ベルギスの帰還①
私は戻ってくる世界を間違えただろうか?
世界が壊れかけている。この世界はもう長くないな、まるでガラスでできた細い糸の上を列車の車輪で強引に渡っているような感じだ。だが座標はあっている。この世界は私が支配した「コークォス」なのか?
私はベルギス・カパカ。このコークォスを支配せしコークォスの王だ。私は世界の意思の存在を知っている唯一の存在だった。
世界の意思という存在を知ったのは私がまだ小さい子供のころだ。私が生まれたころに親が植えた木の苗が何を欲しているのかを、私はなぜか理解することができた。成長し年齢を重ねていく毎に世界の生き物や植物、当時「概念」といわれた物でさえも、その意思を理解できるようになっていった。
私はその力を駆使し、世界を豊かにし、世界を仲間にして、支配した。そしてその世界に故郷の言葉で「われらが住む世界」という意味をもつ言葉「コークォス」と呼ぶようにした。
だが私の支配も永遠ではなかった。私は世界ではなくこの世界に暮らす生き物だ。いずれ命尽きる存在だった、だから私は仲間だった存在に世界を託すことにした。
彼は私を王と仰ぎ、私は彼を軍師と呼んだ。彼は頭がよく回り臨機応変に対応することができる存在だった、私という存在さえなければ間違いなくこの世界で一番賢き王となれた存在だった者に、託した。はずだった。だが人類は私の考える以上に愚かな選択を連続で続けたようだ・・・。
軍師は私と違い普通の人間だったから私が生きていたころには彼の年齢はとうに六十を過ぎていたはずだ、世界を託したといってもそう長くない命だったはずだ。彼が残したものがこれなのか、それとも次代のバカが犯した罪なのかはわからないが、このコークォスは私が支配した私のコークォスだ。
「早速だが、コークォスを再び私の支配下にしよう。」
世界を再び、私の物にしなければならない、でなければこのコークォスは長くない。早めにゴミを片付けなければいけないな。