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Part of me  作者: 遠藤 敦子
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 保健室の先生が私の母に電話して、迎えにきてほしいと話してくれた。知哉から話を聞いた保健室の先生が状況を話すと、電話口で母は怒りを滲ませていたという。

「佐野さん、今日は無理しないでゆっくり休んでね」

保健室の先生にもそう言ってもらえて、私は嬉しかった。

「すみません、佐野優奈の母です。迎えにきました……」

母が保健室で私と会うなり、

「優奈大丈夫だった?」

と声をかける。私が頷くと母は

「知哉くんもありがとうね。今日の夜ご飯は優奈の好きなシチューにするから。ではすみません。ありがとうございました。失礼します」

と知哉と保健室の先生に頭を下げ、私たちは車に乗り込んだ。



 数日後、私を殴った男子生徒が私に謝罪したいとのことで、校長室で話し合いをすることになる。知哉のファンクラブのメンバー3人組とその保護者、私を殴った男子生徒とその保護者、彼らの担任、校長先生、教頭先生、私と両親で校長室に集まった。私はもう彼女たちに会いたくなかったので、俯いたまま震えていたと思う。それくらいトラウマだったのだ。

「佐野さんごめんなさい! 田川(たがわ)さんにやれって言われてやっただけで……。僕は断じてこんなことしたくなかったんです……!」

男子生徒が立ち上がって、深々と私に頭を下げる。田川さんとは、彼に早く私を殴れと指示を出した女子生徒のことだ。謝罪しているようで自己保身に走る彼を見ていると、私は吐き気がした。

「だいたいうちの娘が指示したっていう証拠あるんです? こんなくだらないことで呼び出さないでちょうだい。こっちも仕事してるんで」

田川さんの母親--40代前半くらい。金髪のロングヘアを下ろして、つけまつ毛もしている--がため息をつきながらだるそうに言う。

「じゃあなんで優奈が学校を早退することになったと思いますか? 校長先生からあなたたちが謝罪の場を設けたいと聞いていたから被害届は出さなかったのに、そちらがそういうことならもう警察に被害届出します! 弁護士にも相談して慰謝料請求も辞さない構えです」

私の父が怒鳴ると、田川さん以外の2人が当時撮っていた動画を見せてきた。そこには確かに、田川さんが彼に早く殴れと指示を出す場面が写っている。それを見て田川さんの母親は青ざめていた。

「佐野さん、加害生徒には相応の処分を下しますので、どうか穏便に……」

校長先生が汗をハンカチで拭きながら、どうか警察沙汰だけはやめてくれと父に懇願する。父はその対応にも呆れていた。

 結局4人とも事実を認め、全員に無期限の停学処分が下される。知哉にはLINEで話し合いの状況と彼らが無期限停学になったことだけを伝えた。

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