表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
黒猫令嬢は毒舌魔術師の手の中で  作者: gacchi(がっち)


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

24/37

24.学園でのもめ事?

次の日から、私の席の隣がエレーナ様に変わっていた。

昨日まで隣だった令息は遠い場所に移っている。


「おはよう、シャル様」


「おはようございます、エレーナ様。席、お隣でした?」


「ふふ。変わってもらったの。

 シャル様のことを守るって姉様と約束したから。

 高位貴族の私が隣にいる限り、手を出させないからね」


「本当に守ってくれるなんて、ありがとうございます。

 ジルベール様もマリーナさんも心配性だから、

 エレーナ様が隣だって知ったら安心してくれると思います」


「うぅ……朝から可愛すぎ」


「え?」


「なんでもないの。あぁ、ほら、先生がもう来るから」


侯爵家のエレーナ様が隣にいてくれるおかげで、

他の学生たちはうかつに近寄れないようだった。

それでもエレーナ様と楽しく話をしていると、

近くに座る令嬢たちは私とも話をしてくれるようになった。


一度話をすれば気が楽になったのか、

前に座る子爵令嬢のミラ様がたくさん話しかけてくれる。

いろんなことを答えたら、安心したように笑う。


「シャル様って魔術師なのに話しやすいです」


「魔術師って、どんな印象なんですか?」


「え?そうですね。恐れ多い感じでしょうか。

 ジルベール様はお美しいですし、

 令嬢には特に厳しいと有名な方ですから……。

 シャル様は怖くないのですか?」


「ジルベール様が怖い、ですか?

 すごく優しいですよ?」


最初はからかわれることもあったけど、

あれも私の怪我を心配していただけだった。


何か変化があっても対応できるように、

今も抱き上げられて運ばれるし、

夜も抱きしめられて眠るし……と思ったところで、

眠る前に何度もキスされたのを思い出した。


婚約したことを知ってから、

ジルベール様は少しおかしくなってしまった。

二人きりになるとすぐにキスをしてくる。

昨日も眠るまで数えきれないほどキスをされて、

ふにゃふにゃになるほど……


思い出してたら顔が熱い。

それを見たエレーナ様とミラ様に笑われる。


「シャル様、何を思い出したの?」


「な、なんでもないんです!本当です!」


「ジルベール様が優しいのはシャル様相手だからでしょうね」


「私もそうだと思うわ。

 シャル様はジルベール様にとって特別な方なんだもの」


特別って、そうなのかなと思う。

どうして私が婚約者なのか聞けないでいるけれど。

私だけが特別ならうれしいと思ってしまう。




二日目の学園も楽しく終わり、

午後は魔術院でジルベール様と過ごす。


屋敷に帰って夕食を取った後、

のんびりしていたらマリーナさんが報告があるという。


「報告って、もしかしてドリアーヌたちのこと?」


「はい。シャル様が授業を受けている間に調べてきました。

 ジルベール様の従妹シルヴィ様が婚約者だという噂は、

 数年前から流れていましたが、

 この夏あたりから別な噂が追加されました。

 それがジルベール様はアンクタン家の令嬢と婚約したという噂です」


「シルヴィの方は知っている。

 叔母がお茶会で広めていたらしいな」


「はい。ですが、数年たっても婚約したという話にはならず、

 嘘なのではないかと思われ始めていたところ、

 アンクタン家の話が出てきたので、

 そちらを信じている者のほうが多いようです」


「まぁ、事実だからな。

 だが、意外だった。

 あの伯爵が婚約の話をするとは思わなかった。

 最後まで隠そうとする気がしていた」


「私もそう思います。

 私の存在を知られないようにしていたのに、

 噂になるくらい話すだなんて。

 婚約相手がジルベール様だからでしょうか?」


私のことが知られてもかまわないから、

ジルベール様と親戚付き合いをしたいということなら、

理解できなくもない。

これから婿になってくれる令息を探すだろうし。


「残念ながら、噂の出どころはロジュロ侯爵家の使用人です」


「は?」


「え?使用人?」


「ジルベール様、ロジュロ侯爵家に最後に行った時に、

 シャル様のことを話しませんでした?」


「そういえば、言ったな。

 アンクタン伯爵家の長女と婚約したと」


「それですね。

 盗み聞きしていた使用人が話したのでしょう。

 おそらく他家のスパイがいたのかと」


他家のスパイ?

ロジュロ侯爵家の屋敷にジルベール様が帰らなかったのって、

そういう理由もあったのかな?


「お二人とも、のんきなことを言っている場合ではないのです。

 学園では、その相手はドリアーヌ様になっていますよ」


「はぁ?どういうことだ?」


どうして相手がドリアーヌに?

考えられるとしたら……。


「もしかして、ドリアーヌが自分で言ってるの?」


「質問されて、そうだと答えたようです。

 それで学園内でシルヴィ様と言い合いになっています。

 どちらが本当の婚約者なのかと」


「えぇぇ。どちらも違うのに言い合いになるの?

 きっと、周りはどちらかが本当だと思っているんだよね?」


「そうでしょうね。

 だからこそ、学園内はシルヴィ派、ドリアーヌ派、中立派にわかれています。

 遅かれ早かれ、シャル様のところに誰かが聞きに来ると思われます。

 ジルベール様どういたしましょうか」


「そうだな……。

 いずれわかるとでも答えておけばいいんじゃないのか?」


「それでいいんですか?」


「シャルだとわかったら、何かされるだろう。

 卒業までは放置しておけばいい。

 恥をかくのはそいつらだ」


「……それもそうですね」


残念ながら、長年ジルベール様を困らせてきた従妹さんも、

私を殺そうとしたドリアーヌも、助ける理由なんてなかった。


嘘をついて困るのは自分たち。

噂が広まった後で嘘でしたなんて。言えないよね。

特に、あのドリアーヌなら言わないはず。


婿入りしてくれる令息、見つからないだろうなぁ。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ