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Part of me  作者: 遠藤 敦子
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 いろいろなことがあった3年間だけれど、私は無事に日山学園高校を卒業することになった。担任の板倉(いたくら)先生が袴姿で登場し、クラスメイト(特に女子)たちの間では「板倉先生綺麗!」「私も袴が似合うひとになりたい!」という声が聞こえる。卒業式では誰もが涙を流していた。もちろん私もその1人だ。卒業証書授与の際に板倉先生から、

「佐野優奈」

と名前を呼ばれた。私は「はい」と返事したけれど、本当に卒業してしまうのだろうかと実感があまりなかったのだ。

 代表者以外は卒業式後のホームルームで1人ずつ個別に板倉先生から卒業証書を受け取ることになった。私も卒業証書を受け取り、ようやく日山学園高校を卒業したんだと実感する。茶道部の後輩たちからもらった花束、「優奈先輩へ」と書かれた寄せ書き、ハンドクリームやハンカチといったプレゼントで私の机周りはいっぱいになった。

 知哉と卒業式後に合流し、良いレストランに連れて行ってくれるとのことで楽しみだ。知哉はシャツにジャケットといったきれいめな出立ちで、私にピンクを基調とした花束とピンク色のキーケースをプレゼントしてくれた。私は嬉し過ぎて今にも涙が出そうなくらいだ。4月から知哉と距離が近くなって嬉しいと言うと、知哉は俺もだよと言ってくれた。



 この4月から福岡市内の美容専門学校に進学し、晴れて私は専門学生になる。ヘアセットのことだけでなくメイクや着付けについても学び、就職活動や美容師免許取得に向けて忙しくしていた。それでも知哉とは変わらず仲良くしており、京都や大阪に旅行したこともある。私の就職と知哉の就職が重なることもあり、私たちは大学と専門学校を卒業して社会人2年目くらいになったら同棲しようと話をした。社会人1年目は仕事に慣れることと同棲費用の貯金を優先するためだ。

 2年生の頃に美容師免許を取得し、福岡市内のヘアセットサロンへの就職も決まる。知哉も福岡市内の大手企業に就職が決まったそう。お互いの就職と卒業祝いをし、私は4月からヘアセットサロンで勤務を開始する。夜職の女性が主な客層で、私が先輩のアシスタントとしてヘアセットに入るとお客様から

「えー今日は新人さんなの〜? 店長さんが良かった〜」

と私に聞こえるように先輩に言われたことがある。それなら私に直接言えよと思ったけれど、そこはグッとこらえた。そんな彼女も私が半年目になって慣れてくると、

「やったー! 今日は優奈ちゃんだ〜」

と嬉しそうに言ってくれるようになる。

 同棲費用も貯まっていき、社会人2年目の春に私と知哉は同棲を開始した。同棲して問題がなければ籍を入れようと話していたのだけれど、私の誕生日に知哉が夜景の見えるレストランに連れて行ってくれることになる。レストランではコース料理を堪能していた。そろそろデザートが来るというタイミングで知哉が指輪をパカっと開けて

「優奈は俺が幸せにする。結婚してください」

とプロポーズをする。私は涙を流しながらプロポーズを受け入れた。

 婚約してからはあれよあれよという間に挨拶などが進んでいき、私たちは付き合い始めた記念日に入籍する。私は佐野優奈から、増田優奈になった。これからは知哉と2人で幸せな家庭を築こうと思う。

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