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好きだから。  作者: ぽんこつ


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17/39

名刑事?

顔に当たる風が冷たくて、涙が出てくる。

鼻水も。

鼻をすすりながら、蓮くんを乗ったバスを追いかける。

直線の道路と信号が多いおかげで、何とか視野におさまっている。

交通量も多いから、一度だけバスを追い抜けるチャンスもあった。

『帝釈寺』行のバスは文字通り隣町のお寺まで行く。

小・中学校の頃よくお母さんや友達と夏に盆踊りを踊りに行った記憶がある。

それ以外あまり使った事のない路線。

バス停で止まる度、蓮くんが降りたのか見ているけど、その様子はない。

途中に私鉄の駅と大きさなスーパーがあったはず。

電車に乗り換えっちゃったら、さすがに尾行は無理。


――結局。

終点の『帝釈寺』まで来てしまった。

自転車で。

ここまでほぼ直線の道。

緩いカーブで見失うことはあったけど。

ちゃんとついてこられた。

私ってこういう才能あるのかも。

30分ちょっと漕いでいたら、さすがにお尻が痛い。

バスが停留所に止まって。

蓮くんとお母さんが降りてきた。

私は息を整えながら自転車から降りて、押しながら後をつける。

なんかいけないことをしているような。

でも、わくわくするような。

あべこべの気持ちのまま。


蓮くん親子は、道路に面した路地をお寺の敷地に沿って歩いていく。

私は角から顔だけを出して覗き込む。

そのままお寺の門をくぐって行った蓮くん親子。

お参りなのかな?

とことこと門まで自転車を押してすすむ。

蓮くんたちは賽銭箱の前で手を合わせて。

そして、靴を脱いでお堂に上がっていった。

お寺の中でなにするの?

自転車置き場に自転車を止めて、ケーキの袋を持って境内に入る。

大きなお寺で、今は冬だから、何もないけど、盆踊りを行えるくらいの広場がある。

そこで小さな子供たちが寒さに負けずに遊んでいる。

参拝する人は今日はまばら。

私はお財布からご縁があるように5円玉と、さらにご縁があるように50円玉を抜き出す。

おばあちゃんが言ってたから。

ご縁を願う時は5円玉って。

ケーキの袋を地面に置いて。

ちゃりん。

私もお参りをする。


挿絵(By みてみん)


「蓮くんと付き合えますように。蓮くんが私のこと好きになってくれますように」

私は備え付けの下駄箱に靴を入れて、お寺の石の階段を上がる。

タイツ越しの足裏にひやりとした感触。

板張りの床も冷たくて、体の芯まで冷えてきそう。

正面の戸は開いていなくて、蓮くんたちが進んで行った廊下を進む。

中からお経の声が聞こえてくる。

開け開かれた戸の陰から中をそーっと伺う。

広い畳の部屋で、お坊さんがお経をあげている。

その後ろに蓮くんとお母さんが目瞑って手を合わせていた。

なんだろう?

うーん。

分かんないから。

わたしもそっと音を立てないように、廊下に座って手を合わせた。

風が吹く度に凍えそうになる。

ただ何をお祈りしてるのか分からないから。

さっきと同じように蓮くんのことを想っていた。

長いお経だった。

「これにてご祈祷は終わりです」

お坊さんの声。

「ありがとうございます」

蓮くんのお母さんの声。

そーっと立ち上がって、床を滑るようにすり足で音を立てずに駆け抜けて下駄箱へ。

靴を履いて一歩踏み出した時――

「え? 橘?」

蓮くんの声。

ビクッと。

ドキッとして、背筋を伸ばす。

「あら、お友達?」

ゆっくり、微笑みながら振り返る。

「あ、こんにちは」

蓮くんは私を不思議そうに見ながら靴を履いている。

「いつも蓮が、お世話になってます。こんなかわいいお嬢さんが友達でいるなんて」

お母さんはニコニコしながら蓮くんを見た。

「ああ、まあ、いいから母さん行こう」

蓮くんはスタスタと歩きだす。

「まあ、あの子ったら。ごめんね、でも仲良くしてあげてね」

「あ、はい」

ニコッと笑う。

なんだろう?

お母さんの微笑みが、嬉しそうなのに。

哀しそうに見えた。

お母さんは丁寧に私に向かって頭を下げると蓮くんのあとを追っていた。


ピコン。

スマホが鳴る。

ポケットから取り出して画面を見る。

『結衣? 今どこ?』

お母さんからだった。

いけない。

「あ、ちょっと友達と会ったから少し遅れる」

『もう、気を付けて帰ってくるのよ。結衣が好きなパンケーキ作って待ってるんだから』

「うん。ありがとうお母さん」

う……

バスを追いかけてる時は楽しかったけど。

今から30分、いや家までなら40分……

自転車を漕がなければならない。

ヒューと北風が私を追い越していった。


挿絵(By みてみん)



――そして、家についてケーキは溶けてなかったけど。

自転車の振動で、ぐちゃぐちゃになったケーキ。

怒られはしなかったけど。

失敗しちゃった。

でも、味は美味しかった。

ケーキを食べた後、お母さんとお父さんにお寺で祈祷する理由を聞いてみた。

家族みんなが幸せに過ごせるようにとか。

交通安全とか。

健康に過ごせたり、病気が治るようにとか。

それこそ良縁をお願いするんだって。

他にも学業のことも。

蓮くんたちは何のご祈祷したのかな?

考えても分かるはずないのに考えようとして。

私服の蓮くんを想い出す。

かっこよかったな。

あ!

写真撮れば良かった……

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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*人物画像は作者がAIで作成したものです。

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