みっしょん。
修学旅行が終わってから、少しだけ蓮くんと話せるようになった。
なったんだけど。
一つだけ。
ううん。
一つじゃないんだけど。
不満?
でもない訳でもないんだけど。
私を撮った写真を欲しいってお願いしたら。
「だめだな」
だって。
どうしてだめなの?
せっかく蓮くんに撮って貰ったから。
記念に欲しかったのに。
写真すら見せてくれない。
お金も払うからって言っても。
だめなんだって。
振った子の写真なのに。
蓮くんにとって瞬間を切り取った、作品なのかもしれないけど。
私にだって宝物になのに。
ひゅー。
路地から風が抜けてきて電線が震えてる。
自転車を漕いでるから風の強さが二倍に感じる。
「さむい……」
今日は、一段と冷え込みが激しくて。
風が吹く度に髪の芯まで凍ってしまいそう。
でもね、発見があった。
写真を通しての話だったら、会話ができることが分かったの。
だから、私もスマホで写真を撮ってるんだ。
「ん?」
駅前の噴水の水しぶきが陽射しを受けてきれいだった。
ブレーキをかけて。
自転車から降りる。
スマホを構えて。
パシャリ。
画面を見て首を傾げる。
見た目と違って、あまりキラキラしていない。
でもこれが、いざ何を撮るのかとなると難しい。
「何を撮ったらいいのかな?」
って蓮くんに聞いてみたら。
「好きなものを撮ればいい」
そうして蓮くんを、そっと撮ろうとしたら。
「俺は撮るな」
だって。
でもいいもん。
隠し撮りはたくさんあるから。
インスタで映える写真を見てもイマイチだし。
蓮くんみたいな温かくて、きゅってくる写真には出会えない。
蓮くんの写真は、私が見ていないもの、見えてないようなものを写真におさめていた。
どうやったらあんな風に撮れるんだろ。
お母さんに頼まれて、クリスマスケーキを取りに駅前のケーキ屋さんに向かっている。
「はあ……」
白い溜め息が、空気に溶けて無くなった。
今年も家族でクリスマス。
嫌な訳じゃないよ。
そりゃあそうでしょ。
麻耶は恭一くんとデートだって。
「キスとかしちゃったらどうしよう」
昨日の夜おどおどした感じで電話してきた。
不安なことを全部聞いて上げて。
最後にはデートを楽しむって電話の向こうで笑ってた。
キスか……
想像しただけで……
顔が一段と寒くなる。
スマホの画面に映し出した隠し撮り。
蓮くんの唇に……
顔から湯気が出そう……
誰も見ていなのに周りをきょろきょろ。
自転車を押しながらケーキ屋さんへと向かった。
あまーい匂いのケーキ屋さん。
赤に緑の金色。
華やかに装飾された店内は午前中から大賑わい。
カラフルに並んだケーキが。
美味しいよと訴えかけてくる。
「橘さん」
「はあい」
「お待たせしました。お家までは10分くらいでしたね」
「はい。ありがとうございます」
ケーキが入ったビニール袋持ってお店を後にする。
自転車のかごにビニール袋を入れて。
押しながら歩いていると――
ビクッとして立ち止まる。
「あれ? 蓮くん?」
駅から出てきたみたい。
隣町に住む蓮くん。
お母さんとお出掛けかな?
むずむずしだす私。
噴水広場を横切ってバス乗り場の方へ。
何処にいくの?
かな?
噴水の傍で後姿を見ている。
どうやら隣町にある「帝釈寺」行きのバスに乗るみたい。
こういう時って。
刑事ドラマなら尾行する。
でも、ケーキがあるし。
ドライアイスは10分間。
でも、きょう寒いから――
ブルルル。
バスが着いて。
蓮くんたちは乗り込んでいった。
私はサドルに跨ってぺダルを漕いだ。
バスはロータリーを出て、駅前の大通りを進んで行く。
私は安全運転で――
尾行を開始した。
だって、気になるでしょ。
ひゅー。
電線が震え頬に当たる冷たい風に抗いながら。
蓮くんを乗せたバスのあとを追いかけた。
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