表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
好きだから。  作者: ぽんこつ


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

13/14

京都にて、お寺を巡る。

修学旅行で京都に来ている私たち。

最初は気が乗らなかった。

だって蓮くんとはクラスが違うから。

一緒に行動できないから。


――でもね。

私の親友の麻耶が面白い事を言い出した。

自由行動の時。

同じ場所に行ったらいいんじゃない?

でもどうやって蓮くんの行動を知るのか?

そもそも、私の都合だけで班の他の子のことはいいのか?

そこは伊達じゃない麻耶さま。


挿絵(By みてみん)


彼氏の恭一くんは蓮くんと同じクラス。

まず彼を使って蓮くんを同じ班にする。

私からも蓮くんの親友であり、私の諜報部員でもある横山くんに働きかける。

班の人数は四人だから。

恭一くんの友達の三浦一忠みうら かずただくんを加えれば四人。

これで蓮くんパーティーは出来上がり。

問題は私たちの方。

麻耶は恭一くんと一緒に行動できる。

私も愛しの蓮くんと一緒。

あと二人。

朱里と真純を誘った麻耶さま。

理由は簡単。

私たちと一緒。

朱里は三浦くん。

真純は横山くん。

全然知らなかった。

気づきもしなかった。

麻耶に言わせたら。

「結衣は、それでいいって」

褒められたのか、馬鹿にされたのか。

でもでも。

そんなこんなで。

カップル一人と。

片想い三人の思惑が合致して。

『恋花咲かせよ乙女組』

が結成された、

という訳です。


行動は不審に思われないように、蓮くんチームに合わせることになった。

この時点で十分、不審かもってみんな思ったけど。

誰一人として口に出さない。

だって、好きな人と一緒にいられるんだから。

自由行動は二日目の9時から17時まで。

出来上がった行程表を見た時。

ちょっとだけ、いやかなり違和感があった。

「なんか、お寺ばっかりだっけど」

「しょうがないでしょ、あっちのスケジュール丸パクリなんだから」

午前中も午後もお寺。

接近できそうならどこでもいいんだけど。

「でもね、恋愛成就の場所も入ってるの。恭一くんが上手に入れてくれたんだ」

「ありがとう、麻耶。私、頑張るよ」――



ということで。

今いるのはお寺。

名前は……

「にんにんじ」

だったかな?

ここでは座禅をする。

こころを無にして煩悩を取り払って。

意識を今に集中するとかなんとか。

私は手を挙げてお坊さんに質問をする。

「願い事は叶いますか?」

「どうでしょう。ただしっかり意識を集中させて、心の平静を得ることが出来たら、叶うかもしれませんね」

「はい。頑張ります」

お坊さんの指示のもと。

床張りの部屋で、蓮くんグループと乙女組が一列に男女交互に胡坐をかいて座る。

女性は正座でもいいみたいだったけど。

形から入るのは大事って誰かが言ってた気がしたから。

私は蓮くんと横山くんに挟まれて――

そわそわしだす。

座禅って、ピクリとも動いちゃいけないみたいだから。

先に蓮くんの方に少しだけ、座布団を直すふりをして、擦り寄ってみた。

そして――

目を閉じてじっとして。

ただただ、煩悩を無くして。

こころの平静を――

……

……

無理でしょ!

隣にいるんだよ。

蓮くんが。

シーンと静まり返った空間に。

私の心臓の音だけが時間を進めている。

ぱしん!

そういえば、どういうわけか、少しでも動いたら。

お坊さんに肩を棒で叩かれる。

誰かが叩かれたみたい。

ぱしん!

蓮くん何考えてるんだろうな?

私のことだったらいいな。

でも、隣に座っている。

夢のような時間。

目を開けて横顔見たいけど。

動いちゃいけないんだもんね。

ぱしん!

どきどきするけど。

こうやって傍にいると。

少し落ち着いてくる。

だって、このままだったら。

ずっと一緒にいられる。

ぱしん!


挿絵(By みてみん)


結局――

私は一度も叩かれることなく。

座禅を終える。

「あなたの集中した姿勢は美しかったですよ」

お坊さんにも褒められた。

麻耶たちは驚いていた。

「どうやったら無心になれたの?」

朱里と真純に詰め寄られて、まさか蓮くんのことをとも言い難くて。

「なんか居心地良いなって思ってただけ」

「なにそれー」

そんな中でも蓮くんは無反応。


そして、トコトコ歩いて、お土産屋さんが並ぶ坂道上って。

次のお寺に到着。

名前はわからない。

というかそもそも覚えようとしていない。

蓮くんを見るのが私の使命だから。

今までにない時間と距離で蓮くんといられる。

集中力、ううん。

意識の全てを蓮くんに捧げる今日の私。

そして、出来れば話しかけて。

一緒に写真を撮って。


次は、写経をするらしい。

横に長い机に正座で座って、漢字で書いてあるお経を書き写していく。

蓮くんグループは私たちの一列前。

愛しの蓮くんの背中をちらちら見ながら書いている。

お坊さんが言うには意識を集中して、一文字一文字を丁寧に書いてくださいね。

そうしたら、願いごとも叶いますよ。

そう話していた。

恋とは全く関係ない漢字を。

ただひたすらに書き写していく。

でも、願いが叶うのなら全然頑張れる。

蓮くんの彼女になれますように。

私の想いが届きますように。

蓮くんの笑顔がたくさん見れますように。

蓮くんが私のことを好きでありますように。


挿絵(By みてみん)


いつのまにか。

漢字をひたすら書いていた。

気持ちよくて、心地いい感覚。

チアで無心で応援している時みたい。

結局、私が一番書いていた。

「へー。意外だね」

横山くんの声。

「結衣。才能あるんじゃない」

麻耶の声。

蓮くんは無言――


写経や座禅の効果なのか。

なんか。

気分が落ち着いてきていて。

空の青さを今日初めて見た。

だめだめ。

蓮くんに集中しないと。

お寺の敷地に何とかの舞台というところがあって。

みんなで写真を撮ろうってなった。

優秀な諜報部員、横山くんが声を掛けてくれたけど。

「俺はいい」

まさかの蓮くん拒否。

結局蓮くん抜きでみんなで写真を撮った。

麻耶たちは、はしゃいでいるけど。

私にとって蓮くんが写ってない写真なんて。

気の抜けた炭酸みたいに刺激がない。

ん?

違うかな?

気の抜けた炭酸はそれはそれで飲めるもんね。


そして、どうしてか、お寺の中にある神社。

ここが、麻耶が言ってた縁結びの神様。

地主神社じしゅじんじゃ

て言うみたい。

お寺と神社が一緒ってさすが京都。

なんでも、境内にある二つの石の間を、目をつぶって無事に歩ききることができれば、恋が成就する。

一度でたどり着ければ恋愛の成就も早いという。

麻耶と恭一くんはやらないって。

そりゃそうだよね。

好き同士だもんね。

朱里はすっごい一歩が小さくて。

平均台を歩くように、ゆっくり進んでいたけど成功。

真純は、まさかのダッシュで成功。

二人とも凄い。

そして――

私の番が来た。

「乙女組」としての流れはいいはず。

石の位置を確認して。

両手を頬に当てて。

大きく息を吸う。

チアの掛け声を、心の中で唱えて。

蓮くんの位置を確認。

向かいの石の右側にいる。

「よし、橘結衣行きます」

囁くように自分に言い聞かせた。

ゆっくり目を閉じる。

両手を前に出して。

記憶した蓮くんがいる方向へ。

一歩一歩すり足で。

案外怖い、目を閉じて歩くという動作。

両手を上下左右に動かしながら進む。

右手の指先が何かに触れた。

私はそのまま両手をグッと伸ばした。

ゆっくり瞼を上げる。

目の前にニコニコした眼鏡をかけたおじさんの顔。

ハッとして蓮くんを探して首を振る。

次が蓮くんの番だったみたいスタート地点にいた。

「おじさんでごめんな」

眼鏡をかけたおじさんはそう言って笑いを誘った。

ドッと周りが笑う中。

私の視線は蓮くんに。

少し息を吐いた蓮くん。

目を瞑ったまま、もくもくと歩いて――

見事にもう一つの石の前に。

「すごい」

パチパチと沸き起こる拍手に小さくお辞儀をしている蓮くん。

横山くんと何かを話して。

少し微笑んだ。

わっ。

きゅんとして。

見つめてしまう。

だって普通に歩いてるみたいだった。

すごいな、蓮くん――

ん?

誰を想って歩いたの?

え?

え?

誰だったの?

「結衣、次行くよー」

「あ、うん、待ってよ」

すでに駆け出していた心臓に気持ちが追いつかない私。

蓮くんの背中は手が届きそうで届かなくて。

でも、今は立ち止まってる場合じゃない。

せっかく傍にいられる時間を味わわないと。

ちゃんと話しかけないと。

タイムリミットは、あと5時間。

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

感想やご意見ありましたら、お気軽にコメントしてください。

また、どこかいいなと感じて頂けたら評価をポチッと押して頂けると、励みになり幸いです。

*人物画像は作者がAIで作成したものです。

*風景写真は作者が撮影したものです。

*両方とも無断転載しないでネ!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
ふふふ。『恋花咲かせよ乙女組』、微笑ましいです。 何度告白してもふられちゃう結衣ちゃん。 蓮くん、どんな女の子が好みなのでしょうね(笑) 座禅の所では笑ってしまいました。 ある意味恋する乙女は、煩悩を…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ