芸能編第1話 令嬢としての私と新たな私
第0話からお読みください
私は処刑されたはずだったのだが、たしかに私であるという意識を持っていて、実際に目を開いてみると、大勢の人で賑わっている舞踏会が行われるような空間にいるのである。この筆舌に尽くし難い状況に思わず私は頬を常ってみるが、痛い以外に思うことはない。そして何が起こっているのかも分からないまま慌てて獲物を探すような鋭い眼光になっていたことには気が付かずに鏡を探していたところでとある小さい子供に声をかけられた。
「ねえ、ママ!」
「私の息子なのだろうか?でも、私の息子はこんなに小さい子ではないはずで、どうしてこの子は私のことをママと呼ぶのであろう」などと様々なことが頭に浮かんでいる。思わず「は?」と言いそうになってしまうこの状況だが、私の第六感が話を合わせべきだと咄嗟に判断をしていた。
「鏡は何処にあるかしら?」とその子供に聞いてみると、トイレに鏡があるであろうことを教えてもらえた。そして、ボロが出て怪しまれないように速やかに立ち去ってトイレに向かっている。無事トイレに着くと、たしかに鏡があり、私の顔を確認してみる。すると、無意識のままに叫んでしまった。「私の顔がぁぁぁ」と大声で叫んでしまったことを悔やみながらも今までのワイナ王国の令嬢としての私が存在しないことを認識した。そして、私には新しい人生を歩む決意をすることしかできず、琴吹 都として生きることになる。
そしてこんな舞踏会での一連の出来事から時は1年程経過したこの頃ではこの世界の生活にも慣れ始めていたのである。この世界と言うのにも訳があり、私がかつていた王国とこの世界では身分制度や生活水準が違いこの世界のほうが優れている。この世界に一人で何一つ奇怪な行動なしに生活するのは無理だろうと判断した私には7歳の息子であるだいくんと16歳の娘であるゆうちゃんがいる。
悩みに悩み抜いた私は舞踏会での出来事から1週間経過した頃にゆうちゃんに玉砕覚悟で私の現状を全て包み隠さず話した。ちなみにだいくんはまだ幼いことに配慮をして、話をできずにいた。そしてゆうちゃんの反応は正直、意外なものであった。