表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

二度目の人生は最愛の妻ともう一度。でも俺達を狙う二人の幼馴染が……

作者: 夜狩仁志

こちらは2025年2月にカクヨムに投稿した作品です。


生存確認のために、こっちにも投稿してみました。

 

 最悪だ。

 なんでこんなことに。


 幸せの絶頂を迎えていた俺たちに訪れたのは、最悪の結果だった。


 俺の隣に座る彼女は美緒みお

 いや、もう俺、颯真そうまの最愛の妻だ。


 入籍も済ませ、つい先日、結婚式を迎えた俺達。

 お互いの会社の同僚や上司、友人らが集まり、新婚の二人を盛大に祝福してくれたばかりだ。


 そのまま幸せの渦の中、半月ほどの休みを取ってハネムーン。


 しかし、


 俺たち二人の新婚旅行へと旅立った飛行機は、目的地へと辿り着くことは永遠に来なかった。


 日本を離陸してしばらくの後、油圧計に障害が出て、コントロール不能に。

 さらにエンジントラブルにより完全に制御不能。

 激しく揺れる機体。

 動揺する乗客に、焦りを隠せない乗務員。


 誰が見ても、これはもう、墜落の結果しかなかった。


 鳴りやまないアラームに、悲鳴や鳴き声が響き渡る地獄のような機内。


 そんな機内で、俺の手を強く握りしめる彼女は、無言で俺に微笑みかける。

 しかしその笑みの奥には、恐怖と無念さが滲み出ている。


 俺も、美緒を怖がらせないように手をギュッ握りしめ、笑いかけるが、きっと俺の顔もそうなってるのだろう。


 俺たち、これからという時に……

 なんでこんなことに……


 死への恐怖よりも、彼女を失う悲しみと、口惜しさで胸が詰まる。


「愛してるよ、美緒」


 必死に絞り出した、彼女に対する精一杯の言葉。


「私も。また生まれ変わっても、一緒にいようね」


 健気に答える美緒。


「ああ、どこにいても見つけ出して、むかえに行くから……」


 気丈に振る舞う彼女を抱きしめる。


 それが、俺たちの最後の会話だった……


 飛行機は右に左に揺さぶられ、そのうち上下の区別もつかなくなる。


 ただ、最後まで美緒と一緒と共にいたい一心で、どこにも無くさないように、強く必死に抱き締める。


 そして、


 大きな衝撃が加わり……


 無音の白一色の世界が広がり……




 ―――彼女との思い出が、走馬灯のように脳裏を駆け巡る。



 そう、美緒と初めて会ったのは、実は高校の時だった。

 同じクラスだったが、あの時は全くお互いのことを意識していなかった。

 単にクラスメイトの一人、という認識。

 美緒も俺のことはそう思っていたらしい。


 というよりも、当時から美緒は美少女として評判で、運動神経もよく成績優秀。立ち振る舞いもお嬢様のような存在。

 まさに品行方正の才色兼備。

 別に本物のお嬢様と言うわけではなく、ごく一般の家庭で生まれ育った女の子だったというのは、だいぶ経って付き合い始めた頃に知らされたことだった。


 そのため高嶺の花として、周りからは別世界の人間かのように扱われた。

 彼女自身も、おいそれと話しかけることも出来ないオーラを放っていた。

 美緒は社交的というよりも、一人でいることが多く、どことなく冷たく気高い印象を周りに与えていた。

 なので俺はたいして話しかけることもなく、高校生活は終わってしまった。

 美緒も結局、ほとんどの学校生活を一人孤独に過ごしていた。


 脳裏には、学生時代の美緒の制服姿が浮かび上がる。

 可愛かったなあ。

 なんであの頃、話さなかったのだろう?

 もう一度あの頃からやり直せるのなら、真っ先に話しかけ、仲良くなって、学生生活を二人で楽しむというのに……


 そんな彼女の姿を遮るように、二人の生徒の姿が浮かんだ。


 理人りひと穂香ほのかだ。


 こいつらは、小学校からの付き合いで、いうなれば腐れ縁という存在。

 理人は悪友というのか、お調子者の男。

 穂香は可愛らしい、明るく元気な女の子。


 この二人と同じ高校に進学したため、四六時中そいつらと過ごしていたのだった。


 俺の学生生活はこの三人が中心だった。


 そういえば、あいつら、どうしてんのかな?


 まさか二人がくっ付いて結婚するとは思わなかったけどな。

 仲が良いのは腐れ縁としてで、まさか理人と穂香が男女の仲だったとは。

 俺も高校卒業間近に聞かされるまでは知らなかった。


 理人は地元で就職。穂香はそのまま結婚して、理人と地元に残った。

 つれないよな。俺たちの仲だっていうのに。

 付き合ってただなんて一言でも言ってくれれば。

 俺は二人の引き立て役だったんだな。

 まぁ、二人が幸せそうで俺も嬉しかった。


 俺は普通の平凡な大学に進学。

 最初の頃は二人と連絡も取り合っていたが、お互い忙しくなってきたのか、そのうち自然消滅してしまった。


 そして時は流れて……

 大学を普通に卒業し、就職して二年後。

 高校の同窓会が開かれることになった。


 俺はもちろん地元に戻り参加した。


 久し振りの再会に、みんなが話に花を咲かせて楽しんだ。

 しかし、理人はやって来なかった。

 代わりに穂香には会えたが。

 元気そうだったな。

 すっかりお母さんみたいな貫禄が出ててさ。

 旦那の理人は、仕事が忙しくて来れないと。


 二人は俺たちの結婚式には参加できなくて残念だった。

 だから穂香とは、この時に会ったのが最後になるわけだ。


 あいつらには幸せになってもらいたいな。

 俺はもう死ぬが、俺の分まで生きてくれ。



 そしてこの同窓会で再会したのが美緒だった。


 相変わらず綺麗だった。


 というよりも、大人の魅力で一層美しさに磨きがかかった、素敵な女性になっていた。

 ここで俺たちは会話をし、お互い独身であることを知り、しかも美緒の勤め先が近所だと知り、そこから始まったのだ。


 俺たちの青春が。


 学生時代、経験できなかった恋人同士の関係を取り返すかのように、俺たちはトントン拍子に交際が進み、そしてめでたく結婚。


 そして新婚旅行は海外に……


 それがどうして、こんな結末に……


 俺達の人生、これからだって時に……



 ……


 …………


 …………ぅっ


 ……ん?


 静かだ?


 体の痛みがない?


 自由がきく?


 まだ意識がある?


 俺は恐る恐る目を開けると……


 ……ここは?


 教室?


 高校の教室の?


 俺は自分の席に座っている?


 夕暮れ時の教室。


 俺以外には誰もいない。


 これは……


 走馬灯の続きか?


 俺は美緒と一緒に飛行機に?


 状況を把握するのに必死になっているところに、二人の生徒がやって来た。


 目の前には若いころの姿の理人と?

 同じく制服姿の穂香の姿が……?


「颯真君さぁ! いつまで寝てるの!?」


 穂香の明るく張りのある声が、耳に突き刺さる。


「お前、このまま一晩寝て、そのまま明日の授業受ける気かよ?」


 理人が、あの時のように俺をからかう。


「え~っと、俺は? ここは? 今?」


「颯真君、寝ぼけてるの? さぁ、早く帰ろうよ!」


 全く事態が飲み込めない俺。

 若かりし頃の穂香に、背中を叩かれる。


 痛い。

 普通に痛い。


 走馬灯に痛覚があるのか?


「ほら、なにしてんのよ。帰るわよ!」


 無理やり俺は腕を掴まれ引っ張られる。

 ふらつきながら席から腰を持ち上げると、ちゃんと自分の二本の足で立ち上がっているのが分かる。


 幽霊にも足があるのか……?


 夢か現実か、走馬灯の続きなのか?

 それともここがあの世なのか?


 わけのわからないまま、穂香に促されて学校をあとにする。


 いつものように三人での下校。

 三人が団子になって道を歩く。


「でね、今度、駅前の喫茶店、行ってみようよっ!」

「俺、金、ねえからなぁ」


「初めから理人には誘ってないから」

「なんだよ! たまたま金欠なだけだっての!」


 目の前で歩く二人は楽しそうにじゃれ合っている。

 あの時と同じだ。

 俺はもしかして、やり直しているのか?

 過去に戻ったのか?

 いや、これも走馬灯の一種なのか?


 俺は身体中、触ったり持ち上げたりして確認するも、これは確かに俺の体だ。

 どこも無くなってないし、穴も空いてない。

 身なりも高校生の時の制服姿で、体形もその時のまま。


「……で、颯真君も行くでしょ?」

「…………え? ああ、なんの話だっけ?」

「しっかりしてよ! もう!」


 二人にこの時代のことを聞き出す雰囲気でもない。

 スマホで日付や時間を確認しても、高校時代の当時のまま。


「じゃあまた明日ね!」


 そう言って、いつもの別れ道で穂香は元気よく俺に手を振り挨拶して、同じ方向の道の理人と歩いて帰っていく。


 また明日か……


 死んだであろう俺に明日があるのだろうか?


 去っていく二人の背中を小さくなるまで眺める。


 これが今生の別れなのかもしれない。

 最後に神様が、二人に合わせてくれたのかもしれない。

 そう考えると無性に寂しさに包まれるのだった。


 これは夢か幻か……

 頭の中で何度も疑問が浮かび、答えが出ないまま家に到着する。


 大学入学まで生活の拠点となっていた実家。

 家も当時のままだ。


 いつ夢から覚めるのだろうか?

 と怯えながら、玄関を開ける。


 しかし、この世界は変わらなかった。


 俺を出迎えた親も、若いころのまま。

 カレンダーも、当時のまま。

 テレビも雑誌も、

 ネットも、

 全てが、俺が高校生の時のままだった。


 懐かしい俺の部屋まで、あの時の状態の当時と変わってはいなかった。



 俺は……本当に過去に戻ってやり直しているのか?


 スマホの時計とカレンダーを、意味もなくずっと眺める。


 相変わらず、穂香からのメールが忙しなく送られてくるが、正直返信どころではなかった。


 メール……

 電話……


 そうだ!

 美緒は!

 俺がここにいるってことは、美緒もきっと!


 そう思い美緒に連絡しようとするも……


 電話番号も、メールのアドレスも登録されていない。


 そうか……

 当時は付き合ってなかったから、連絡先なんて知らなかったんだよな。


 情けないことに、どちらも覚えていない。


 安否だけでも確認したい。

 美緒は無事なのか?

 俺と一緒に昔に戻っているのか?


 直接、家に行くか?

 いや、でも、この当時の自宅がどこかも分からない。

 確か、大学生時代に家族は引っ越しているはずだ。


 でももし、存在しなかったら……

 この時代、美緒という女の子が最初から存在していなかった世界だったら……


 美緒に今すぐ会いたい、という想いと、

 もし彼女だけ消えていたら、という恐怖で、


 ただ何もできないまま、夜を迎えてしまった。


 明日、学校に行ってみればわかる。

 あの頃のように美緒が教室にいれば……


 いや、きっといるはずだ。

 俺達の乗った飛行機は、おそらく墜落した。

 それがきっかけで、俺は学生時代にタイムリープしてきた。

 ということは美緒だって。


 そんな、なんの保証もない確信が俺を喜ばせる一方、その夜寝るのが怖かった。

 そのまま目覚めないのでは?

 まだこれは走馬灯の中なのではないかと。

 目が覚めた瞬間現実に戻って死んでしまうのではないかと……


 なかやか寝付けない俺も、緊張の連続で疲れが溜まっていたのか、しだいに布団の中でまどろんでいったい……



 そして、


 次の日はいつも通りやって来た。


 意識もそのまま。

 時代も学生時代のまま。

 身体の異常はない。


 人生をやり直せる!


 そう実感すると、急に美緒のことが気になり始めた。


 そうだ、美緒は!


 一刻も早く教室に入り、美緒の生存を確認しなくては!


 そう考えた俺は、居ても立ってもいられなく、早速支度をし、登校した。


 ……が、そんな俺を阻むかのように、なぜかこんな早くから家の前で、穂香と理人の二人が待っていたのだった。


「おはよう! 颯真君! なんで昨日、返信くれなかったの!?」

「あ、ああ、ごめん」


「返信って、穂香? 俺には何にも来てないんだけど?」

「理人は関係ないの!」


 なんでこんな時に。

 いつもは遅刻ギリギリに集まったりするというのに。


 結局、俺達は一緒に登校することに。

 二人は何か話しかけてきたが、俺は正直全く耳に入らなかった。

 頭の中は美緒のことでいっぱいだったから。


 これで美緒と学生生活からやり直しができる。

 お互い経験できなかった恋人同士で青春時代を!

 なによりも、お互い生きているという幸せ。

 美緒も助かったのだろうという、この上ない喜び。


 早く美緒に会いたい!

 そしてこの手で抱きしめたい!


 高まる思いを抑え込みながら学校に到着。

 早々に、俺は二人を置いて足早に教室に向かう。


 そして他の生徒を押しのけるようにして教室に入り、美緒の席があったであろう場所に目を向ける。


 すると、


 制服姿の若い美緒が!


 窓際の席に既に着席し、

 あの頃のように一人静かに本を読んでいた。


 生きていた!

 もちろん、当時の美しい女子高生としての姿のままで。


 俺は喜びで体が軽くなり、駆け足で駆け寄った!


 美緒の正面に立つと、

「おはよう! 美緒!」

 と、いつもの様に朝の挨拶を交わした。



 ……のだが。


 いつもなら「おはよう」と笑顔で返し気くれるはずの彼女の顔は、


 恐怖と軽蔑と言い知れぬ不快感の混ざった、不機嫌極まりない表情を見せた。


 その瞬間、

 立ち上がると、

 手にした文庫本で、



 バシッ!!!



 っと、俺の頬を引っ叩くと、

 そのまま教室を出て行ってしまった。


「えっ? 美緒??」


 痛む頬をさすりながら、なにが起きたのか分からないまま、立ち尽くす俺。


「おいおい、颯真、朝からチャレンジャーだな。彼女に話しかけるなんて」


 追いついた理人と穂香が俺を取り囲む。


「あの噂の氷姫に、なに話しかけたの?」

「……いや、ただ挨拶を……」

「颯真君って、いつから仲良くなったの?」


 そう……だ。


 あの頃の美緒は他人を寄せ付けなかった。

 俺だって気軽に話しかけたことはない。

 でも俺たちは結婚した仲じゃあ……

 将来を誓い合った仲だったじゃないか?


 もしかすると、俺だけこの世界に?

 美緒は戻っていないのか?

 まさか飛行機とともに?


「おい、颯真、授業始まるぞ」


 呆然と立ち尽くす俺を、理人が席へと促す。


 美緒……

 なんでなんだ?

 いったいこれは……

 どうなっているんだ?


 授業中、俺は、ずっとそのことについて考えていた。


 まさか……

 俺だけ助かったのか?

 いや、いつか記憶を取り戻してくれるかも。

 俺が少し早く戻ってきただけで、遅れて美緒の意識も……

 そうでなくても、最終的には俺たちは結ばれるのだから、記憶がなかったとしても上手くやって行けるはず。


 俺は美緒が好きだし、美緒も俺のことが好きなはずだ。 

 だから時間をかければ、きっと。


 そう、諦めるな。

 奇跡が起こったんだ。

 これは神様が俺に与えてくれたチャンス。

 もう一度人生をやり直すことによって、今度こそ本当の幸せを掴む!


 俺は諦めないぞ!

 もう一度、美緒と結ばれるまで!

 このチャンス、絶対に逃さない!





 ―――最悪だった。

 私の人生。

 全てはアイツのせい。

 たった一夜の過ち。

 それが私の人生を狂わせた。

 こんなはずではなかったのに……


 私はごく普通の女の子として生まれ育った。

 気がつけば、いつも隣には颯真君がいた。

 小学校からの付き合いで、家も近所だった私たちは、よく一緒に遊んだり勉強したりして過ごした。

 その関係は高校に進学してからも変わらなかった。

 颯真君にとって私は、いわゆる幼馴染というポジションだった。


 でも……

 私にとっては初恋の人。

 そして最愛の人。

 大好きな人、

 運命の人、

 一緒にいて欲しい人、

 一生そばにいて欲しい人、

 結婚したい人……


 初めてその気持ちに気付いたのは中学生のときだった。


 その時以来、将来私は颯真君と結婚して幸せな家庭を築いていくんだろうなと、信じていた。

 颯真君もまんざらじゃなかったし、私にはいつも優しかったし、きっと同じ考えだったはず。

 だからこのまま行けば充当に私たちは……


 それが……

 アイツのせいで……

 あの理人のせいで!!


 単に颯真君の友達とか言うだけの存在の人間が!

 気安く私なんかに!

 颯真君の手前、仲良くしてたけど、本当はあんな奴、大っ嫌いだった!!


 あれはそう……

 高校生の時のある日のこと。

 理人に誘われて食事をすることに。


 でも、颯真君も入れての三人でのパーティーって聞いてたのに。

 結局、私とアイツ二人。

 騙されたのだ。

 それは私を呼び出すための口実。


 その後、私を無理やり……


 あの時のことは思い出したくもない。

 吐き気がする。

 最初からそのつもりで、私を騙したのだ。


 堕胎するって言ったのに!

 費用は何とかするって言ったくせに!


 その後はアイツに言いくるめられ、親を説得され……

 結局、私たちは結婚することに。

 望まぬ相手と、子どもと、そして結婚。


 私の人生はこの時点で終わった。


 結婚の報告をした時の颯真君の笑顔が今でも忘れられない。


 違うの!

 これは誤解で!

 本当は私は!


 あの笑顔を私だけのものにしたかった。


 悔しかった。

 悲しかった。

 心底、アイツを恨んだ。


 その後の人生は思い出したくもない。


 私は卒業後、主婦として子育てをしながらパート務め。

 アイツは就職したにもかかわらず、真面目に働くことはせず、何度も転職を繰り返してはその日暮らし。

 ギャンブル三昧で、私と子どものことはほったらかし。

 毎日が苦痛でつまらない生活。

 それでも生きていけたのは、微かな望み。


 それは、


 もしかしたら颯真君は、まだ私のことを好きでいてくれてるかも。

 こんな不幸で可愛そうな私を、いつものように助けてくれるかも。


 現に颯真君はまだ独身だし、彼女もいないって言うし。


 定期的に颯真君とも連絡も取っていたのだけれども、アイツがだらしなくて、生活のこととか、借金のこととかで忙しくて、次第に連絡も取れなくなっていって……

 でも便りがないことは無事という証明であると、結婚式の招待がないということはまだ未婚なんだと自分に言い聞かせることで、なんとか生命を繋いでいた。


 そんな折、同窓会の話が持ち上がり、私は青春が戻ったかのように胸が高鳴った。

 颯真君と会える!

 この機会を利用して、また颯真君と付き合えば!


 バカ旦那は遊び惚けて、しかも警察の厄介になってたんで、私一人で行けば。

 そこで颯真君と……


 でも、参加してみれば……


 あの美緒っていう女!

 学生時代、美人とか称えられて偉そうにしてたくせに、常にボッチだった女。

 引き籠りの愛想の無い、あの女!

 やっぱり社会人になっても孤独だった女が、こともあろうに颯真君に近寄って!

 颯真君も可哀そうに思ったのか、話し相手になってあげてたけど。

 ちょっと話しかけられたくらいで、いい気になって!

 そしたら、いつの間にか颯真君と結婚するって!?


 あの泥棒猫がぁ!!


 私の方が颯真君との付き合いは長いっていうのに!

 あんたに颯真君の何が分かるっていうのよ!


 悔しかった……

 惨めだった……

 私が最初から好きだったのに……


 結婚式にも呼ばれたが、行きたくなかった。

 あの女の幸せな顔を見たくない。

 颯真君の喜ぶ顔が見たくない。


 本当は私が颯真君と一緒になるはずだったのに……

 なんでこんなことに。


 その後は失意の毎日で、酒と薬に溺れる毎日。


 そしてある日……


 今日から颯真君は新婚旅行のはず。

 本来なら私が同伴しているはずなのに。


 あの女、死んでくれないかなぁ……

 そうすれば私が……


 自棄になった私は大量の薬を酒と一緒に。

 そして世界が歪んだ。


 視界が真っ暗になり……

 体の自由がきかなくなり……

 何度も吐いた気がする。

 子どもの鳴き声も聞こえた気がするが……

 もう私には関係ない。


 あぁ……私は死ぬんだなぁ……


 薄れゆく意識の中で、それだけははっきり覚えていた。

 でも恐怖はなかった。

 むしろ怒りと憎しみと悔しさで……



 ―――気がつくと私はこの時代にいた。


 あの、一夜の過ちが起きる前の、高校時代に!!


 どうやら私は過去にタイムリープしていたようだった。


 これは神様が、不幸な私にやり直しという救いの手を差し伸べて下さった結果なのだ。


 これで私はやり直せる!

 本来の筋書き通り、私と颯真君が結ばれるように!


 まずは学生生活を二人で満喫しよう!

 二人っきりで遊びに行って……


 ……と思ってたところに、昨日どういうわけか颯真君が美緒に話しかけたりして!?

 たしか学生時代、あんな形で自ら話しかけに行くなんて、一度もなかったはず??


 もしかしたら私が過去戻りしたせいで、この世界に少し変化が現れたのかも?


 私はもう二度とあんな思いはしたくない。

 颯真君の彼女は私一人で十分!!


 だから私は先手を打つことにした。

 あのバカ理人をけしかけて、美緒とくっ付けるのだ!


 理人には、美緒が気があるみたいだよ、と話しかけ。

 美緒には、全力で理人と結ばれるように応援する。


 こうして二人がカップルになれば、最悪の結果は避けられるはず!


 あとは時間の問題。

 私と颯真君が付き合うのは。

 だって、もともと私たちは結ばれる運命だったのだから。


 今度は絶対に失敗しない!!


 絶対に!!


 これは神様が私に与えてくれたチャンス。

 もう一度人生をやり直すことによって、今度こそ本当の幸せを掴む!


 私は諦めない!

 どんな手を使っても!

 このチャンス、絶対に逃さない!


最後までお読みいただき、ありがとうございます。


ちょっとした需要確認のための投稿も兼ねてます。

こういったストーリーに興味を持たれる方が、どれくらいいるのかな〜と。


ではまた、どこかの作品でお会い出来ることを楽しみにしております。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
理人最悪だし、穂香も前世には同情の余地有るけど今世での考え方や行動見る限り元々駄目な奴だろコレ 美緒の内心がまだ不明だけど今の所穂香より悪いとは思えないんだよなー 取り敢えず颯真君逃げてー
めちゃくちゃ続きが気になります。
この手の話を読むたびに 変なこと考えずに素直に気持ちを伝えればいいのに⋯ と思ってしまう
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ