で、蓮くんが顔を上げる。

少しだけ、目を見開いて──

「……あ、おはよ」

ほんのちょっとだけ、口の端がゆるんだ。

たったそれだけの反応なのに、世界が一気に春満開になった気がした。

え、今この瞬間、BGMとか鳴ってない?

私だけ?

「ごめん、待った?」

「いや、今来たとこ」

絶対ウソ。

さっきからずっとそこにいたもん。

でも、そのウソがちょっとだけ嬉しい。

スッと立ち上がった蓮くん。

私たちは少しの沈黙のあと、ぎこちなく歩き出した。

隣に蓮くんがいる。

肩が近い。

呼吸が聞こえそうな距離。

気を抜くと笑ってしまいそうなくらい。

ううん。

もう笑ってる。

私を見て緩んだ口元と、小さなウソ。

もうこれだけで。

今から始まる時間が、まだ信じられないような夢みたいで、くすぐったい。


──さあ、デート開始。


私の恋の、最高の一日が、ついに始まった。


お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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*人物画像は作者がAIで作成したものです。

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― 新着の感想 ―
私も一緒にドキドキです(笑) もう結衣ちゃんの気持ち、行動に共感しまくりで。 蓮くん、絶対に結衣ちゃん、可愛いと思ったよね(笑) 本当に御作が最近の楽しみの一つです。 読ませていただき、ありがとうござ…
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