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好きだから。  作者: ぽんこつ


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12/14

探偵結衣の虎の巻

キーンコーン。カーンコーン。

休憩時間、頬杖をつきながら。

ノートの端に蓮くんの似顔絵を書く。

もう、何百回と描いていて、パラパラ漫画のようになっている。

「結衣、また描いてる、もういい加減諦めなよ」

顔を上げると、半笑いを浮かべた友達の朱里が腕組みをして立っていた。

ムスッと膨れて見せる。

「だってさ、何回ふられたの?」

痛いところをぐっさり刺してくる。

頭の中で数える。

「……6回」

「普通さ、行っても2.3回じゃん。」

「いいもん、普通なんて、気にしてないよ」

「そのうち、ギネスブックに載るんじゃない?」

「もういいでしょ、私が好きなんだから」

朱里は組んだ腕を解いてお手上げをした。

この落書きをしているのは私の虎の巻。

虎の巻って秘密を書いた昔の書物っておじいちゃんが教えてくれた。


挿絵(By みてみん)


【烏丸蓮のすべて】

蓮くんに関する情報が満載。

私の諜報活動の賜物。

一ページ目は全身のイラスト。

サラサラの髪。前髪は斜めに流す。

二重の切れ長の目、斜めから流し目をされるとイチコロ。

シュッと通った鼻筋に、あまり開かれることない唇。

慎重178㎝。体重65㎏。

写真部所属。

住所は高井町。

私の隣町。

電話番号・不明、自宅のみ、03-☓☓☓☓-☓☓☓☓。

彼女・橘結衣(予定)

右利き。

足が学校一早い。

足のサイズは27㎝。

上履きからこっそり確認。


二ページ目以降は、蓮くん関連情報。

美化委員。

勉強はできるとの評判・横山くんの発言。

昼食はお弁当。

いつか私も作ってあげたいな。

でも、レパートリーがない。

好きな食べ物。

フリスク・常備品

みかん・蓮くんのおばあちゃんが愛媛県にいるから。

牛乳・中学時代の同級生牛田くんからの情報。

給食時、飲めない子の牛乳を飲んであげてたと。

最高記録は5本。

トマトジュース・蓮くんと同じ写真部の町村くんの証言。

私は飲めない、絶対飲めない。

スポーツドリンク・「ハイポトニック」を愛用、私が目撃。

嫌いな食べ物。

トマト・食感がダメらしい。

横山くんの証言。

ジュースは飲めるのに本体はダメなのかわい過ぎるでしょ!

何を隠そう私はトマトは食べられる。

私たち一緒になったらバランスがいいよね。

趣味。

写真、だけ。

クセ。

左肩に鞄を掛ける。

右手はポケット。

うーん。クセがなぁ、同じクラスならずっと見ていられるのに。


その他。

カメラを構える仕草がたまらない。

好き。

どんなものを見て、何を想って写真を撮っているのか。

知りたい。

電車で、お爺さんや妊婦さんに席を譲るところを多数目撃。

廊下に落ちているごみを拾う、これも多数目撃。

体育の時、貧血になった華ちゃんを保健室まで運ぶ。

*しかもお姫様抱っこという情報もあり。

怖くて華ちゃんに確認できない。

*私も貧血になるべきかも!!

通学路にいる犬に吠えられない。

私は……吠えられる……

昼休みは屋上、部室で過ごすことが多い。

*雨の日は部室。

横断歩道を渡っていたおばあちゃんが、渡り切れなさそうなところに戻って駆け寄り一緒に渡る。

隣駅の商店街で見かけた。

隣のクラスの美穂ちゃんより。

字がキレイ。

ただ掲示板に飾られた習字の文字がミミズにしか見えない。


そして、最後のページから逆に6ページ分。

私の告白の記録。


【第1回失恋】

日付:5月10日 体育祭

方法:直接告白→やんわり断られる。

セリフ:「ごめん」

現場:写真部の部室前

考察:避けられてる感じ。体育祭終わりだったため、私のタイミングが悪かった可能性大。ただチアのユニフォームだからかわいさはあったはず。

備考:家に帰って3時間泣く。家のトイレットペーパー1ロール消費。


【第2回失恋】

日付:6月12日

方法:直接告白→やんわり断られる。

セリフ:「ごめん」

現場:昇降口・靴箱前

考察:一回目と変わらず。

待ち伏せが不意打ちみたいになった。

備考:トイレに駆け込んで泣く。

トイレットペーパーがない事に気付き焦る。


【第3回失恋】

日付:7月7日

方法:手紙作戦+直接告白

セリフ:「……しつこい」やや呆れ気味の印象。

現場:トイレ前

考察:手紙は拒否、急遽、口頭に変更したため、想いが上手に伝えられなかった。

手紙受け取り拒否を想定していなかったのが失敗。

備考:そのままトイレに直行。

ちゃんとトイレットペーパーがあるのを確認して泣く。


【第4回失恋】

日付:9月9日

方法:直接告白

セリフ:「……俺は、好きじゃない」聞き間違いかと思い、聞き直すも、絶望……。

現場:校門

考察:部活が休み、校門で待ち伏せ。

いや待機。

何気ない声かけはよかった。

蓮くんは少し苛ついていた感じ。

何か嫌なことがあったのかも。

備考:少し前に私は告白された。

モヤモヤしてて蓮くんに伝えたい気持ちが募った。

告白前に黒猫を目撃……いやな予感はあった。

校門脇に茫然と立ち尽くす私に気が付いた麻耶が慰めてくれる。

ファミレスで2時間。

麻耶ありがとう。

麻耶のセリフ「もういいじゃん」に「よくない」と返答。


【第5回失恋】

日付:10月15日(文化祭)

方法:直接告白

セリフ:「……俺好きじゃないから」2回目。

現場:写真部の部室前

考察:本来の目的の会話する筈だったのが、その日にあった色んなことが頭の中でぐるぐるして、蓮くんのお腹をパンチしてしまった。

動揺でいきなり「好きです」と口走った。

備考:私には好きな人がいるからという断り方ではなかった。

一縷の望み?

蓮くんの展示写真は2枚。1枚は、また私……。

どうしてなのか分からない。

ショックと写真の意味を考えて徹夜。

混乱も拍車を掛けてダメージ特大。

負けるな私……。

諦めないもん……。


【第6回失恋】

日付:11月9日

方法:直接告白

セリフ:「……」無言。

舌打ちされる。

現場:放課後、階段の踊り場。

考察:とうとう無言。

でも表情は嫌な感じはしない。

ソワソワしていたから早く帰りたかったのかも。

備考:たまたま会って、会話をしようとしたけど、逃げられそうになって……また「好きです」って口走った。


でもでも、私には好きな子がいるからってとは言わないの。

どうしてだと思う?

麻耶に聞いても。

分からない。

横山くんに聞いたら。

本人に聞いてみたら?

聞けないから聞いてるのに答えてくれない。

どうしてなんだろう?

この調子じゃ、トモダチ作戦もダメかも。

そもそも、緊張して会話ができない。


スマホの虎の巻フォルダには私の努力の結晶。

蓮くんアルバム。

私の隠し撮りの賜物。

一日中見ていれば幸せ。

「はあ……」

大きなため息がでる。

キーンコーン……



お昼休み。

昼食もとりあえず、蓮くんのクラスに偵察に向かう。

食事姿の蓮くんを写真におさめるために。

小走りで教室に。

ドアから、そっと中を覗き込む。

蓮くんは――

いない。

どこに行ったんだろ。

学食でご飯を食べる事はないし、購買でパンを買う事もない。

私は虎の巻メモを思い出し、屋上へと向かう。

階段を上っていると、横山くんと永井くんと出会った。

横山くんは私を見るなり、すれ違い様ニヤッと笑っていた。

階段を上りきって息を整え、かがみながら扉に近寄って、スッ背筋を伸ばして扉の窓から外を覗く。

その向こうに蓮くんの姿を確認した、その時――

頭から血の気が引いて視界がぼやける。

蓮くんがこっちを向いた。

あれ?

これって貧血?

クラっとして――

スッと視界から色が消えた。



重い瞼をゆっくり開ける。

白い天井。

ん?


挿絵(By みてみん)


視線を動かす。

白いカーテン。

ハッとして体を起こす。

――保健室のベッドにいた。

「橘さん、気分はどう?」

保健の丸山先生が優しい声を掛けてくれる。

室内にいるのは私と先生だけ。

もしかして、もしかして……!

蓮くんがお姫様抱っこ!

「はい。あの……私、屋上にいたと思うんですけど」

「ああ、そうみたいね」

「運んでくれたのって……もしかして……」

ドキドキ。

高鳴る鼓動に胸に手を添える。

お姫様抱っこなら……

蓮くんに触られたかも。

ぽっと顔が熱をもって、両手で頬を押さえる。

どうしよう――

「ああ、あれね、横山くんがおんぶして運んできてくれたわよ。あとでお礼言っといた方がいいよ」

「…………………はい」

お読み頂きありがとうございます_(._.)_。

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