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好きだから。  作者: ぽんこつ


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19/39

10回目の

もう季節は春。

今日は終業式。

結局、何の進展もない私の恋。

バレンタインのラブレターは予想通り音信不通。

でも、蓮くんと話せるようになったの大きな一歩には違いない。

偶然を装って、何回か一緒に帰ったこともある。

通学路で道路の端で寝そべっていた猫をスマホで撮ろうとして。

そうしたら、蓮くんも撮りだして、お互いの写真を見せ合ったりもした。

私は猫の全身を入れた写真。

蓮くんは猫の横顔と、奥行きのある背景。

そう。

蓮くんが撮ると写真の中に余白があるような。

その一瞬の中に物語があるように思える。

でも、話せるようになってから、好きを言おうとしても。

なんか先回りして振られていた。

距離は縮まってるって思う。

麻耶も、

「すごい進歩だよ。全然進展してるよ」

背中を叩いて気合を入れてくれた。

だから、ちゃんと伝えたくて。

だって、高校生活も残すところあと1年。



挿絵(By みてみん)


見上げた青い空。

白い雲がふわふわと漂っている。

「ふー」

ちょっと今はドキドキしている。

さっき鏡の前で髪をまとめ直してきたばかりなのに、つい前髪に手がいってしまう。

今日は、ポニーテールを少し高めに結んで、白いリボンのついたシュシュをつけてきた。

制服のリボンも真っ直ぐにしたし。

スカートの裾をそっと指で整えて、手を胸の前で合わせて深呼吸。

そう、告白といえば、体育倉庫の裏。

アニメや漫画の話だと定番中の定番。

今までの経験を踏まえて、まず場所が悪かった。

そう思った。

部室前、校門、下駄箱、教室、トイレ前、屋上……。

それに、ちゃんと話せるようなタイミングでもなかったように思う。

思うようにしたのかな。

今朝ちゃんとね、蓮くんに終業式終わったら話があるって伝えた。

何か言いかけたけど、

「お願いしますって」

言い逃げした。

そこで、おしまいは嫌だったから。

蓮くんなら来てくれる。

例え、だめだったとしても――

今日で告白するのは……

指折り数える。

10回目。

10度目の正直。


ここには一本の桜の木がある。

なんでも、昔の卒業生が植えたとかなんとか。

さわさわと枝が揺れ、桜の花びらが風に舞っている。

「え、ちょっと散っちゃうのって縁起悪いじゃん」

その言葉の先に肘を曲げて鞄を肩に掛けながら、蓮くんはやって来た。

私は前髪の毛を指先で整える。

気を付けをして、ニコッと笑う。

「どうして俺なの?」

蓮くんは歩きながらこっちを見ずに空を見上げていた。

ナチュラルに下ろした前髪がふわりと揺れる。

二重の細い目が遠くを見ていた。

「……かっこいいからだよ」

「見た目か……てか、それ、前も言ってた」

蓮くんは長いまつ毛を下に向け、地面の小石を蹴った。

「運動神経いいし」

「他にもいるだろ……これも、前言ってた」

「ううん、優しい所」

「口から出まかせ」

「知ってるよ、お年寄りや、妊婦さんに電車の席譲ってるの」

「そんな奴、どこにでもいるだろ」

「ううん、いないよ。それに蓮くんの撮る写真もすごく優しいって分かるよ。上手く言えないけど、見てるとあったかい気持ちになるの」

蓮くんは微動だにしない。

私はゆっくり首を振る。

だめだ、このままじゃ。

今までと同じ展開だ。

握りしめた手に力がはいって肩が上がる。

「俺、お前の事好きじゃないって何回も言ったよな」

「うん……でも、私は好きなの」

今回もダメか。

しょぼんとして。

足元を見た。


「……10回目か」

「え? 覚えててくれたの?」

その声に思わず顔を上げた。

蓮くんは相変わらず、私を見ようとはしない。

けれど、覚えていてくれたことが無性に嬉しかった。

「チッ……」

「もっと知ってるよ、蓮くんの事」

「名前で呼ぶなよ……」

「あ、あ、ごめんなさい……烏丸くんのこと、例えば……」

「もういい」

きつい言葉だけど、不思議と冷たく感じなかった。

「……」

桜の花びらが鼻にくっついた。

また、ダメだったか……。

ガックリと肩を落として苦笑い。

指先でそれを摘まみ上げ、口先でフッと息を吹きかけた。

また吹いて来た風に乗って、宙を舞い見えなくなった。

「……条件がある」

「……え?……え?」

何て言ったの?

聞こえなかった。

「それを呑んだら考えてもいい」

「のむ、うん、何でものむよ」

トマトジュースは……

でも頑張る。

蓮くんと付き合えるなら……

飲める気がする。

たぶん。

いや、きっと。

「あのな……」

蓮くんは眉を下げて呆れ顔。

「ごめんなさい」

私は思わず頭を下げる。

ペコリと深く。

「条件一つ目」

「ん?……じょーけん?」

どんな飲み物?

人差し指を頬に当てて、一生懸命考える。

新発売のスポーツドリンクかな?

それとも栄養ドリンク?

「おい、聞いてんのか?」

「あ、はい」

指先を伸ばして気を付けをする。

「写真は撮らない」

「え? しゃしん……?」

「それが、一つ目の条件」

あっ、飲むっていうから……飲み物かと思ったのに、条件だったって。

写真は撮らないって……

「……その……烏丸くんの写真を撮らないって……こと?」

蓮くんは小刻みにうなずく。

「じゃあ、一緒ならいいの?」

「だめ」

間髪入れずにシャットアウト。

「なんで? どうして」

「じゃあ、ダメだな」

「ううん、分かった……分かったよ」

いいもん。

今までに隠し撮りしたのがあるし。

またこっそり撮るから。

「二つ目、電話はしない」

「……うん」

「三つ目、手は繋がない」

「……………うん」

返事をする声が小さくなっていく。

気が付いたら自分の影を見つめてた。

「……ならいい」

「え?……ほんと……に?」

顔を上げて視界の中の蓮くんの顔が、少しだけ優しく見えた……

気がした。

「……ああ」

えーと、写真は撮らない。

電話はしない。

手は繋がない。

なかなかに厳しい条件だけど。

晴れて蓮くんと付き合える。

嬉しさが込み上げて来る。

あれ?

私はここで重要なことに気が付いた。

ニヤニヤが出てしまいそうで唇に力を入れてこらえる。

肩を上げてすとんと下ろす。

「あの……メッセージはいいんだよね?」

蓮くんは、しまったという様な顔をした。

ほんの一瞬だけ。

「……ああ」

心の中にホッとする気持ちがどんどん広がる。

やった。

やったよ、私。

やっと。

やっと……。

体の奥から嬉しさが込み上げてきた。

嘘じゃないんだよ。

夢でもないんだよ。

ほっぺをつねる。

痛いよ。

「……何で泣く?」

「……嬉しいからだよ」

「そう、じゃあ」

「?……ちょっ……ちょっと待ってよ、女の子が泣いてるんだよ、彼女が泣いてるんだよ。ちょっと待って。一緒に帰ろうよ」

涙を指で拭きながら、蓮くんの後を追いかける。

追いかけて、追いかけて、やっと、やっと、スタートラインに立てた。

隣に並んで歩いて、蓮くんの顔を見上げる。

「ありがとう」

蓮くんから、何も言葉は返ってこなかったけど。


挿絵(By みてみん)


彼女として隣を歩いてることが嬉しくて、ついつい横顔を見てしまう。

「あっ」

見惚れていたら、段差につまずいた。

前につんのめりそうになって――

蓮くんの手が私の脇の下をグッと支えてくれた。

ぽーっと、体が熱くなって。

どこからともなく汗ばむ私。

「気を付けて……」

蓮くんはスタスタと歩き出す。

脇に手を入れて――

まだそこにある感触を。

蓮くんの手の温もりを噛みしめる。

また、触られちゃった。

一段温度が上がった顔から火が出そう。

どんどん小さくなっていく蓮くん。

「待ってよ」

全速力で駆け寄る。

元から鼓動は走っていたから。

追いついた頃は息が上がっていた。

前を見つめたままの蓮くん。

「さっきは、ありがとう」

「ああ……」

返事が返ってきて。

嬉しくて緩む頬に、溢れる鼓動。

ぴょんぴょんと歩く足も自然と跳ねていた。

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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― 新着の感想 ―
わぁ、結衣ちゃん、よかったですね! 条件付きだけれど、はれて蓮くんの彼女。 これからの二人にどんなことが起こるのか、楽しみにしています! 結衣ちゃんの素直さが好き。 読ませていただき、ありがとうござい…
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